テラーノベル
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フィクション
🍆がモブと付き合ってます。
ただイチャイチャしてるだけ
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「……よし、これでバレてないな」
蝉時雨が降り注ぐ、7月の放課後。ぼんじゅうるは誰もいない渡り廊下で、スマホの画面をそっと閉じた。
「ぼんさん、何ニヤニヤしてるんですか? 」
背後から声をかけてきたのは、2年生のおんりー。その後ろには、同じく2年生のおらふくんとおおはらMENも続いている。
「お、おんりー!? 誰がニヤニヤしてるって? 俺はただ、今日のラッキーアイテムをチェックしてただけだよ!」
「嘘だぁ。さっきまでめっちゃ優しい顔してメッセージ打ってたやんか」
おらふくんがニヤリと笑いながら顔を覗き込んでくる。
「もしかして、ぼんさん……彼女ですか?」
MENの直球な問いに、ぼんじゅうるの心臓が跳ね上がる。
「か、彼女!? いねーよ! 俺がそんな……その、あれだよ。ただの友達だよ!」
嘘ではない。相手は「彼」なのだから。
「ふーん。まあ、受験生ですしね。ドズルさんも探してましたよ、『ぼんさん、またサボりかな?』って」
おんりーが呆れたようにそう言うと、3人は部室の方へと歩いていった。
ぼんじゅうるは大きくため息をつき、再びスマホを取り出した。画面には、ついさっき届いた「恋人」からのメッセージ。
『今日の放課後、いつもの公園で待ってる。アイス買って。』
ぼんじゅうるの口元が、また緩む。
高校3年生の夏。進路や部活で忙しいドズルたちには、絶対に言えない秘密。
「友達」という仮面を被って、放課後の街で彼と待ち合わせる。
少しの罪悪感と、それを上回るほどの高揚感。
「……急がないとな。ドズ氏に捕まる前に」
ぼんじゅうるはカバンを肩にかけ直すと、メンバーたちの待つ部室とは反対側の校門へと、小走りで向かう。
夕暮れに染まり始めた校庭。
ドズル社メンバーとの「日常」と、彼と過ごす「特別な時間」。
ぼんじゅうるの、誰にも言えない熱い夏が始まろうとしていた。
公園の入り口にあるコンビニで、ぼんじゅうるはソーダ味のアイスを二つ買った。
「……よし、これで準備万端」
校門を抜けて、少し離れた静かな公園。そこには、制服のネクタイを少し緩めた「彼」がベンチに座っていた。ぼんじゅうるの姿を見つけると、彼は小さく手を振る。
「お待たせ。ほら、アイス」
「サンキュ。ぼん、遅かったな。またドズルたちに捕まってた?」
彼がニヤリと笑いながらアイスを受け取り、その指先がほんの一瞬、ぼんじゅうるの手の甲に触れました。心臓が跳ねるのを隠すように、ぼんじゅうるは隣にドサリと座り込む。
「……まあな。アイツら、鼻が利くっていうか……。特におんりーなんて、俺の顔見ただけで『ニヤニヤしてる』とか言ってくるんだぜ?」
「あはは、図星だろ?」
二人の間に、甘い空気が流れる。
部活のこと、進路のこと、そして「今度の日曜日、どこ行く?」なんて他愛もない会話。
メンバーと一緒にいる時とは違う、少しだけ背伸びをした、でも心地よい時間。
しかし、その平穏は唐突に破られた。
「……あ、あれ? ぼんさんじゃない?」
聞き覚えのある、少し高い声。
公園の入り口の方から、おらふくんとおおはらMENが歩いてくるのが見えた。手にはサッカーボールを持っている。
「げっ!!」
ぼんじゅうるは飛び上がらんばかりに驚く。
隣には、自分と親密そうにアイスを食べる「彼」。
もしここで見つかったら、「ただの友達」で押し通せるだろうか? いや、今の二人の雰囲気は、どう見ても「ただの友達」以上に見えるはずだ。
「やべぇ……! 隠れろ、じゃなくて、えーっと!」
「ぼん、落ち着けって。逆に怪しいぞ」
彼は冷静に、でも少し楽しそうにぼんじゅうるの袖を引いた。
「……あ、ぼんさーん! やっぱり!」
おらふくんが大きく手を振りながら駆け寄ってきた。MENも後ろから不思議そうな顔で付いてくる。
「こんなところで何して……。あれ? その人は……?」
MENの視線が、隣に座る「彼」に注がれた。
ぼんじゅうるの背中に冷や汗が流れた。
「お、おう! こいつは……その、中学の時の……塾の友達! そう、受験勉強の相談してたんだよな!?」
必死に誤魔化そうとするぼんじゅうる。
しかし、おらふくんはジロジロと二人を見比べ、不敵な笑みを浮かべた。
「へぇ〜、勉強の相談……。ところで、ぼんさんのアイス、当たり棒出てますよ?」
「えっ?」
見ると、ぼんじゅうるが握りしめていたアイスの棒には、くっきりと『あたり』の文字。
「……運がいいですね、ぼんさん。『隠し事』も、それくらい上手くいくといいですけど」
おんりーほどではないにせよ、鋭い観察眼を持つMENが、ぼんじゅうるの隣に座る「彼」の制服や、二人の距離感をじっと見つめている。
「……じゃあ、俺ら向こうでサッカーしてくるんで。お邪魔しましたー!」
おらふくんは無邪気に去っていったが、MENは最後にもう一度だけ振り返り、ぼんじゅうるに向かってニヤリと片目を瞑ってみせた。
「…………生きた心地がしなかった……」
ガックリと肩を落とすぼんじゅうる。
そんな彼を見て、隣の彼は声を上げて笑い出す。
「ぼん、顔真っ赤だぞ。……でも、あいつらにはバレてないんじゃない?」
「……だといいけどさ。アイツら、意外と鋭いからなぁ……」
夕暮れがさらに濃くなり、二人の影が長く伸びていく。
秘密を共有するドキドキ感と、いつかバレてしまうかもしれない不安。
それでも、隣にいる彼のぬくもりだけは、何物にも代えがたい「夏のご褒美」だった。
「……ったく、あいつら心臓に悪いわ」
おらふくんとMENが遠ざかるのを見届け、ぼんじゅうるはベンチに深く背中を預けた。手の中の『あたり』の棒が、夕日に照らされて小さく光っている。
「あはは、ぼんのあんなに慌てた顔、初めて見たよ」
隣で「彼」が、残りのアイスを口に運びながら楽しそうに笑う。その屈託のない笑顔に、ぼんじゅうるの毒気も抜けていた。
「笑うなよ……。もしバレてドズ氏にまで知られたら、俺、部室で一生いじられるんだからな」
「いいじゃん、別に。……俺と付き合ってるの、そんなに隠したい?」
ふいにトーンを落として首を傾げる彼。少しだけ寂しそうな、試すような視線がぼんじゅうるを射抜く。
「……っ、そういうわけじゃねーよ。お前とのことは、なんていうか……」
ぼんじゅうるは言葉を探して、彼から視線を外す。
「……大事にしたいんだよ。あいつらに茶化されたくないくらいには、さ」
ぼそりと呟いた本音。
すると、隣からクスクスと、今度はさっきよりも柔らかい笑い声が聞こえてくる。
「……合格。ぼん、意外と情熱的だよね」
「……うるせーよ!」
立ち上がった彼が、ぼんじゅうるの手をぐいっと引く。
「ほら、帰るぞ。もう暗くなる」
公園を出て、街灯が灯り始めた帰り道。
人通りが少なくなったのを見計らって、彼がそっとぼんじゅうるの小指に自分の小指を絡める。
「……あ」
「誰も見てないって。……さっきの『あたり』、明日交換しに行こうよ。二人で半分こしよ」
「……おう。一個しかないのに半分こかよ。ケチだな」
軽口を叩きながらも、ぼんじゅうるは絡められた指を離そうとはしない。
繋いだ手のひらから伝わってくる、夏の夜の熱気よりも熱い体温。
高校3年生、7月。
受験の不安も、仲間への隠し事も、この瞬間だけは遠い世界の出来事のように感じられた。
「……明日も、放課後会えるか?」
ぼんじゅうるが勇気を出して聞くと、彼は繋いだ手に少しだけ力を込めて、幸せそうに頷く。
「当たり前だろ。俺も『あたり』引いた気分だし」
二人の影が、オレンジ色の街灯の下で一つに重なりながら、静かな夜の中へ溶けていった。
翌日の放課後。部室でドズルと合流しようとしていたぼんじゅうるは、廊下の角で待ち構えていたおんりーに腕を掴まれた。
「うおっ!? おんりー、びっくりさせんなよ」
「……ぼんさん。ちょっといいですか。ドズルさんには先に行っててって伝えてあるんで」
おんりーの目は笑っていない。いつも以上に鋭い目。
そのまま人気のない旧校舎の踊り場まで連れて行かれ、ぼんじゅうるは逃げ場を失う。
「……な、なんだよ。改まって。受験の相談か? 先輩として乗ってやるぞ?」
「隠さなくていいですよ。昨日、公園にいましたよね。おらふくんたちが言ってました」
ぼんじゅうるの心臓がドクン、と大きく跳ねた。
「あ、ああ……。塾の友達と会ってただけだって。MENにも言っただろ?」
「塾の友達と、指、絡めて歩くんですか?」
おんりーの落ち着いた声が、静かな廊下に響く。
ぼんじゅうるは息が止まりそうになりました。「見てたのか……?」という言葉が喉まで出かかった。
「……え、いや、それは……。なんかの見間違いだろ! 暑くてフラフラしてたんだよ俺!」
「ぼんさん。僕を誰だと思ってるんですか。……相手、男の人ですよね」
核心を突かれ、ぼんじゅうるは言葉を失い、冷や汗が止まらなくなる。
軽蔑されるだろうか。それとも、グループの空気を壊したと怒られるだろうか。
最悪の想像が頭をよぎり、ぼんじゅうるが俯いたその時。
「……別に、否定しなくていいです。怒ってるわけじゃないですから」
おんりーがふっと力を抜き、窓の外を眺めた。
「ただ、隙が多すぎ。ドズルさんや他の皆にバレたら、今のままじゃいられないでしょ。……ぼんさんが、あんなに幸せそうな顔してるの、初めて見たから」
おんりーの言葉には、トゲではなく、彼なりの気遣いがこもっている。
「おんりー……」
「僕が気づいたってことは、MENも時間の問題です。……もっと上手く隠してください。バレるなら、せめて卒業してからにしてくださいね」
そう言い残して、おんりーはスタスタと歩き出した。
でも、すれ違いざまに、ぼんじゅうるにだけ聞こえる声でこう付け加える。
「……幸せそうで、ちょっと安心しましたよ。お幸せに」
残されたぼんじゅうるは、真っ赤な顔をして立ち尽くすしかなかったのであった。
秘密を知る「協力者」ができてしまった、奇妙な夏の午後。
おんりーが「協力者(見守り役)」になってくれたことで、ぼんじゅうるは少しだけ肩の荷が下りたような、でもやっぱりドキドキするような、不思議な気持ちで部室に戻る。
そこには、何も知らないドズルが満面の笑みで待っていました。
「ぼんさん! おんりーと何話してたんですか? さあ、今日の練習始めましょう!」
「お、おう! ドズさん、気合入ってんな!」
ドズルの底抜けに明るい声を聞きながら、ぼんじゅうるはポケットの中でスマホに触れる。そこには、彼から届いた**『今日もお疲れさま。明日、学校の屋上で一口だけパン交換しようぜ』**という、なんてことない、でも宝物のようなメッセージ。
おんりーの視線を背中に感じながら、ぼんじゅうるは「バレないように、でも大切に」という決意を新たにした。
高校3年生、一生に一度の夏。
メンバーとの絆も、彼との恋も、どちらも手放したくない。
ぼんじゅうるの「二重生活」は、少しの危うさと大きな幸せを抱えたまま、まだまだ続いていくのだった。
おんりーとの一件以来、ぼんじゅうるはいつも以上に「普通」を装って過ごしていた。しかし、そんな努力も虚しく、部室で一人スマホを眺めていたぼんじゅうるの背後に、影が忍び寄る。
「ぼんさーん。最近、なんか……**『春』**が来てませんか? もう7月ですけど」
聞き覚えのある、いたずらっぽい声。おおはらMENだ。
「うおっ!? MEN! 急に後ろに立つなよ、心臓に悪いわ!」
「ははぁ、そんなに驚くなんて、やっぱり何か後ろめたいことでもあるんですか?」
MENはニヤニヤしながら、ぼんじゅうるの隣にドサッと座り込む。
「別に何もないって! ただの受験勉強の疲れだよ、疲れ!」
「へぇ……。勉強の疲れで、そんなにスマホ見てニヤけます? 昨日の公園の『塾の友達』、よっぽど話が合うんですね」
MENの言葉に、ぼんじゅうるは思わず生唾を飲み込む。おんりーにはバレたが、MENにはまだ「塾の友達」で押し通せている……はず。
「そ、そうなんだよ! あいつ、数学がめちゃくちゃ得意でさ。俺に教えてくれてるんだよ」
「ふーん。数学ねぇ……。じゃあ、ぼんさん。そのお友達、どの辺の高校の子なんです?」
「えっ……。えーっと、ほら、駅の向こうの……」
「あっちの方、男子校しかありませんよ? ぼんさん、もしかして……」
MENがグイッと顔を近づけてきます。その目は、まるですべてを見透かしているかのようだ。
「……趣味、変わりました?」
「なっ、何がだよ! 変なこと言うな!」
「いやぁ、隠さなくていいのに。おらふくんは『ぼんさんに彼女ができた!』って喜んでましたけど、僕、昨日見てたんですよね。ぼんさんがその人のことを見る目……。あれ、ただの友達に向ける目じゃないですよ」
MENは一旦言葉を切ると、今度は少しだけ声を潜めて言う。
「ドズさんには、まだ内緒にしといてあげますよ。あの人、過保護だから知ったら大変なことになりそうですし」
「……MEN、お前……」
「その代わり、今度その『お友達』に会わせてくださいね。ぼんさんをあんな顔にさせる人がどんな人か、興味あるんで」
MENはヒラヒラと手を振りながら、部室の隅で筋トレを始めたドズルの元へ歩いていった。
「ぼんさーん! 練習始めますよー!」
ドズさんの元気な声が響く。ぼんじゅうるは、おんりーに続いてMENにもバレてしまったことに頭を抱えながらも、どこか「隠し事」が共有されている安心感も感じていた。
「……ったく、どいつもこいつも鋭すぎだろ……」
ポケットの中で、彼からの新しい通知が震える。
『屋上、先に行ってる。パン、何がいい?』
ぼんじゅうるは、心配そうにこちらを見ているドズさんに「すぐ行く!」と返し、ふにゃりと笑った。
「……はぁ、もう隠し通すの無理だわ」
屋上のフェンス際、ぼんじゅうるは焼きそばパンを片手にガックリと肩を落とした。隣では、彼がメロンパンを一口齧りながら、不思議そうにこちらを見ている。
「どうしたの? そんなに深刻な顔して」
「いや……バレた。おんりーとMENに。あいつら、勘が良すぎて怖いわ」
ぼんじゅうるが白状すると、彼は声を上げて笑った。
「いいじゃん。あの二人なら、変に言いふらしたりしないでしょ?」
「それはそうなんだけどさ……。MENのやつ、『今度の休み、その友達に会わせてくださいよ』ってニヤニヤしながら言いやがって」
「へぇ、紹介してくれるんだ」
彼は少しだけ目を細めると、いたずらっぽく微笑んだ。
「……いいよ。俺も、ぼんの大事な仲間たちに挨拶しとかなきゃね。**『ぼんじゅうるは俺のもの』**だって、ちゃんと言っておかないと」
「なっ……! お前、変なこと言うなよ!? ドズさんたち、ひっくり返るぞ!」
顔を真っ赤にするぼんじゅうる。そんな彼を愛おしそうに見つめた後、彼は自分のメロンパンを差し出した。
「ほら、一口。交換しよ」
「……おう」
ぼんじゅうるが照れ隠しにメロンパンをがぶりと一口。甘い砂糖の香りが広がる。続いて、彼がぼんじゅうるの焼きそばパンを……と思いきや、彼はパンには目もくれず、ぼんじゅうるの頬を両手で包み込んだ。
「え、ちょっ……」
「パンより、こっちの方が甘そう」
次の瞬間、彼の顔が急接近し、柔らかい感触がぼんじゅうるの唇に重なった。
夏の熱い風が吹き抜け、セミの声が遠のいていくような感覚。
「ん……っ、……ふはっ、お前……! ここ、学校の屋上だぞ! 誰か来たらどうすんだよ!」
慌てて離れるぼんじゅうるに、彼は満足げにペロリと唇を舐めて言う。
「牽制の予行演習。当日、もしあいつらがぼんにベタベタしすぎたら……目の前でこれ、やっちゃうかもね?」
「やめろ!! 死ぬ! 俺が恥ずか死ぬわ!!」
必死に抗議するぼんじゅうるだが、繋がれた手から伝わる彼の体温が、嬉しいのだった。
日曜日。待ち合わせ場所のカフェには、すでにドズルを筆頭にメンバーが揃っていた。
「ぼんさーん! こっちです! いやぁ、塾のお友達に会えるなんて楽しみだなぁ」
ドズルが天真爛漫な笑顔で手を振る。その隣で、おんりーは「やれやれ」という顔をし、MENは獲物を見つけたハンターのような目でニヤリと笑っていた。
「……おう、お待たせ。こいつが、その……例の友達」
ぼんじゅうるの後ろから、一歩前に出る「彼」。
「初めまして。いつもぼんがお世話になってます」
爽やかな挨拶に、おらふくんが「うわぁ、シュッとしててかっこいい人やん!」とはしゃぐが、MENは二人の距離感を測っていた。
自己紹介もそこそこに、会話が弾む中で事件は起きた。
ドズルがいつもの調子で、ぼんじゅうるの肩をガシッと抱き寄せたのだ。
「いやぁ、ぼんさんは僕の大切な相棒ですからね! 受験勉強で無理させないでくださいよ?」
その瞬間、隣にいた「彼」の目が、スッと細まる。
「……そうですね。僕も、彼のことは大切にしたいと思ってるんで」
彼はそう言うと、ドズルの腕を優しく、でも拒絶できない強さでぼんじゅうるの肩から外す。そして、驚くメンバーたちの目の前で、ぼんじゅうるの腰を引き寄せ——。
「……あ」
ぼんじゅうるが声を出す間もなかった。
彼の顔が重なり、ぼんじゅうるの唇に、深く、甘い音が響くような牽制のキスが落とされたのだ。
「えっ……!?」
ドズルの口がポカンと開き、持っていたスプーンを落とす。
「えぇぇぇぇー!?!? ぼんさん!?」
おらふくんが椅子から転げ落ちそうになる。
「……あーあ、やっぱり」
おんりーが額を押さえて溜息をつく横で、MENだけは「最高に面白いもん見れた」と言わんばかりにスマホのシャッターを切ろうとしている。
「な、ななな……お前っ!! 何してんだよ!!」
顔が真っ赤を通り越して茹でダコ状態のぼんじゅうる。
「言っただろ? 予行演習したって。……ぼん、俺以外に触らせるの、やっぱり嫌だわ」
彼は平然とした顔で、ぼんじゅうるの手を恋人繋ぎでギュッと握り直した。
「ドズルさん。……ぼんじゅうるは、僕が責任を持って幸せにします」
カフェの喧騒が遠のくほどの衝撃。
ドズルが「……ぼんさん、これ……どういうこと!?」と叫び、こだまするのだった。
「……ちょ、ちょお待てって!! ドズさん、そんな魂抜けたみたいな顔せんといて!!」
カフェのテーブルを挟んで、ぼんじゅうるは立ち上がって必死に手を振った。
目の前では、ドズルさんが「ぼんさんが……。僕の相棒が……。受験勉強じゃなくて、恋……?」と、ぶつぶつ呟きながら灰になりかけている。
「お前も! 何サラッと『責任持って幸せにします』とか言ってんの! かっこよすぎるでしょ、恥ずかしいわ!」
隣に座る「彼」に向かって怒鳴るものの、繋がれた手は離してもらえず、むしろ指を絡められてさらに体温が上がる。
「ぼんさん、顔どころか耳まで真っ赤ですよ。アツアツなこった。」
MENが楽しそうにストローを回しながら、ニヤニヤとぼんじゅうるを観察しています。その横では、おらふくんが「ええなぁ、青春やん! でも、ぼんさんが彼女役なん?」と純粋すぎる疑問を投げかけ、ぼんじゅうるにトドメを刺す。
「役とかないわ!! ……っていうか、もう、ええよ!!」
ぼんじゅうるは吹っ切れたように、ガシガシと自分の頭をかいた。
「……そうだよ! こいつは俺の、その……大切なやつだよ! お前らに隠してたのは悪かったけど、冷やかすなら一人ずつにしてくれ! 俺の心臓が持たん!」
ヤケクソ気味の宣言。
すると、それまで黙って見ていたおんりーが、ふっと口角を上げた。
「……ま、お幸せに。ぼんさんが練習中、急にスマホ見てニヤニヤしなくなれば、僕らは何でもいいですよ」
「おんりー、お前、最後までそれ言うか……!」
結局、その後はドズルさんによる「ぼんさんの恋人・面接試験」が始まり、根掘り葉掘り聞かれる羽目になりましたが、ぼんじゅうるの表情は、どこか晴れやかだった。
帰り道。
メンバーと別れ、二人きりになった夕暮れ時。
「……あーあ。これで明日から、部室に行くのが怖いぜ」
「いいじゃん、みんなに認められたんだし。……それより、さっきのキス、足りなかった?」
「……っ、バカ! もう一回やったら、今度こそドズさんが気絶するわ!」
呆れ顔で笑うぼんじゅうる。
でも、繋いだ手は一度も離れることなく、二人は夏の夜の中をゆっくりと歩いていくだった。
コメント
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誤字りました。 尊すぎます。なんですか? 私を◯す気ですか?