TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する


「額怪我したんですよ、ほらー」


夜。

壱花は倫太郎と高尾に、前髪を持ち上げ、赤くなった額を見せる。


「どうしたの、それ」

と高尾に訊かれ、


「キーボードで打ったんです~」

と壱花は言った。


「キーボード?」

「ああ、パソコンの」


「どうやって打つの、それ」

と高尾は笑ったが、倫太郎は、


「仕事中、うたた寝なんかしてるからだ」

と言ってくる。


「あれっ?

なんでご存知なんですか? 社長」

と壱花は驚いた。


「うつらうつらしてて、キーボードに額から落ちたんですよ。

冨樫さんが冷ややかに見てただけだったのが、せめてもの救いです」


「それ、救いなの?」

と苦笑いした高尾に言われるが。


「いや、怒鳴られるよりマシかなーって」

と壱花は言った。


「俺が放っておけと言ったからかもしれないが。

まあ、呆れて怒るのも面倒臭かったんだろうな」


そう倫太郎が言ってくる。




そのまま三人で店番をしていると、ガラガラと戸が開き、ちょんまげの人が入ってきた。


明らかにお侍な格好している。


綺麗な顔をしているので、一瞬、映画の撮影かと思ったが、そうではないだろう。


どっきりの可能性もあるが、それを言うなら、この店自体がどっきりだ。


というか、どっきりであって欲しい気もしている、と思いながら、壱花は倫太郎に訊いた。


「あれはあやかしですか?」


「いや、生活に疲れた藩士の人だ。

たまに来る」

と無言で店内を見ているお侍さんを見ながら倫太郎は言う。


「此処の時間の流れはどうなってるんですか……」


藩士の人は綺麗な色の飴玉を選ぶと、ありたけの金を置いて帰っていった。


おそらく一円にも満たないが、倫太郎はそれで飴玉を売っていた。


あの藩士の人にとって、たまに迷い込むこの店で買う甘いものが、心を癒す大切なものなのだろう。


それをわかっているから、代金がたらなくても売っているのに違いない。


社長、意外にいいとこあるな、と壱花は思った。


「江戸とつながったりもするんですね」


「いろんなところから迷い込む奴いるぞ。

こんな毛唐けとうの菓子を売りおって、と言って斬りかかって来られたこともある」


「それ、よく助かりましたね」


「俺の愛用のワルサーで脅してやったら逃げたぞ」

倫太郎は棚に飾ってある銃を取り出してくる。


「……それ、クジで一等のやつですよね」


明らかなオモチャだが、この人の目つきの鋭さとか迫力で本物に見えたんだな、と壱花は思った。


いろんなところからか……と思った壱花は、ハッとした。


「もしや、未来から来たりもするんですかっ?」

と叫んでしまう。


倫太郎は少し考え、頷いていた。


「まあ、そういうこともあるかもな。


今まで、これは未来から来たな~ってやつに会ったことはないんだが。

気づいてないだけなのかもしれないし。


だって、この先、そんなに服装や髪型が変わるとも思えないだろ。


昭和の半ばくらいのサラリーマンが来ても、今の人と区別がつかないのと同じだよ。


それに、未来って言っても、ちょっとした未来とかあるじゃないか。


例えば、五分後の冨樫とがしが今、ここにやってきたとしても、それが未来の冨樫だとはわからないし」


いやまあ、そりゃそうなんですけどね~、と壱花たちが笑っていたそのとき、富樫は店の外にいた。



あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

18

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚