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森の中を走り進んでいくと、やっと見つける。ローはドフラミンゴに追い詰められていた。
「っ、ジョーカー! おーい! ジョーカー! 奴を始末する前に取り返してほしいものがある! 俺の心臓だ! ローに心臓を取られた!」
「チッ……ROOM! シャンブルズ」
ローがその場から逃げた。俺はそれを追いかけようとして足を止める。俺は、俺はシーザーをサニー号の方へ戻すんだ。ローはきっと大丈夫。ローは死なないはずだ。
俺はシーザーを抱き上げる。
「おいっ、放せ!」
「うるせえうるせえうるせえー!! 俺は本当はもっとローの役に立ちたいんだよ! 守られるだけじゃ嫌なんだよ!!」
「はあっ!? 何言ってんだ!?」
シーザーを無視して、俺は森から出ようと足を動かした。あと十数メートルで森から出られると思った時だ。
俺はその場に倒れ伏した。
「っは……っは……っは……」
弾丸で撃たれた時のように、足が動かない。まさか、ドフラミンゴの技…? 嘘だろ、さっきの場所からどれだけ離れてると思ってるんだ。技の射程距離外じゃねえのかよ!
「くそっ…くそっ、くそっ!!」
体の力が抜け、俺の手から逃げたシーザーが再びドフラミンゴの元へ戻ろうと森の中に入っていく。
俺は、またローの役に立てなかった。ローの役に立つどころか、足手まといにしかならない。
悔しくて涙が出そうになる。
ローの共犯者になったってのに、何一つ、何一つ、俺はローの力になれていない。
俺は力を振り絞って上半身を起こす。立ち上がれるだろうか。否、立ち上がらなくてはならない。このままじゃ終われない。
「ぐっ……うっ……」
何とか立ち上がった俺は、海岸の方へ歩く。少しでも森から離れていた方が良いかもしれない。
目の前が霞んでいくが、しっかりと目を開き、海を見るとサニー号が見えた。
俺は無理やり体を動かして月歩を使い、サニー号へ乗る。
「ジッ、ジェイデン!? どうしたんだその怪我!?」
「怪我はあとで見てくれ。それよりここ、闘魚がいるテリトリーだろ」
俺はフラフラの体で烏融を抜き、闘魚を斬り刻む。血が吹き出し、辺り一面が真っ赤に染まった。
「うわあああ!!」
「数が多い…」
船への突進を繰り返す闘魚たちを見て、俺は歯噛みする。手負いの俺がどこまでやれる? でもやるしかない。
再び刀を強く握りしめた時、闘魚たちが海の中へと消えていった。
「闘魚は、どこへ行きました?」
「…マズい」
「今度は何!?」
「ドフラミンゴが飛んでくる」
「「えーっ!」」
「何この悪夢、私たち死んじゃうの!?」
「人の片方の足の自由を奪っておいて、まだ足りねえっていうのかよ!」
俺はサニー号から飛び出すと、ドフラミンゴはいつもの様に笑う。
「お前が片足を失ったところで無能になるとは思えねえ。俺はお前の能力を買っているからな、殺しはしねえさ。……ただし、死ぬくらい傷めつけはするがな」
ドフラミンゴが糸を操りながら近づいてきた。そして俺の顔のすぐ横に糸が掠める。
恐怖で震える声を抑え、俺が言葉を紡ごうとした時、ドフラミンゴの動きが止まった。
「泣いて嫌がるうちの仲間に、近寄んじゃねえよ!!」
声の主はサンジだった。サンジはドフラミンゴに蹴りかかる。
「ジェイデン! お前はもうサニー号に降りてろ!」
「…あぁ、ありがとう」
俺はふっと体の力を抜いてサニー号へ降りていく。
「っあ、重量強化!」
チョッパーが俺を受け止めてくれたが、そのまま意識を失いそうになる。
「ジェイデン…なぁ……?」
ああ……本格的にドフラミンゴに俺の本名がバレたな。もうこの際仕方がない。というよりもう、どうでもいい。
「お前血を流しすぎだよ! なんでこんなになるまで戦ったんだ!」
「チョッパー、説教はあとに…してほしいかも…」
俺は意識を失わないように必死に耐えていると、俺の耳にローの声が入ってくる。
「…ロー、悪い。俺、頑張ろうと思ったんだけど……ボロボロになっちった」
そう言ってヘラリと笑えば、ローは眉間にシワを寄せた。
「やられたのは足だけか」
「切り傷もかな……」
「おいトラ男!! またドフラミンゴが来るぞ!!」
「くそっ…」
「黒足屋」
「あ?」
ローはサンジに工場の破壊の方はどうなっているんだと聞いた。どうやら場所は分かったらしいのだが、想像以上の大仕事になるらしい。
「ジェディ」
「ん、ああ」
俺は服をめくる。ローが俺の左胸に触れ、心臓を抜き取った。それは俺のではなくシーザーのものだ。心臓を目の見える所に置いてあるとシーザーが目を盗んで取り返すかもしれないため、俺の体内に隠しておいたのだ。俺の心臓はローが持っているだろう。
「お前ら、とにかくこいつを連れて今すぐゾウを目指せ」
「ゾウ?」
「次の島へのビブルカードをジェディから貰っているはずだ」
「これね」
「次の島って……ルフィさんたちはどうするんですか?」
「工場破壊さえ完了すればこの島に用はない。おれたちもすぐに後を追う」
「あ……イヤよ! 待つわよ! 船長なしで出航できるわけないでしょ! 私たちは麦わらの一味よ」
船が大きく揺れ、船全体に影がかかった。俺たちのいる方に軍艦が飛んできていたのだ。恐らく、いや、絶対に藤虎の能力だろう。ドフラミンゴももうこちらにたどり着いてしまうだろう。
「残るのは自由だが、シーザーは渡すなよ」
「撃てーっ!!」
軍艦の方から海兵の声が聞こえ、砲弾がサニー号に向かって撃たれる。
「ロー! 隕石も降ってきた!」
「隕石!? 嘘でしょう!? トラ男くん! 麦わらの一味、直ちに出航しまーす!」
「賛成であります!」
「早く行け!」
「おいロー! シーザーを遠くへ運ばなきゃならねえのは分かる。先に行くのも構わねえ。でもドレスローザは通過点のはずだ。俺たちの共通の目的は四皇・カイドウの首だろ。お前…ドフラミンゴにこだわりすぎちゃいねえか?」
「…………ROOM タクト!」
サンジの言葉を遮るようにローは能力を発動させる。それからすぐにドフラミンゴの攻撃が俺たちを襲う。ローの持っている鬼哭の刀身をドフラミンゴの糸が絡みつく。
「ナミ屋! いいか、雲のない場所を選んで進め!」
「えっなんで?」
「ドフラミンゴは、イトイトの実の能力者。雲に糸をかけて空中を移動してる。雲のない場所じゃ追ってこれねえ!」
鬼哭に絡んでいる糸を斬り、それから俺はドフラミンゴの部下の首に刀を添える。少しでも動けば首を刎ねる。言わなくてもわかることだろう。
「若様、あたくしのことなど気になさらずに!」
そう言ったが、ドフラミンゴは動かなかった。クー・ド・バーストでサニー号が飛んだ瞬間、ローは船を降り、鉄橋に着地する。
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