この物語は、俺が出会いと別れを経験し、ある種の覚醒に至るまでの経緯を書き連ねている。まあ、ゆっくりと聞いてほしいな、珈琲でも飲みながら。「おい、和音、起きろ!おいでなすったぞ……士能達介(シノウタツスケ)だ」2018年2月―この頃の俺は、師匠と共に現場に出てある男を尾けていた。一週間前に依頼されたからだ。俺の名前は栢山和音(カヤマワオン)、都内で探偵をやっている。その日、乱雑に書類が並んだデスクの上の固定電話がけたたましく鳴り響いた。最近はめっきりと仕事が減っていたので、久々の電話に俺は一瞬間の躊躇いの後、受話器を手に取った。「はい、羽原(ハハラ)探偵事務所の栢山です!」「……もしもし、あの、わたしは北戸葵子(キタトキコ)と申します」この物語の鍵を握る人物だ。事件を語るには彼女の存在は欠かせない。「北戸さん、ですね。ご依頼ですか?」「ええ、実はその―」聞けば、彼女の兄が一週間前に家を出たきり帰って来なくなり連絡もとれないのだという。彼女は兄と2人暮らし。不安感に駆られた彼女はうちに相談することにしたらしい。 後日、事務所にて―「なぜ、警察ではなく……わざわざ探偵事務所(ウチ)に?」「それはっ、、警察には少し嫌な思い出があって……」この返答には僅かな違和感を覚えたが、深く知ろうとするのはルール違反だ。そんなことより俺にとってはもっと重大な問題があった。北戸さんは”しのれな”超人気アイドルの篠宮玲奈(シノミヤレイナ)にそっくりだったのだ。その容姿はまさに神のいたずら!二十歳とは思えない無垢なあどけなさがベースに残りつつ、時折見せる艶麗なる表情は俺の心を鷲掴みにした。上半身にそびえる双丘は豊かに盛り上がり……「―あの、お願いします!お兄ちゃんを絶対に見つけだしてください!」「あ、は、はい!」揺れてる……!何考えてるんだ!相手は依頼人、お客様だぞ!一息の間をおいて俺は諸々の費用の話を持ち出した。「兄を見つけてくれたら1000万円払います!」「1、1000万円ですか!?」「それに、わたしにできることなら何だってやります!」だから揺れてるんだって!正直、色々と危なっかしさを感じる。こうして、俺と彼女は邂逅した。この一週間後、とある事件が起きる― 次回 第2話「Ignition 」
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