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今回もとても面白かったです! 頑張ってください!
阿形side
カゴメ「私は…一人で居るのが楽ですの」
そう言って机の上の物をまとめて、カゴメちゃんは教室を出て行こうとした。
阿形「え、ちょ…どこ行くの??」
カゴメ「さっきの聞いてたでしょ?兄のとこ、とりあえずさっきのこと注意しに行きますわ」
「一人が楽」そんな言葉が引っかかって、俺は後をついて行こうとする。
カゴメ「ついて来ないで!」
結構強く言われちゃったけど、俺はなんとなく一人にしちゃいけない気がして、カゴメちゃんの手を取った。
阿形「やだ!俺もっとカゴメちゃんと話したいもん!」
カゴメ「やだって…子供じゃないんだから!」
阿形「ね、お願い!邪魔はしないからさ、ね?」
顔の前で両手を合わせて、上目遣いをしてみた。
そしたら呆れたようにため息をつきながら、カゴメちゃんは頷いた。
カゴメ「はぁ…じゃあ、話が終わるまでどこか近くにでも待ってれば?それなら、いいわよ」
阿形「うん!わかった!」
カゴメ「…そういえば、隈取くんは一緒じゃないんですの?」
荷物をまとめた重たい風呂敷を持って後をついていくと、そうやって聞いてきた。
阿形「まぁ、隈ちゃんのことだからさ!寮室で鍛錬でもしてると思うよ」
カゴメ「そ、そう…」
しばらく喋ることがなくなって気まずくなってた。
それで、カゴメちゃんのお兄さん、般若先輩って名前だっけ?
その人にツノが生えてたのを思い出して聞いてみることにした。
阿形「ねね、お兄さんって鬼だったよね?何で鬼と兄妹なの?」
カゴメ「あら、貴方本当に配慮がない人ですのね。鬼と人間が兄妹なのがおかしいんですの?」
阿形「あ…あー、そうじゃないよ!ちょっと気になったってだけで!…えぇーっと…」
やべ、失礼なこと聞いちゃったみたい!
焦ってるとカゴメちゃんが「ふふっ」って笑った。
カゴメ「いいわ、話してあげてもよくてよ」
話してくれるんだ。
でも、やっぱり辛い話みたい。
カゴメ「私の母は私を産んですぐに亡くなったわ。住んでいた村があった山も、炎を扱う化け物に燃やされて、大人達は全員、火事で死んだの」
火事…そう聞いて俺は、顔半分を覆った包帯をぐしゃりと抑える。
故郷が火の海に呑まれて、俺の家族も友達も、みんな酷い目に遭った。
カゴメ「…それで、寺子屋に一緒にいたときに兄のお母さんが…阿形くん?」
阿形「…あ、ごめん!考え事してた!ごめんね?辛い事聞いちゃって」
カゴメ「別に、謝らなくても貴方のせいじゃないわ」
「みちゅけたワンっ」
カゴメ/阿形「「えっ?」」
いきなり後ろで舌ったらずな声が聞こえて、振り返ったら真っ黒なかわいいわんこがいた。
カゴメ「…わんちゃん?」
阿形「うわー!かわいー!」
抱っこしようと思ったら、カゴメちゃんの足元に擦り寄ってきた。
カゴメ「誰かの使い魔かしら?お手紙持ってるわ」
手紙には「倶楽部が長引きそうだから、もうちょっと待っててネ」って書いてあった。
カゴメ「…」
般若先輩の使い魔だったのかな?手紙を読んだカゴメちゃんが、ちょっと不機嫌そうな顔しちゃった。
カゴメ「ふぅん、私の約束なんかより、倶楽部の方が大事なのね…」
黒犬「とどけたワンっ」
カゴメ「お手紙ありがとうわんちゃん、 おやつあげますわ」
わんこはおやつをもらって嬉しそうにくるっと回ると、ぴょんぴょん走りながら茂みの方に行っちゃった 。
阿形「…お兄さん、まだ来れないんだね?」
カゴメ「ええ、そうね…ほんっと酷い人だわ」
「はぁー」と大きなため息をついて立ち上がると、いきなり着物の袖を掴まれた。
カゴメ「行きましょう」
阿形「えっ?どこへ?」
カゴメ「決まってるでしょ、兄のがいる倶楽部の所、きっと排球倶楽部よ」
「はやく行きますわよ」と、問答無用で袖を引っ張られて、俺は運動場へ連れてかれた。