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哀情

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哀情

5 - 天使のような魔物

♥

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2022年11月11日

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窓から葛葉が出ていった。

彼の姿が米粒程の大きさになり見えなくなるまで、窓に前のめりになりながら見送った。


ごめんね、葛葉


___約束は守れない


葛葉の姿が見えなくなったと同時に、自室の棚に向かい聖書と写真立てをを机に置き、護身用の銃を持った。

戦闘用の銃は、気付かぬうちに葛葉に回収されていた。

出る時に、僕に気づかれないよう隠したのだろう。


そうだ、念の為に手紙を書いておこう。

葛葉が止めるくらいなのだから、もしかしたらもうここに戻って来れないかもしれない。

そして、あの嫌な夢。あれが本当は、予知夢で本当に目の前で起こったとしたら…

そう思うと、身体が震える。


ダメだ。こんな弱気になってはいけない。


自分の頬を叩く。

じんわりと頬が熱を持ち、衝撃が薄まる。


心の中で決心をした。


一人の神父と黒い猫が、教会を出た。


ーーー


くっっそ、巫のヤツめ、こんな近くまで来てたのか。

しかも、叶にまで目をつけていたとは思いもしなかった。完全に俺の注意不足か。


あの、黒猫が殺意や悪意を持ったものから対象者に目眩し(めくらまし)の術をかけているのは、分かっていた。

だから、あいつにまかせておいたのに。


急がないとここらの生き物が大半殺される。


叶は、死期が近い。

あいつが悪夢を見ること、それは黒猫にとっても都合が悪いはずだ。

叶が、恐怖心を持っている時は、心に入る隙がなくなり、黒猫の目眩しが発動しにくくなる。


俺の推測だが、その隙を狙って巫が悪夢を叶に見させ、黒猫の術を解き見つけ次第殺し喰うつもりだ。

叶は、気づいてない。

あくまで俺の憶測では、あいつは前世、天使の部類だろう。巫にとって叶は、高い栄養になる。

今は、力も薄れ記憶も無いものの、あいつの背中には2箇所の同じ形の傷があった。

あいつは、生まれつきの痣と言っていた、恐らく羽根の跡だろう。


巫にとっては、少しでも栄養価の高いものを食べたいだろうから、あいつはうってつけだろう。


巫は、こちら側の世界に干渉させてはいけない。力が強すぎる。


もう時期、連絡をした魔族がこちらに到着するはずだ。

巫を見つけしだい、捕らえる。最悪の場合は、殺すことが許可された。


「さーにゃーにゃん!!」


頭上から幼女のような声が降ってきた。

魔界での名前を馴れ馴れしく呼ぶやつは、少ない、つまりは俺の長い付き合いの友人、親族

または


「おまたせ!」


「おせーぞ、りりむ」


こいつは、「魔界ノりりむ」本名は長いから省く。

馬鹿だし、弱いから、戦いは出来ないものの、飛ぶ速度だけは男と変わらないくらいに速いため、情報伝達係として駆り出されているらしい。

世話がやけるやつで、親しい奴にしか伝達できない。


「んで、巫についての情報は?」


「そう!それそれ、えっーとねー」


思い出したかのような表情を浮かべて、無駄にデカい鞄の中から資料を出した。


「巫、またの名 マイヒメ・ルーナ…」


少しばかり怪しい情報から戦闘に使えそうな情報まで一通り話し終えた後、りりむは、満足そうな顔をして資料を俺に渡した。


「はい、サーニャにゃん!いいむは、まだお仕事あるから、ばいばい!さーにゃにゃんも頑張ってね」

そういうと、赤い羽を忙しそうにばたつかせ高い所へと登って行った。


「はぁー、ホントあいつは」


独り言を零しながら、引き続き巫探す。


「ん、なんだ。あそこ」


辺りが赤く染まり、薄らと結界のようなものが張ってある所を見つけた。

急いで向かうと、そこには何百匹もの魔物たちの死骸が転がっていた。


「おいおいおいおい、まじかよ」


そこには、殺気に満ちた目をした巫が今にも壊れそうな結界を破ろうとしていた。


巫の服は、誰かの血により赤く染まり、白い天使のような髪は毛先が切られ長さが不揃いになり、悪魔のような天使のような黒く大きい羽は、返り血を浴び所々が赤く染まっていた。


ーーー


教会を出て、平常心を保とうとしながら一歩一歩を確実に歩いた。

葛葉の飛んで行った方向を目指しながら、入るなと言われた外に出て森の中に入った。

森の中に入った瞬間、何かがこちらを見ているような気配がした。


誰かに見られている


直感だったが確実にそう感じた。

そんなこと気にしている暇がない、何か嫌な予感がずっと腹の名で戸愚呂を巻いていた。

後ろを振り返ってはいけない。

思うがままの方向へ走った。僕が、助けるんだ、夢のようにはさせない。


「にゃあ」


猫の声。猫にしては低いこの声。ロトだ。


「ロト?どうしたの」


振り返るとロトがその場から動かなくなった。

ロトが今まで僕についてこないことは無かったロトなりに何かを伝えようとしているのかもしれない。

でも、今はそんなことを考えている余裕が無い


「ロト、後で迎えに行くから安全な場所で隠れていて。」


「にゃあ」


__待ちなさい


誰かの声が聞こえる。幻聴か?


「にゃ」


__行っては行けません


優しく低い落ち着いた声だ。

しかし、そんなことを気にしている暇は無い。


ロトを1度優しく撫で、立ち上がり、嫌な雰囲気のする方へ走り出した。

悪夢のようなことがありませんように。


そう願いながら。


「はぁはぁはぁ」


といっても、僕はただの神父である。

耳がよく、獲物はすぐに見つけられても、身体能力が抜群に高いわけではない。

正直長時間走り続けられる体力もない。

巫と戦えるかもわからない。


「サーシャ!!!」


彼の名を叫びながら進む。


ヴァァアアアアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙


この世のものとは思えない鼓膜が破れそうになるような悲鳴にもにた叫びが近く上がった。

それと同時にサーシャと同じように強力な魔力を感じとった。

その声のする方へ気配を消し近づくとそこには、一人の少女のような少年のような人間でもなく悪魔でもない


天使、がいた。


よくよく見ると、天使のようなものの下には、魔物や人の無惨な死体が踏みつけられていた。

足首には、元々鎖に繋がれていたような黒い鉄の足枷が着いていた。

肌が白く髪も白く月明かりに照らされていた。しかし、服は血で染められ、細く白い腕や足は誰かの血が滴り、見たことないような素晴らしい羽は、所々に染まっていた。


次の瞬間、背中に嫌な汗が流れ、「死ぬ」とよくわからない直感が働いた。

瞬きをすると、天使が目の前に立っていた。


な、何が、起こってるんだ。

音も空気さえも揺らがなかった。

動いたことがわからなかった。


酷く動揺した。どこからかわき出る恐怖心で手先は冷たくなり小刻みに震え、体は動かず、声も出ない。


その天使は、透き通るような深紅の瞳を向けて薄らと笑みを浮かべた、一瞬たりとも目を離さない。

僕は吸い込まれるようにその瞳に釘付けになった。


意識が少しずつ遠のき、ふわふわする。

なんだこれ、心地がいい。

眠るように目が閉じていく。



にゃぁ


___目を閉じてはなりません


まただ。先程と同じ声。その瞬間、意識を持っていかれていた事にた気づいた。


ハッとして、自分の頬を強く叩いて意識を戻した。


こいつは、天使なんかじゃないサーシャが探していた巫だ。


巫が、面倒くさそうに目を細めた。


頬が熱をもち、じりじりとが痛み広がる。意識がしっかりすると巫は、また同じように瞳を近づけ意識を持っていこうとした。

僕は、咄嗟に掛けていた十字のネックレスを両手で強く握り、早口に聖書の文を読み上げた。


「___」


読み上げた途端に十字と心臓の辺りから白い光の糸が放たれ、眩い光の塊となり、巫を囲い透明な光の壁となった。

目の前で起こったことが非現実的すぎて、頭が理解に追いつかない。

ともかく、これできっと少しは大丈夫なはずた。早急にこの事をサーシャに伝えなければ…


キャアアアアアアアアアア


さっきとは異なる悲鳴に似た、甲高い声のようを音を発した。

透明の壁を内側から破ろうと鋭い矢のような、光を手から出し壁にひたすらにぶつけ始めた。

思っていたよりも時間が稼げなそうだ。


僕が出来ることは、サーシャが来てくれることを祈り、聖書を読み上げ続けることだ。


読み上げようと、口を開いた時巫が、こちらを向いた。


「ォマェ、ナニヲシテイル。ワタしをナゼトジコメタ」


声を発する天使のような巫が、先程とはまた違った、透き通るような声で話している。

いや、これは声では無い音だ。

何故か話していることがわかる。直接脳に語りかけられているみたいだ。


駄目だ、巫に意識を向けては一瞬で吸い込まれてしまう。


頭ではわかっていながらも、口は勝手に動いた


「サーシャが来るまでの時間稼ぎですよ、シスターや子供たちにまで被害を及ぼす訳には行きません。それに」


しまった、と思い口を手で覆う。

無意識に答えていた。これも、巫の能力なのか…?


巫が言葉を続ける。


「サーシャ?ドコカデ、」


ピシッと透明な壁にはいヒ入った。

まずい。間に合わないか。


「叶ー!!!!!」


頭上から聞き馴染みのある声がして、勢いよく上を向いた。


「サーシャ!!!!」


「おま、何してんだよ!!」


サーシャは、困惑しているような焦った表情で僕に怒鳴りつけるような声で問いた。


「サーシャ、ごめんなさい。あ、あの、」


サーシャは、僕の話にず聞かずに、肩を軽く押し辿ってきた方角へと僕を向けた。


「お前は、逃げろ今すぐ教会に帰れ。こいつは、俺がなんとかする。教会には結界を張っておいた、万が一こいつを取り逃しても被害がないようにしてある。俺の知り合いも何人か人間の近くに見つからないように付けてある」


「だから、早く帰れ。この弱っちぃ結界も、もうじき壊れる。時間の問題だ。」


なんとしてでも、彼は僕を戻したいらしいが、僕も引き下がれない。それなりの覚悟でここまで辿り着いたのだ。


「悪いけど、それは聞き入れられません」


僕の方を見た。


「馬鹿、おまっ」


その瞬間、ガラスが割れるような音と共に、巫が結界を破き、確かな殺意と狂気が僕たちに向けられていた。


「クッソ」


サーシャは、直ぐに戦闘態勢に入り、目を光らせた。

僕は、一瞬怖気付きながらも、巫に銃を向けた


「サーシャが私を守りたいと思うように、私も人間ながら君を守りたいんですよ。わかってください」


サーシャは、軽くニヤつき、「人間のくせに生意気だな」と小さく言葉を放った後、巫の方へ魔法を放ちながら宙を舞った。


「馬鹿なヤツだな、死ぬに決まってるのによ。好きにしろ、死んだら血は貰うぞ」

「生きていたら?」

「お前とチェスをする」

「いいでしょう、紅茶とクッキーもだしてあげますよ」


巫は、サーシャ目掛けて光の弓で矢を放ち、目で追いかけられないような速さで攻撃と防御をした。

サーシャも、負けじと軽々と宙を舞いながら自身の周りに結界のようなものを張りながら、コウモリの形をした、火のようなもので攻撃を続けていた。

人間の僕には、到底できないようなことを成し遂げた。


僕もやらなければ。震える指先を銃につけ、力をこめ、巫を目掛けて撃ち続けた。

しかし、当たるどころかかすりもしない。

異次元すぎる戦い。

巫と葛葉は、戦闘力がほぼ互角なのか、中々の決着がつかず銃の弾も切れてしまった。


「叶ぇ!!ちょっくら上の方行ってくる」


そう言って、先に高くへ飛んだ巫を追いかけ上へ、いくつか傷をつくったサーシャが飛んで行った。

その時に、一瞬巫の顔が見えた。

僕の方へ一瞬視線をずらし、薄らと口角を上げたように見えた。


その瞬間、僕の腹部から大量の血が流れた。




ーーー


作者 黒猫🐈‍⬛

「哀情」 第5話 天使のような魔物

続きます𓂃 𓈒𓏸


※この物語の無断転載はお控えください

※この物語はご本人様と関係ありません

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