SUBの短編集

彼は死んだはずだった——少なくとも、昨日までは。

焦げたガソリンの匂いが鼻を刺し、遠くでタイヤがきしむ音がした。夜の闇に溶け込むように、彼は静かに立っていた。拳は白くなり、唇がわずかに震えている。それでも、彼は何も言わない。ただ、薄く笑っているだけだった。

「お前、いつもそんな調子か？」

隣でライターを弄ぶ男が言う。火が灯るたび、彼の鋭い瞳がぼんやりと浮かび上がる。

「それが俺のチャームポイントだろ？」

彼は乾いた声で答えたが、背中に隠した傷跡がズキリと痛んだ。

赤いバラが足元に転がる。それは、彼女の罪を思い出させた。

銃声。悲鳴。沈黙。息をのむ彼女。次の瞬間——爆発。

「また戻ってきたのね。」

暗がりの中、彼女の声が冷たく響いた。その笑顔は、最初からすべてを知っていたことを示していた。

彼は彼女を見つめたが、何も言わなかった。ただ、それだけで十分だった。