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「……人間、お前死にたいのか?」


「はぁ?だから何がだってば!!!!」


あまりの騒がしさに小鳥は電柱から飛び逃げる。

朝……といっても時計は11時50分を指しており、昼という方が近いだろう。

昨夜、ナルトはこんな事を言っていた。

「明日大事な講義だな〜…げ、10時から?早起きしねぇと」

大事な講義。冷や汗を垂らすほどのそれを、彼は「やべー寝ちまった」で済ましたのだ。


「こうぎだって言ってただろうが」


「あーそれか。へーへー教授に休みますって言うってばよ〜〜」


休む??熱も無ければ大怪我もしていないのに?

こいつが天界にいれば叱責だけでは済まないだろう。画面に入れた適当な文字を読み上げたあと、あくびをしてキッチンへ向かった。


「昼どーしよ。何がいい?」


「知るか」


「それが一番困るヤツだってばよ」


そういいながらも勝手に献立は決まっていた。なっとうというやつらしい。


机に出された瞬間、サスケは驚愕した。


「……!?なんだこの気色の悪いぶつぶつ」


「コラ!食べ物を悪く言うんじゃありません!」


途端嗅いだことのない異臭が爆ぜ、サスケの鼻腔を容赦なく突き抜けた。その瞬間サスケは切れた。


「こんなの食えたもんじゃねぇ。人間はこんなの食ってんのか」


「知らんって言ったのお前だろー?!あと納豆は健康にいいから!!!」

「そんじゃオレがそれ食うから代わりにこれ食えってば」


そう差し出されたのは赤くて丸い果実のようなものだった。これは割と良さそうだ。


「フン、これならいい」


「ほんとワガママ天使ちゃんだな。」


呼び方に少し腹が立ったが、落ち着かせるように果実を口に運ぶ。美味しかった。咄嗟に翼の力が少し抜ける


次第に横から音が響き、人間の声が聞こえた。


『俳優、○○の不倫騒動は───』


「ちぇ、またこれかよ」

「こんなんキョーミねぇっての!なぁサスケ?」


「は?」


いきなりで困惑しながら、彼を見ているとずっと板に向かって文句を言っている。

画面に映る人間も、無駄にデカい声を出しながらなにかを訴えている。

目の前のナルトも画面も全てがうるさく、もはや自分やナルトの咀嚼さえも雑音に聞こえてしまい落ち着かない。こんなに異常な食卓は経験したことがない。鬱陶しい。


そんなサスケを置いていくように、ナルトはなっとうを食べながらツラツラ文句を垂れていた。


「このタレントって結婚してたっけ?わかんねー……」


「……人間」


「ん?なんだってば?」

「トマト美味い?」


なんて何食わぬ顔で言うナルトは、サスケの逆鱗に触れてしまった。


「その文句ばかり吐くその口を閉じろ」

「聞いているだけで気分が悪い」


「えっ?文句……?」


「お前はまず講義に行ってないんだぞ。そんな身分で無駄口を叩くとはよっぽど罰が好きみたいだな」


「ちょ、ちょっと待てってば!!!」


サスケが翼を広げた途端、ナルトは顔を青くした。

口にはなっとうのねばねばが付いている。


「待つも何もない」

「呑気に食いやがって、さっさと講義に行けばどうなんだ」


「だ、だから今日休むって……」


「甘い。そんなので生き残れると思ってるのか」


「落ち着けって」


そう言いながらゆっくりと席に座り、再びなっとうを食べる。というか先程からなっとうの匂いが部屋に充満していて臭い。


「にゃはは!この芸人おもしれー!!」

「サスケこういうの見たほうがいいってばよ」


げいにんとやらの甲高い声と笑い声。


「……黙れ」


耳を塞いだ。何を言ってもコイツは聞かない

人間に少しでも期待を持った自分が馬鹿だったのだろうか。

サスケはその場に座り込み、自分の体を見た。


(今の俺に手足がなくて良かった。今頃ぶん殴っているだろう)

(まずなんだこの服。動きにくいったらない)


考えると幾つも人間界の嫌なところが見えてくる。ナルトに借りている服も、変な柄が描いてあって嫌になってきた。


……天界に、帰りたい。


げいにんの声だけが響く空間で、先に口を開いたのはナルトだった。


「……なんだよ急に黙って。そんなに嫌だった?」

「ごっ、ごめんって……何も納豆でそんなに…」


「それだけじゃねぇ」


思わず大きな声を出してしまった。ナルトは「うおっ」と小さく驚く。


「朝からずっとだ。講義に遅れたからそのまま休むだの、無駄に騒ぐだけの声を流すだの……」

「訳がわからねぇ。人間はこんなのが面白くて生きてんのか?」


「……」


あまりの羅列にサスケは息切れしている。ナルトも、どう返せばいいかわからずただサスケを見つめるばかりだ。


「……反論もできないか。滑稽だな」

「天界の方がよっぽど楽だった。」


そう翼を広げ、窓へ向かった。


「俺は還る。帰って───」


肩に手が乗り、そのまま後ろへ倒れてしまった。


「、!?」


「それは違ぇだろ」


その声は、いつもよりもひとつほど低かった。

彼を見ると目が合ってしまい、ついドキッとした。だが冷静さを取り返し反対する。


「何がだ、暦が何度変わっても同じじゃないか。講義に遅れる、バイトに遅れる、今日は諦めたぞ?」


「それは確かにオレが悪いってば……、でもだからって楽な方ばっか進んでちゃダメなんだよ」


「でも、」


「今日は…、この前の復習って感じの講義だったから行っても行かなくてもよかったんだよな」


「…なんだと」


「これ休んだからって単位なくなったりしねぇからパスしちまった」


「ならハナから行かなくてよかったじゃないか」


「んー、まぁそうなのかもな」


解らない。何故行かなくても良いものに行こうとしてしまうのか。無理して体を張らなくていいのだから。───だってそれは償いでも罰でもない。


「でも、オレってば本気で先生目指してんだ」

「そんならせっかくのチャンスは掴んどいた方がいいだろ?子どもとか行事に全力な先生ってかっけーじゃん」


(掴む…?痛いとわかっている路をわざわざか?)


まぁ今日は行けなかったどなー!!と頭を搔くナルトは、先程よりずっと…


何故だかわからないが、遠くのものに惹かれ懸命になる姿は………どこか、胸をざわつかせた。


かっこいい、と思ってしまって悔しい。


「……もう人間はなんだかわからねぇ。どこが真面目でどこが適当なのか…」


「へへ、そのうちわかるってば。オレもそこら辺はわかんねーけど!」


悪いことをすれば罰が下り、良いことをすれば誉れである。そんな単純な世界しか知らなかった。


だがここでは、叱られない代わりにすべてを自分で選ばなければならない。


それが自由だというなら───

人間界は、ひどく厄介で。


……だからこそ、少しだけ面白い

サスケもここに慣れれば、天使としての自分を思い出せるだろうか?


人間界に、もう少しだけ期待してもいいかもしれない。

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