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バタン……
不思議な事だった。今まで彼女に対して苛立ちを感じたことなんて全くなかったのに。
ゆっくりと時が流れてゆく。
困惑した彼女の姿が目に浮かぶ。
如何してこうなった?
如何して怒鳴ってしまった?
麗奈「はぁ……」
大きく溜息をついた。
尽きた思考力で何かを捻り出そうとしているのを感じる。
この行為に意味などあるのだろうか?
……また。また別の世界線なら。
別の世界線なら違ったのだろうか。
繰り返す思考。最早これ以上脳を動かすのは無駄だろう。
トントンと音をわざと立てて部屋へと向かう。
今までに感じたことの無い時間の流れ方だった。
部屋に入ればやけに生暖かい布団に腰掛け、ふと目に付いた鋏を手に取る。
何度も使っているのに新品の様に綺麗だ。
大丈夫。もう此処では赤く錆びる事もないだろ。
いつもの事だと言い聞かせ、慣れた手つきで鋏を喉に突き刺す。
遠のく意識。同時に鳴り響くアラームの音。
その音はいつしか大きくなり、ハッと目を開ける。
先程まで握っていた鋏も、血にまみれたベットシーツもない。
そしてまた最初の事を思い出すのだろう。
飛び降りた後の見慣れた景色。同じような暴力。
そして何より、
という事実を受け入れられなかったこと。
繰り返していると言っても、何千回も繰り返している内に少しずつ変わってきているみたいだけどね。
……さて、問題は玲亜がどういう挙動をしているかだ。
前回と違って彼女はじっとベットに座って此方を見つめている。
また、慣れた口付きで彼女は呟く。
「……”また”、繰り返したんだね。」