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彷徨う漆黒

彷徨う漆黒

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1-11.追跡③

2023年11月28日

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タールはマンホールの下水を走り回っていた。

「何もない」

「佐川はどこにいったんだ」

「もうすぐ1時間経つ、そろそろ戻ることも考えないとな」

タールは冷静になり、元のマンホールに戻ってきた。 

目を見開き、ケンタウロスの姿になった。

「イリは問題ないだろう、問題はグーンだな」

ぼんやりと工場を眺めていた。

そろそろ集合場所に戻ろうと思い始めた。

しかし、その足を止める出来事が起こる。

テラスの柵に黒い血が付いていたのだ。

「見つけたぞ、佐川」

4本足に力を入れ、高くジャンプした。

工場の3階をゆうに超える高さだ。

「少し張り切り過ぎたか」

テラス付近に調整し、着地した。

同時に左腕が弓となり、影でできた矢を右手で掴んだ。

割れた窓ガラス越しに狩人の目が光る。

獲物を見つめる鷹のようだ。

ドコーンと微かに音が鳴る。

タールの警戒心は更に高まり、足をジタバタさせている。

狩人はひたすら待った。

その瞬間が訪れた。

扉が開く音だ。

十字架マークの扉が開き、佐川を目視で確認した。

「やっと見つけたぞ」

右手に力がこもる。

心拍数を抑えて、リズムを取った。

あるリズムで目を細めた。

ここだ。

タールは佐川の頭に狙いを定め、矢を放った。

5分前…

佐川の右拳が光に包まれ、グローブとなった。

全体は黒で、赤の斜め線が3本入っている。

「なんだこれは」

右手を軽く突き出し、グローブを確認する。

机にあった花瓶が割れ、壁に拳の形が薄ら見える。

驚きを隠せなかった。

こんな異能の力がこの世の中にあっていいのか、警察沙汰にならないか不安を覚えた。

「こんな音を立てたんだ、タールがいれば気がつくはず」

奴は弓使い。

原理はわからないが、2本の矢をほぼ同時に飛ばしてくる。

1本目は視認でき、2本目は命中するまで視認できないと考えるべきだ。

幸い、この部屋の出口はここだけだ。

賭けになるが、奴が狙う角度は2階テラスと考える。

「それなら、真っ向勝負だな」

佐川は覚悟を決め、医療室のドアノブを掴み扉を開けた。

1本の矢が勢いよく、飛んでくるのを確認した。

「やはりきたな、タール決着を着けよう」

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