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92: 名無しタコ (20XX/09/17 03:10:05)
港湾区住みだけど、今夜ほんとに銃声聞こえた。最初は風かと思ったけど、連続でパーン!パーン!って。やばいって。
93: 名無しイカ (20XX/09/17 03:12:44)
マジか……俺も倉庫街の方で風のせいか何かで物が倒れる音かと思ったら、やっぱ銃だわ。反響でやたらデカく聞こえた。
94: 名無し (20XX/09/17 03:15:11)
銃声とか……港湾区で起きるとはな。さすがに警察も来ない時間帯だろ。
95: 名無しタコ (20XX/09/17 03:17:39)
でもよく考えると、この街で夜に銃声がするのって異常事態だよな。幻覚チーターの話もあるし、何が起きてるんだろう。
96: 名無しイカ (20XX/09/17 03:20:02)
幻覚チーターか……怖すぎるだろ。銃声だけならまだ現実的だけど、姿が複数に見えるとか考えたら無理ゲーすぎる。
97: 名無し (20XX/09/17 03:22:41)
港湾区住民として言わせてもらうと、煙みたいな白いもやも見えた気がするんだよな。銃声の後にふわっと広がった感じ。
98: 名無しタコ (20XX/09/17 03:25:12)
え、それ幻覚じゃなくて煙弾とかじゃね?リアルで戦ってるならあり得る。
99: 名無しイカ (20XX/09/17 03:27:55)
なるほど……それなら銃声も納得。倉庫街で密かに戦闘してる可能性あるな。
100: 名無し (20XX/09/17 03:30:44)
怖すぎるだろ。外に出て確認とかできないわ。俺は窓から覗くくらいが限界だ。
101: 名無しタコ (20XX/09/17 03:33:11)
でも見てみたい気もするw 幻覚チーターと狩人の戦いとか、一生に一度かもしれん。
102: 名無しイカ (20XX/09/17 03:35:40)
いやいや、見たら最後かもな。幻覚に惑わされて撃たれるかもしれん。
103: 名無し (20XX/09/17 03:38:22)
そう考えると、狩人ってマジで化物級だな。透明やラグ使いも仕留めてるんだろ?幻覚くらい楽勝かもな。
104: 名無しタコ (20XX/09/17 03:40:55)
でもさ、港湾区で銃声聞こえるってことは、もう現場は近くの住民もざわついてるはず。迷惑すぎるだろw
105: 名無しイカ (20XX/09/17 03:43:30)
まあ、でも狩人が動くならそのおかげで街が安全になってるんだと思えば……ありがたい話かもな。
106: 名無し (20XX/09/17 03:46:12)
確かに。迷惑なチーターが減るなら、街の人間にとっては良い影響かも。
107: 名無しタコ (20XX/09/17 03:48:44)
でも、幻覚チーターは手強いらしい。倒すのも一筋縄じゃないって話だぞ。
108: 名無しイカ (20XX/09/17 03:51:11)
いやマジで。近所の住人も今夜はざわざわしてる。銃声で目覚めた人も多いだろうし。
109: 名無し (20XX/09/17 03:53:55)
掲示板でこんだけ情報出てるんだから、狩人が動いた証拠ってことだな。
110: 名無しタコ (20XX/09/17 03:56:22)
うん。港湾区で何が起きてるかはわからんが、誰かが確実に行動してる。
111: 名無しイカ (20XX/09/17 03:59:10)
うちは港湾区の倉庫近くだけど、今夜は外に出るのやめるわ。銃声がリアルすぎる。
112: 名無し (20XX/09/17 04:01:44)
でもさ、こうして書き込んでるだけでも、現場の臨場感が伝わってくるな。
113: 名無しタコ (20XX/09/17 04:04:22)
今思うと、狩人の存在ってありがたいんだよな。幻覚チーター相手に街を守ってるわけだし。
114: 名無しイカ (20XX/09/17 04:06:55)
いやでも、戦場を近くで聞くことになるってのは怖すぎるだろ。港湾区住民には堪えるな。
115: 名無し (20XX/09/17 04:09:33)
銃声が聞こえる度に、幻覚チーターとの戦闘が目に浮かぶ。怖いけど、少しワクワクもする。
116: 名無しタコ (20XX/09/17 04:12:10)
港湾区で戦ってるってことは、狩人が直接現場に介入してるってことだよな。リアルタイムで戦闘してる可能性ある。
117: 名無しイカ (20XX/09/17 04:14:55)
うちはもう窓閉めてモニター越しに見守るしかない。街の安全は狩人に任せるしかないな。
118: 名無し (20XX/09/17 04:17:32)
でもこういう掲示板の反応見てると、みんな港湾区の夜の異変を結構楽しんでる感あるな。
119: 名無しイカ (20XX/09/17 04:20:11)
いや、楽しむっていうより、恐怖と好奇心の混ざった複雑な感情だろ。誰も外に出たくはないけど、話題にはしたい。
120: 名無しイカ (20XX/09/17 04:22:44)
とにかく、銃声が聞こえたって報告がある以上、港湾区では何かが起きてるのは間違いない。狩人が動いてる証拠だろう。
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126: 名無しタコ (20XX/09/17 04:35:27)
港湾区、さっきまで銃声がしてたけどもう止まったな……でも現場に行ってみたい気もする。どんな状況か、自分の目で確かめたい。
127: 名無しタコ (20XX/09/17 04:36:50)
126
いや、止んだからって油断するなよ。あそこは普通じゃない。銃声が止んだだけで安全とは限らん。てか狩人がやられたかもしれないんだぞ。
128: 名無しイカ (20XX/09/17 04:38:12)
まあ確かに……でも興味が勝つんだよな。幻覚チーターとか、狩人とか、本当にいたのかを見てみたい。
129: 名無しタコ (20XX/09/17 04:39:55)
128
無茶だろ。掲示板全体がざわついてる状況でそんなこと言うな。
130: 名無しタコ (20XX/09/17 04:41:40)
止まった銃声だけじゃわからないんだろ。狩人がどうやって殺しているのかを。
131: 名無しタコ (20XX/09/17 04:43:27)
130
正直、現場に近づくのは自殺行為だと思うぞ。
132: 名無しイカ (20XX/09/17 04:45:11)
それでも……気になるんだ。港湾区で何が起きたのか、誰が動いたのか、全部知りたい。
133: 名無しタコ (20XX/09/17 04:46:55)
132
やめとけ……本当にやめとけ。あそこに近づく意味なんてない。
134: 名無しイカ (20XX/09/17 04:48:33)
マジでやめろよ…?
135: 名無しタコ (20XX/09/17 04:50:12)
でも……やっぱり知りたい。何があったのか、誰が動いたのか、全部自分の目で確認したい。
136: 名無しイカ (20XX/09/17 04:52:01)
135
無茶だ……掲示板全員が固まってるのに勝手に現場に行くとか。
137: 名無しタコ (20XX/09/17 04:53:44)
そもそも銃声が止んだのも、「狩人がチーターを狩ったから止んだ」のか確かじゃないだろ?
138: 名無しタコ (20XX/09/17 05:00:33)
俺もう寝るわ。怖くて仕方がない。
139: 名無しイカ (20XX/09/17 05:02:12)
……掲示板で見守るしかないのか。現場に行く勇気は出ないぞ。
140: 名無しタコ (20XX/09/17 05:03:50)
でも知りたい、真実を。
141: 名無しイカ (20XX/09/17 05:05:27)
俺ももういいわ。行きたきゃ行ってこいや。
142: 名無しタコ (20XX/09/17 05:07:12)
141
その言い方はないだろ。
143: 名無しタコ (20XX/09/17 05:08:55)
分かった。行ってくるよ。
144: 狩人 (20XX/09/17 05:10:01)
行くな
145: 名無しイカ (20XX/09/17 05:11:33)
144
……え?誰…?
146: 名無しタコ (20XX/09/17 05:11:54)
おいおい怖いって。
147: 名無しイカ (20XX/09/17 05:12:21)
144
説明なし?
148: 名無しイカ (20XX/09/17 05:13:36)
144
おいおい狩人さんよぉ。「行くな」じゃなくて「来るな」の間違いじゃないのかぁ?
149: 名無しイカ (20XX/09/17
148
挑発はやめなって。
150: 名無しイカ (20XX/09/17 05:14:07)
148
でも流石に名前狩人にしてる当たり本人だよな?
151: 名無しイカ (20XX/09/17 05:14:53)
150
いや逆に行かせたくして殺しにくるチーターの可能性も…。
152: 名無しタコ (20XX/09/17 05:15:23)
いや…。分かんね。
153: 名無しタコ (20XX/09/17 05:15:44)
あ〜あ。その狩人の情報も誰か知ってたら良いんだけどなぁ〜。
154: 名無しイカ (20XX/09/17 05:16:00)
153
それも結局、誰かが行って報告してくれたら良いんだけど流石に無理だな。
155: 名無しタコ (20XX/09/17 05:16:33)
ああ……今夜はずっと掲示板見てるしかないかぁ…。
156: 名無しイカ (20XX/09/17 05:17:01)
155
そうだな。誰も行かない限り、安全のままだ。
157: 名無しタコ (20XX/09/17 05:17:44)
144
やっぱ狩人ってすごい存在だわ……一言で全員を止めるなんて。
158: 名無しイカ (20XX/09/17 05:18:12)
157
まあ、誰も動かなくなるくらいの威圧感はあるよな。
159: 名無しタコ (20XX/09/17 05:20:50)
結局、港湾区には誰も行かないからひとまずは安心だ。とりあえず解散。
港湾区に漂う湿った夜気は、海風と錆の匂いが混じり合った独特の臭気を孕んでいた。スロスは小さなスマホの画面を睨みつけながら、足を止めずにアスファルトを踏み締めていた。掲示板に並んだ無数の書き込みが頭の中でぐるぐると回り続ける。
「銃声が聞こえた。」
「倉庫街から煙が見えた。」
「幻覚チーターの可能性。」
そして決定的だったのは一つのレス番号144、「狩人」を名乗る者の冷たい一言だった。
「行くな」
短い、けれど圧倒的に重い言葉。スロスは画面を閉じ、ポケットにしまい込んだ。誰が書き込んだのかはわからない。だが、その言葉の裏にあるものは察せられた。確かに誰かが戦い、そして決着がついたのだ。
銃声が止んだという報告はそれを証明している。ならば、その戦場に何が残されているのか、自分の目で確かめなくてはならない。
スロスは腰に差したナイフの感触を確かめる。夜風に煽られ、赤黒く染められた海面が遠くに見える。錆び付いたコンテナの列、古びた倉庫群、湿気でじっとりと濡れた路地。
すべてが眠りについた時間帯に、ただ自分だけが異様に覚醒していた。幻覚のチーターというその存在は、彼女にとって単なる都市伝説ではない。自身が追い求め、そして「狩るべき相手」として何度も対峙してきた存在だ。
けれど今回の相手は彼女の手で仕留められなかった。誰かが銃を使い、幻覚を打ち破った。幻覚能力は厄介極まりない。敵の姿を複数に見せ、何が本体かを見極める前にこちらの意識を乱してくる。普通なら銃一丁で立ち向かうなど自殺行為だ。だが、それを成し遂げた「誰か」がいる。
スロスは歩みを進めた。
路地裏は静まり返っていた。
時折響くのは、港湾区特有の波の打ち寄せる低い音と、錆びた鎖が風に揺れて擦れる金属音だけ。
掲示板の匿名たちがざわついているのは当然だろう。普段は平和なこの街で、真夜中に銃声が連続して鳴り響くなど近頃の異常事態以外の何物でもない。けれど、スロスにとっては既に慣れた異常だった。血とインクの臭いに満ちた夜を歩くことは、彼女の日常の延長線にある。歩くほどに倉庫街の輪郭が見えてくる。
夜の湿気を帯びた空気が肺に絡みつき、視界の端に赤黒い染みのようなインク跡が点々と残されていた。幻覚のチーターが消えた痕跡だと気付く者は少ないだろう。
だがアマリリスにとっては確かな証拠だった。銃を握る指先にはまだ火薬の熱がわずかに残り、乾ききらぬ返り血である。否、赤インクが頬にこびりつき、ひやりとした風が触れるたびに違和感を訴えていた。
深夜の街灯はちらつくように瞬き、倉庫街全体を幽霊の住処のように照らし出す。戦いの余韻は去ったはずなのに、空気は重く、闇は静けさを保ちながらも何かを潜ませているかのようだった。アマリリスはその闇の中を歩み、やがて振り返ることもなく帰路につこうとする。そのとき、逆方向からゆっくりと近づいてくる影があった。フードを深くかぶり、夜の闇に紛れた小柄なシルエット。アマリリスの視線が自然と吸い寄せられる。
何かを探し、何かに引き寄せられるように、迷いなく倉庫の奥へと向かおうとしているその足取りに、戦場を出たばかりのアマリリスの警戒心がざらつく。
近づくたび、互いの呼吸がわずかに重なる。湿ったアスファルトの匂いに、乾いた鉄錆のにおいが混ざり合い、遠くで夜鳥がひと声鳴いた。その一瞬の静寂を破るように、アマリリスは迷いなく右手を伸ばす。指先がフードの人物、スロスの肩に触れる。布越しに伝わる体温は冷えきってはいない。だが生温い緊張がそこにあった。驚きが走るでもなく、振り返るでもなく、ただ前だけを向いていたその存在に対して、アマリリスは低く、しかし鋭い声を投げかける。
「お前、どこに行くつもりだ?」
その言葉は夜気を切り裂き、銃声にも似た鋭さでスロスの耳に届いた。だがスロスは答えない。返事の代わりに、肩に置かれたアマリリスの手を、強引ではなく、しかし確固たる意志を込めて振り払う。その仕草には怯えも逡巡もなく、ただ前に進むことへの固執だけがあった。アマリリスの手が空を切る。
わずかな摩擦熱とともに夜の冷気がそこに差し込み、残された彼の掌は不意に孤独を覚える。スロスは一瞥すらせず、ただ倉庫街の闇へ歩を進める。その後ろ姿は何かを追い求める亡霊のようであり、また夜に抗う微かな火のようでもあった。
アマリリスは立ち止まったまま、その背を見送る。声を重ねることはしない。問いは一度きりで十分だった。肩に触れ、言葉を投げ、そして振り払われる。その一瞬にすべてが込められていた。スロスの歩みは迷いなく、倉庫の奥へと吸い込まれていく。
夜の街灯に照らされた二つの影は、交差し、離れ、やがて完全に別々の方向へと伸びていった。互いの存在を知りながらも名を告げず、素顔も確かめず、ただ肩に触れ、振り払うという短い交錯。その刹那に刻まれた重さは、銃声の余韻よりも深く、幻覚の残滓よりも鮮烈に夜に染み込んでいった。
そして今離れた背中が、いつか互いに預けることになる事はまだ誰も知らない。
倉庫の扉を押し開けると、閉まった夜気と錆の匂い、そして潮の香りが入り混じった重い空気が肺を満たした。高く積まれた鉄骨の梁が闇に溶け込み、ところどころ錆びつき、湿度のせいで冷たく光る。
割れた天井から差し込む月光は、床に広がる赤黒い染みを淡く照らしていた。遠くから波の打ち寄せる音が鉄の壁を伝い、倉庫内部に鈍い低音として響いている。その中心に横たわるのは、仰向けになったイカの死体だった。左肩には小さな穴、そこから流れた血が脇へと滲み、右脇腹には深く抉られた傷が広がり、おでこにも銃痕がある。
死後間もないため、体はまだ硬直しておらず、手足はわずかに弛緩している。湿度の高い空気が皮膚に絡みつき、鉄と血の匂いが鼻腔を刺激する。スロスは歩み寄り、血の広がり具合と死体の損壊を俯瞰する。床にべったりと広がる血溜まりは濃く、鮮やかに赤く光り、まるで月光を吸い込むかのように冷たく輝いていた。
スロスは膝を曲げ、左肩の銃痕を観察する。弾丸は貫通せず体内に留まっており、傷口からはわずかに血が滲むだけだ。次に右脇腹に目を向ける。傷は深く、床に血が滴り落ち、周囲には肉片が裂けて残っている。撃たれた瞬間の衝撃がそのまま形として残っており、血の流れ方や染まり具合から致命傷の箇所を推測できる。おでこの銃痕も観察する。
皮膚が破れ、血と組織が混ざり合い、わずかに乾きかけた赤い膜が光を反射している。スロスは血の流れ方、床に残る液体の粘度、広がり具合を細かく確認し、足元の小さな金属片を拾い上げる。銃弾の破片だ。指先に触れると冷たく、わずかに血が固まりかけている。
次に死体の傷口に注意を向けると、光を反射する小さな粒子が見えた。傷の奥に散らばるそれは粉状の結晶片で、血液とは混ざらず、わずかに青白く光を反射している。スロスはポーチから小型ナイフを取り出し、脇腹の傷を慎重に切り広げる。刃が肉を裂く音が湿った空気に溶け込み、血が新たに溢れ出す。
切開部を押し広げると、粉末状の光沢がより明瞭になる。まるで傷口の奥に埋め込まれた小さな結晶が浮かび上がるようで、血液に染まることなく独立した存在感を放っていた。スロスはナイフの刃先で粉を掬い、小瓶に落とす。結晶は硬質で、刃先にわずかな抵抗を示すが、簡単に取り出すことができた。
瓶の中で粉は互いに反発せず、散らばりながらも光を跳ね返す。スロスは角度を変えて観察し、結晶の色や光沢の変化を確認する。肩の銃痕も同様に切開し、粉を取り出す。おでこの銃痕にもわずかに結晶片が見え、銃撃による損傷箇所と結晶の分布には関連性があるように思えた。
スロスは死体全体を再度術敗し、血の濃淡、肉の裂け方、結晶の分布を分析する。死因は明らかに銃撃であり、血の量や傷の深さから致命傷箇所を特定できるが、この粉の存在は未知で、原因や性質は判断できない。
湿った空気が倉庫内に漂い、鉄骨の軋む音や遠くの波音が単調に反復する中、スロスは再び床に落ちた小さな弾丸の欠片を拾い上げ、布で拭って小袋に収める。観察は完了し、死体はそのまま倉庫の間に沈む。月光は割れた天井から差し込み、床の血溜まりと死体を冷たく照らし続ける。
スロスは瓶と弾丸をポーチに収め、背後の光景や匂いを振り返ることなく、静かに倉庫の出口へ歩み去った。鉄の床に残る血の艶と波音、湿った空気の匂いは、彼女の観察の間ずっと倉庫内に留まり続けていた。出口に達したとき、月光の差す天井と錆びついた鉄骨の影が重なり、倉庫全体が凍りついた時間のように静止して見える。
スロスは短く息を吐き、冷たく湿った夜気に顔をさらしながら、倉庫の外に一歩を踏み出す。港湾区の夜は、再び波音と潮の匂いに満たされ、鉄と血の匂いだけが倉庫の奥に残った。スロスは一瞥もせず、ただ歩き去る。背後に残るのは、死体と粉、そして月光に照らされた血の痕跡のみであった。