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公認ラヴァ〜それでも愛してる〜

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公認ラヴァ〜それでも愛してる〜

6 - 第6話<覚悟を決めても現実は私を暗い世界に誘っていく>

♥

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2023年09月04日

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木曜日の夜


賢也は今、風呂に入っている。


明日の賢也の”残業”に向けて松崎さんからのミッションを遂行するために、今はほとんど入ることのないベッドルームに向かう。



渡されていたGPSを簡単には見えない場所でなければいけないため慎重に場所を選びバッグの底に設置した。さらに、ボタン電池ほどの盗聴器をベルトの後ろ側の裏に貼り付けるように言われたが、先につけて見つけられるといけないから明日の朝うまくやらないといけない。



小さな盗聴器を見つめて松崎さんとの会話を思い出す。


「どうしてベルトなんですか?GPSと一緒に入れちゃダメなの?」


「う~ん、GPSは場所が分ればいいけど盗聴器は音が拾えないといけないからね。よほど几帳面で脱衣所ですべてを脱いでからことを始めるような人じゃなければ、というか不倫で時間があまりないのならズボンを脱ぐのは最後の方だろうから、ギリギリまで付けてる場所というか、ベルトは全部を抜くことはないから後ろの裏側なら比較的バレにくい。てか、バレないように一日祈るしかないけどね」


「そういうものなんですか?」


「ズボンは脱がずに挿入する場合もあるし」


「松崎さんはそうなんですか?」


飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになってから

「改めて言われるとアレだけど、まぁそんなこともあるし、ズボンは履いたままモノだけだしてしゃぶってもらうこともあるし」


「え?しゃぶる?」


「あ~、そういうことはしないわけね」


「ごめんなさい」


「いやいや・・・そんなことを謝らなくていいよ、なんか無性に恥ずかしくなってきた」



よく分らない話もあったが、ベルトの裏に付けるのがベストだということはわかった。





賢也に気付かれないようにGPSを設置しリビングに戻ると緊張していたからか一気に気が抜けてソファに座って見るともなしにテレビ画面を眺めていると風呂から上がってきた賢也が隣に座って私の肩におでこを乗せた。


「最近、有佳不足かも」


ぞわっと体中が粟だった。

気持ち悪い・・・

私は賢也過多よ


テレビの電源をオフにする。

賢也は何かを勘違いしたのか、嬉しそうな表情で肩を抱いてきた


食道をなにかが逆流するような感覚を覚えて


「ごめん、やっぱりちょっと具合が悪いかも。おやすみ」

そう言い残して急いで“自分”の部屋に戻った。


ソファベッドに横になるとムカムカとこみあげてくるものを必死に抑えながら目を瞑った。






「昨日はごめんなさい、病院には行ってるんだけど実は原因が分らなくて他の病院へ行ってみたりしてるの」


「そっか、オレの方こそごめん、有佳が大変なのに。今日はなるべく早く残業を切り上げるよ」


「大丈夫だよ、しっかりお仕事してきて」


「あれ?ちょっと後ろ向いて」

いつものように玄関まで見送るとき後ろがちょっと変になっているといって、エプロンのポケットから例の物を取り出すとベルトの裏側に貼り付ける。

軽くボディタッチをしながらシャツを整えると気づかれずになんとかミッションを終えた。

久しぶりに私から賢也に触れたことで機嫌が良くなったのか、軽く唇にキスをして出て行った。


急いで洗面所に行くと洗顔フォームで唇を洗い、口腔洗浄剤で口をゆすいだ。




気持ち悪い・・・




考え事で思考がちょくちょく止ってしまい伝票の整理が思いのほか進まないので、事務所の掃除をすることにした。


松崎は朝から外に出ているが、午後の7時に待ち合わせをして二人で尾行することになったのだ。


今から緊張していたら本番はうまくいくのかな・・・


松崎さんからは「GPSがあるから見失っても大丈夫だよ、気楽にね」

と言われたが浮気の現場を直に見ること、誰かを尾行するということが今までの人生で初めてのことだらけで緊張するのは仕方の無いことだと思う。

事務所は私が入社したばかりの時は乱雑に散らかっていてソファもお客さんが来るとその都度、物をどけていたそうだ。

たしかに、私の時もそうだった。

入室したときの見た目は見違えるほどスッキリと清潔感が漂うようになったが、キャビネットの中はぐちゃぐちゃで書類を探し出すのも一苦労だろう。


「ここもすこしづつ片付けよう」

言葉にだして自分に言い聞かせてから作業を開始した。


綺麗に片付いた部屋を見渡して「よし!」と頷いてから施錠して帰宅した。




一度家に帰って着替えをする。

普段は帽子を被ることはないが先日、帰宅途中で見かけた用品店でなるべく顔を隠せるようにキャスケットと大きめのたっぷりとしたパーカーを購入した。

ジーンズにお尻までたっぷりと隠れるパーカー、キャスケットを深く被り松崎さんから借りた伊達眼鏡を掛けて姿見で確認する。

「うん、大丈夫」

小型のバックをクロス掛けして賢也の職場に向った。


探偵事務所で働き出して、初めての調査が自分の夫の浮気調査なんて、笑っちゃう・・・

きっと今夜もあの写真の女性とホテルに行くんだろうと思う。


でも、もしかすると風俗とかにハマっているだけ・・・だけって変だけど二人の間にあるのは愛とかじゃなくて金銭が絡んでいるだけなんじゃないかと思い込もうとしてる。


たまたまあの女性とはあの日だけなんだと・・・



バカだなぁ~


あの日だけの訳がないじゃない、ワイシャツはいつも同じ香水の香りがしていたんだから、しかもわざとらしく濃くて下品な匂い。

そんなことを考えていると松崎さんをみつけて合流し賢也の勤めている会社が入っているビルの向いにあるハンバーガーショップで窓の外を見つめながらアイスコーヒーを飲んでいた。



松崎さんのスマホには賢也の位置を示すポインタが動いている。


「GPSは見つからなかったようだね、これで尾行に失敗しても居場所は確認できるから」


「本当は出てきて欲しくない、残業していて欲しいって思ってます。バカみたいですよね」


「いや、そう思うのが当然でしょ。結婚して2年だっけ?」


「2年間一緒にいてもこんなに簡単に壊れていくんですね」


「逆に言うと、たったの2年で分ってリセットができるのは幸福なんだと思うよ、有佳ちゃんはまだまだ若いからやり直しがきく」


「やり直し・・・」

そんな話をしているとビルから賢也が出てきた。

あわてて立ち上がろうとした私を松崎さんは腕を捕まえて「もう少し見よう」と言って止めた。


賢也が歩道を歩いて行くと、そのあとから写真の女性が出てきた。


「同じ会社の人・・・」


「まぁそうですね」


「知ってたんですね」


「ええ、オプション調査のために調べました。そろそろいきますよ」


松崎は飲みかけのアイスコーヒーを一気に飲み込むと立ち上がった。




二人は同じ電車に乗ったが車両は別々だった。目的の駅に降り立つと女性は小走りになって賢也の腕に自分の腕を絡めていた。


分っていたことなのに、覚悟をしたつもりだったのに胸が痛い・・


心臓をわしづかみにされているようだ。


駅を出て商店街を抜けていく。

児童公園の脇を歩いていると松崎さんが肩を抱いてきた、驚いて顔を見ると

「見通しが良すぎて、向こうが振り向いたら丸見えでしょ?カモフラージュ」

そう言ってウィンクをした。


ウィンクなんてマンガの世界のよう。でも、松崎さんがするとなんとなくチャーミングに見える。

といっても私よりも一回りも年上だけど。


この先にホテルなんてあるんだろうか?

疑問に思いながら歩いていると松崎さんに腕をつかまれ塀の陰に引き込まれた。


「マンションに入る」


松崎さんの視線の先を見ると二人は4階建てのマンションに消えていった。


マンション・・・

「賢也は彼女の部屋に行ったということ?セカンドハウスではないよね?」


呆然としながらも松崎をみると端末を取り出すと耳にイヤフォンを取り付けながら私の疑問に答えてくれた。


「あそこは大森恵美さんが賃貸している部屋です」


「そう・・・」


「盗聴器の感度もいいようだ。俺はしばらくここにいるけど有佳ちゃんはどうする?というか、先に帰ってないとマズくない?」


「あっ、そうですよね。はっきりと答えが出たので私は帰ります」


「その方がいい、送ってはいけないけど大丈夫?タクシーを拾えるならタクシーでいいからね。領収証をもらってくれればいい」


正直、ここに居続ける勇気もないから、松崎さんの提案にのることにして帰宅した。



ゆっくりと湯船に浸かる。


賢也は彼女の部屋で過ごしている。

風呂から上がると、髪を丁寧に乾かしてから自室に入る。

とても眠れないがソファベッドに潜り込んで賢也が帰ってくるのを待った。


まだ仕事は終わっていない。

落ち着いて、大丈夫。これは仕事だと自分に言い聞かせる

そして、一人の女性の人生をやり直す為の仕事をやり遂げる。


一人の女性、そう、私自身。


カチャリという鍵を開ける音と共にドアが開く音がした。

気を遣ってなるべく音がしないようにしているが、単に気まずいだけなのかも知れない。


浴室に入った音を聞いてからそっと部屋をでる。リビングに置いてあるバッグからGPSを抜き取りソファの上に置いてあるスラックスのベルトから盗聴器を取り外すと、部屋に戻った。

心臓が破裂しそうなほど緊張したが、無事に仕事はできた。


先週までは、賢也を試すために誘ったが、今日からは必要ない。




賢也は真っ黒だから。

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