テラーノベル
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柔太朗が、雨に濡れたまま陣営に戻ってきたのは、夜がすっかり明けきった頃だった。
その腕に抱かれていたのは、すでに息をしていない、仁人の亡骸だった。
舜太は、言葉を失った。
柔太朗は、震える声で、仁人の最期を語った。手紙を読み、静かに涙を流したこと。そして、誰にも告げず、一人であの裏庭のベンチに戻り、この世を去ったこと。
聞き終えた舜太は、しばらく、何も言えずにいた。
勇斗と仁人。二人の生き方を、舜太は、これまでのどんな出来事よりも、深く胸に刻んだ。
(――俺も、同じやったんかもしれへん)
赤色の国を取り戻すために、多くの部族を利用し、脅し、時には切り捨ててきた。白色の国を、婚姻という形で、事実上、自分の庇護下に組み込んだ。すべては、柔太朗のもとへ帰るため、柔太朗を守るためだと、そう自分に言い聞かせてきた。
だが、それは本当に、柔太朗のためだけだったのか。
多くの人の運命を、多くの国の形を、自分の願いのために作り変えてきた。それは、紛れもない、傲慢さだったのではないか。世界を変えてでも帰る、と誓ったあの日の言葉が、今になって、重く胸にのしかかってくる。
舜太は、初めてその事実を、まっすぐに見つめた。
柔太朗は、そんな舜太の横顔を、静かに見つめていた。
「――舜」
「柔……」
「僕が、運命の人だなんて言って、約束をせがんだから。……君を、そうさせてしまったんだよ」
柔太朗は、静かに、けれど確かな声で続けた。
「だから、これは、君だけの罪じゃない」
その言葉に、舜太は、しばらく声を出せずにいた。それから、静かに、柔太朗の手を握った。
勇斗と仁人を、二人は、深い森の奥へと弔うことにした。誰にも見つからず、誰にも邪魔されない、静かな場所を選んで。
隣り合った、小さな二つの塚。周りには名も知れぬ白い花が、ひっそりと咲いていた。
舜太は、その前でしばらく、目を閉じていた。柔太朗もまた、その隣で静かに目を閉じた。
雨上がりの木漏れ日が、二つの塚を、優しく照らしていた。
弔いを終えたあと、舜太は、ゆっくりと立ち上がった。
「――柔」
「うん?」
「ずっと、考えてたことがある」
舜太は、静かに、けれど迷いのない声で続けた。
「すべての国境を、なくす。何色の国に生まれたって、大切な人と生きていける。……そういう世界を、作る」
柔太朗は、少しの間、舜太を見つめた。それから、静かに頷いた。
「――それは、征服? それとも」
「両方や。……いや、そのどっちでもないんかもしれへん」
舜太は、静かに、遠くの空を見上げた。
「もう、誰にも、国境の向こうにいるってだけで、大切な人を奪われてほしくない。それだけは、子どもの頃から、ずっと変わらへん願いや」
柔太朗は、そっと、舜太の手を取った。
「――一緒に、行こう」
「ああ」
二人は、手を取り合ったまま、森を後にした。
柔太朗の胸元には、太陽を模した金の意匠。舜太の胸元には、銀の月。かつて交わした約束の証が、今も、二人の間で、静かに輝いていた。
運命になど、頼らない。
それでも二人は、自分たちの意志で選び取った未来を、これからも、共に歩んでいくのだった。
コメント
13件
ついに最後まで読んでしまいました…! 最高の結末を本当にありがとうございました。ユニット曲の雰囲気がそのままで、まるで映画を見ているような感覚です。。 素敵な物語を届けてくださり、本当にありがとうございました!
初めまして、るり様。 この作品を一気読みして、すっかりファンになったくまよめと申します。 コメント失礼いたします。 素晴らしい言語化と美しい日本語を操られ、歌詞の世界観をここまで見事に落とし込まれていらっしゃる作者様は他に存在しないのでは?と思いました。本当にこちらの界隈に帰って来てくださってありがとうございます! 作品を通して深く感謝いたします。 また別作品も楽しみにしておりますね☺️
コメント失礼致します🙇ここまで一気読みさせて頂きました。 曲をこんなにも美しく主さんの解釈に落とし込んでいて、天晴です… 歌詞の表現の仕方まで全てが綺麗で本当にすごい文章力だと思いました。丁寧な展開もとても読みやすかったです! 主さんのご活躍を楽しみにしています、これからも応援しています!
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#ご本人様には関係ありません
あか
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#からぴち
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