テラーノベル
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「……ん……。」
耳元で、金属がこすれる音がした。
重いまぶたを開けると、
「……は?」
目に映ったのは、薄暗い天井。冷たい空気。石の壁。どう見ても、見覚えのない場所だった。
(ここは……どこだ?)
体を起こそうとすると、ジャラと金属の音がした。
視線を落とすと、両腕に太い鎖が巻き付いており、壁に繋がれていた。
「なんだよ、これ……!」
力を込めて引っ張る。が、鎖はびくともしない。
念も試してみるが、やはり、鎖は外れない。
(くそっ……!特別な鎖かよ)
何か鎖を外す手がかりがないか、部屋を見渡す。
地下室らしいその空間には、扉が一つあるだけで窓も、道具も、何もない。
(いつ、連れてこられたんだ……?)
キルアはなぜここにいるのか、思い出せなかった。
(…そういえば、最近ゴンの様子がおかしかったな…)
その時。
ガチャ……
と音を立てて、扉が開いた。
「……え、」
扉の先に立っていたのは、
「……ゴン?」
「キルア……。」
よく知っている顔。
大切な、恋人のゴンだった。
一瞬で緊張がほどける。
「ゴン! よかった……悪いけどさ、この鎖たぶん特別なやつっぽくて…外してくれないか?」
助けてもらえると思った。
だが——
「……」
「……ゴン?」
「……できないよ。」
ゴンは静かな声でそう言った。
「はぁ!? なんでだよ! もしかしてゴンでも外せないのか!?」
焦って言うと、ゴンは視線を落とした。
「……それ、オレがやったんだ。」
「……は?」
時間が止まったように、頭が真っ白になる。
「……これ……ゴンが、やったのか?」
「……うん。」
信じられなかった。
目の前にいるのは、あのゴンなのに。
「なんで……こんなこと……」
「だって!キルアが、オレ以外のやつと楽しそうに話してるから……オレのこと、見てくれないから……!」
ゴンの目からぽろぽろと涙が落ちる。
「ゴン……でも、俺は——」
「じゃあ、あれは何だよ! 楽しそうに笑っちゃってさ!」
「それは普通に話してただけで——」
「キルアは分かってない! オレがどんだけ不安だったか!」
叫ぶ声に、キルアは怯える。
「……ゴン…。」
「……もういい。」
急に声が低くなる。
ゴンはゆっくりキルアに近づいた。
「キルア。オレのものになってよ。」
「……は?」
「そうすれば、キルアは取られないで、オレは安心できる。ずっと一緒にいられる。」
その目は真っ直ぐだった。
キルアは、静かに息を吐いた。
「……ゴン。それで、お前は安心するかもしれないけど、」
「うん!」
「俺は、幸せになれない。」
ゴンの表情が固まる。
「…なんで…?」
「俺は、もう…誰かに縛られて生きたくないんだ。」
声が震える。
「昔から、ずっとそうだった。命令されて、自由なんてなかった」
ポロポロと涙が溢れる。
「だから、もう嫌なんだ。」
ゴンの瞳が揺れた。
「……キルアなら、分かってくれると思ったのに」
「ゴン——」
「……ごめん。でも、怖いんだ。キルアがいなくなるのが」
その言葉は本音だった。
だが、そうだとしても、閉じ込めるのが許されるわけではない。
地下室の空気が、重く沈む。
キルアは真っ直ぐゴンを見た。
「俺は逃げない。でも、縛られたくない。隣にいるってことは、閉じ込めるってことじゃないだろ?」
「…」
ゴンは答えられず、ただ立ち尽くしていた。
しばらくの沈黙のあと、ゴンが小さく息を吸った。
「……そっか。」
その声は、さっきよりも静かだった。そして、どこか悲しそうだった。
「キルアは、縛られるの嫌なんだよね。」
「当たり前だろ。」
「……でもオレは、キルアがいなくなるのが怖い。」
ゴンは、一歩、また一歩とキルアに近づく。
キルアは鎖に捕まっているため、その場から動けない。
「怖くて、苦しくて……頭の中そればっかりになるんだ」
「ゴン、落ち着けって。ちゃんと話せば——」
「話したって!…キルアはどっか行っちゃいそうなんだもん!」
声が震えている。
だが、足取りは止まらない。
キルアの目の前まで来たゴンは、ポケットに手を入れた。
「だから……」
取り出したのは、銀の首輪。
冷たい光が、首輪に反射する。
「……ゴン、それ……」
「ごめん。でも、これでやっと安心できるんだ。」
ゴンは笑っていた。
「キルア。オレのものになって、ずっとオレのそばにいてよ。」
「だから…それは“そばにいる”んじゃなくて、“閉じ込める”って言うんだぞ!」
「それでもいい。」
即答だった。
キルアの喉が詰まる。
「オレ、もう限界なんだ。キルアが離れるかもしれないって、怖くなるの。」
ゴンはキルアの首に首輪を近づける。
「だから――無理やりでも、オレのものになってもらう。」
カチリ、と小さな音がして、冷たい感触が残る。
そして、ピカリとキルアの首は光っていた。
「これで、ずっと一緒だね。」
ゴンは、真っ直ぐキルアを見つめて、安心しきった顔で笑った。
「よろしくね!キルア。」
end
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