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流血表現あり
忍者だから修行の一環で体に毒耐性つけるために毎日少量の劇物飲み込んだりするんだろうか
という妄想から派生した話
おそらく左右関係なし
だらりと力無く垂れた腕に血が伝う。
ナイフの切っ先がかすっただけの傷がじくじくと痛む。
自身の所有武器が大剣だからこそ、普段料理のために包丁を扱うからこそ、これが切られただけではこうも傷まないと赤城はよく理解していた。
加えて力が入らないときた。刃に毒物でも仕込まれていただろうか。
対峙した敵は複数。うち1人がナイフを持ってこちらへと突っ走ってきた。
単調で分かりやすい、素人の動作。だからこそ油断してしまったのだと思う。
捕らえる寸前、最後の足掻きと言わんばかりにナイフをこちら目掛けて投げつけてきたのだった。
避けたもののナイフは前腕を沿うように掠め、軌道を歪めて指先の皮膚をぱっくり割いて落ちた。
想定より人数が多かったものの敵は全て制圧完了した。
その直後に傷が痛み始めた。
最初はアドレナリンの作用がなくなったから痛むのかと考えていたがどうやら違うらしいと気がつく。
毒性があるなら病院へ行ったほうが良い。
そう判断するが現場処理で人が慌ただしく行き交い、自分よりも深い傷を負った敵やヒーローが運ばれていく。
加えてここは田舎。病院への搬送にも時間がかかるだろうし自分の番が回ってくるのはもっと後だろう。
「赤城?」
そこに通りがかったのはカゲツだった。
森の入り組んだ敵の基地への突撃。
基地の場所は東だが、そういう小回りが必要な場所への応援として彼が呼ばれたのだった。
戦闘後のため衣服に乱れはあるが、目立った怪我はないらしかった。
「おつー、カゲツ」
「血出てんじゃんか、早く治療してもらえよ。救護班のテントあっちやぞ」
「僕より重い怪我の人達でいっぱいだったよ」
「もうさー。敵より先にヒーローの治療を先にしてくれよなぁ」
文句を言う彼にまぁまぁと言い宥める。
気持ちは分からないでもないけれど、僕は割と平気だから、と言って彼の方をみるとだらりとした腕をじっと見つめている。
「……なぁ、それ力入る?」
「それがさ、あんま入んないのよね。傷がちょっとじりじりして痛いし」
「いつから痛い?」
「え…ついさっきからから」
「何で切られた?」
「ナイフ。包丁よりは小振りのやつ」
「どんぐらい前に切られた?」
「えっと…20分くらい前?」
突然の質問責めに驚くも彼は至って真剣そうだから真面目に答える。
彼は一瞬、救護班のテントの方に目をやるもそのバタつき加減に息をついた。
「ちょっとこっち来て」
「えっ、ちょっ」
言うや否や怪我のない方の腕を引っ張って人気のない方とずんずん歩いて行く。