テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
仕事が長引いて帰宅が遅くなった夜。
阿部はもう寝ただろうと予想した岩本は、静かにドアを開けた。
リビングに灯りは点いていたが、案の定、阿部はいなかった。
岩本は寝室に向かう。愛しい人の寝顔を見て、ただいま、と呟くために。
寝室のドアは薄く開いていた。
その隙間から見えた光景に、岩本はドアを開けかけて固まった。
ベッドの上に阿部はいた。といっても寝ていたわけではない。座り込んでいた。
パジャマ姿だったが、上着ははだけて細い肩が露出している。そして下は履いていないようだった。黒いボクサーパンツは引き下ろされていて、本来なら隠さなければいけない部分が、完全に解放されている。
阿部は、その顔に似合わない立派な男性器を、自らの手で慰めていた。
彼が何をしているのか気づいた瞬間から、岩本の目は釘付けになった。
「ん……ッ、ふ、ひかる……」
阿部の唇から、自分の名前が甘い響きを持って転がる。よく見えないが、片方の手は胸の突起を弄っているようだった。
「っは、ん、きもちぃ……ひ……かるぅ」
阿部が自分を想いながら、自慰に耽っている。それを目の当たりにして、岩本の鼓動は高くなり、身体が熱くなるのを感じた。
(やばい……エロい、可愛い……)
口内に唾液は溜まるが、喉の奥は渇いている感じがして、岩本は浅く息を吐いた。
自分が阿部を求めているのと同じように、阿部も自分を欲してくれているのだと分かり、愛おしさで胸がいっぱいになる。
最近、ご無沙汰だったこともあり、下腹部の塊は呆気なく反応した。
「……っ、んんっ、ぁ、イ……っ……!」
見られていることに気づかないまま、阿部は身体を一瞬引き攣らせ、果てた。
岩本は静かにドアから離れ、リビングに戻った。
ふう、と一つ息を吐く。
「……帰ったよー、ただいまー」
そして寝室に向け声をかけた。
しばらくして阿部が寝室から出てきた。慌てて身支度したせいか、上着のボタンを掛け違えている。
「あ……ひかる、おかえり」
余韻を残したふわふわした口調で、彼は言った。その目は少し潤んで、熱を帯びている。
「ご飯食べる?あっためるよ」
阿部は少し掠れた声で言うと、キッチンに行こうとした。が、その阿部の手首を掴んで、岩本は引き留める。
「……掛け違えてる」
指摘すると阿部は、あ、と呟いて恥ずかしそうにボタンに手をかけた。
俯く阿部の頬は上気していて色っぽい。ボタンを直そうとする指先が微かに震えていた。
焦っているのか、うまくボタンが掛からない。
「っ……後で、直す」
阿部は小さく呟いて、諦めた。そして再びキッチンへ向かう。
鍋に入ったシチューを温めようと、コンロのスイッチに手を伸ばす。が、その手を制すように、岩本は阿部を背後から抱きすくめた。
「ひ、かる……?ご飯……」
「今は飯より阿部がいい」
戸惑う阿部の耳元で囁く。上着の裾から脇腹に手を差し入れると、阿部は身体をビクッと震わせた。
「ちょっ、だめ」
慌てて手を止めようとする。
「ひかる……っ、なん、なんでそんな、勃っ……てんの」
尻に押し当てられたものに困惑気味に阿部は言った。
「……あんなの見せられて、勃たないわけない」
「えっ?」
耳に唇を寄せて、岩本は答える。
想定外の返答に、阿部の岩本の手を押さえる力が緩んだ。その一瞬の隙に、岩本は下着の中に手を滑らせる。
「あっ、待っ……」
熱を帯びた塊に触れ、軽く撫でた。
「んっ、や、だめ、っあ、あぁあ…ッ」
すると阿部は、急に身体をこわばらせたかと思うと、ビクビクと痙攣しながら下着の中に熱を吐き出した。
「っ、は、ぅ」
「え?イッたの?」
脱力する阿部を抱きしめたまま、岩本は思わず尋ねる。いくらさっきまでの余韻があるとはいえ、ちょっと触れたくらいで達してしまうとは思わなかった。
「あ、ん、いま……っ、だめ、」
床に崩れ落ちそうになりながら、阿部は岩本から離れようと、弱々しくもがく。
岩本はふと思い当たり、阿部を抱き上げた。抱き上げられただけで、阿部は甘い吐息を漏らしている。
ソファの上に阿部をうつ伏せに下ろす。ぐいと腰を引き上げると、下着ごとズボンを下げた。
「んあ……やだ……、見ない、で……」
耳まで赤くなって、阿部が弱々しく言う。岩本が予想した通り、阿部の後孔には絶え間なく振動する小さな機械が挿入されていた。
358
M_Yuzu
752
おそらく急に岩本の声がして、抜きそびれたのだろう。
岩本は、体内で阿部を犯し続けているそれを、ゆっくり引っ張って取り出した。抜かれる感触に、阿部が甘い声を漏らす。
機械が抜けた後孔は、準備万端整っていて、物欲しそうにひくついている。
「ひかるぅ……挿れて……」
クッションにしがみつきながら、肩越しに岩本を振り返り、阿部が甘く懇願した。
「っ言われなくても」
岩本は呟いて、ベルトを緩める。熱く猛った質量を後孔にあてがうと、ゆっくりと奥へと押し込んだ。
阿部が深く息を吐く。
彼の中は熱く、岩本を締め付けてきた。まるで逃がさないとでもいうかのように。
「締めつけ、やば」
腰を掴んで奥へと打ち付ける。
「ひぅッ、あ……! んぁ、ひか、る……っ!」
阿部はクッションに顔を埋めながら、背中を大きく反らせた。岩本が突くたびに、狭く熱い肉壁が吸い付くように締め付けてくる。機械の振動によって感触が鋭敏になりきっていた内部は、岩本の硬く太い質量を受け入れるたび、歓喜するように震えていた。
「っ、阿部……まじでやばい……っ」
岩本は荒い息を吐き出しながら、阿部の細い腰を掴む指に力を込める。一突きごとに深く奥を穿つと、阿部の口から甘い悲鳴が溢れ出た。
「あ、っく……そこっ、だめ……っ、大き、あぁッ!」
「ダメじゃねぇだろ……こんなにしがみついてきてさ」
岩本は阿部の腰を少し引き上げ、さらに角度をつけて奥の甘い斑点を押し潰した。
「ッ~~~あぐッ!?」
阿部の体が大きく跳ね上がる。つま先までぴんと緊張し、先ほど吐き出したばかりの男茎が、再び硬く立ち上がり始めていた。
「また硬くなってんじゃん……そんなに俺のこと欲しかったの?」
「っ……ひかる、が、欲しかったのぉ……、んっ、すご……奥、まで、き、て……っぁあ!」
岩本は腰のストロークを速めた。パン、パン、と肌と肌が激しくぶつかり合う淫らな音が部屋に響き渡る。
「んぅ……っ、すきっ、ひかる、だいすきぃ……ッ」
「ん……俺も阿部が好き、だよっ」
荒い呼吸の中で、岩本はそう告げる。クッションを掻き抱く阿部の手に手を重ねた。
岩本は身を乗り出し、阿部の汗ばんだ背中に唇を寄せた。肩から背筋にかけて幾重にもキスを落とし、はだけたままの上着を完全に脱がし切る。露わになった細い背中に、己の胸を押し付けるように抱きすくめた。
繋がったまま阿部の体を横向きに抱き起こし、片脚を持ち上げてさらに深く根元まで突き刺す。
「ぅあ゛っ!?は……っ、く、あ、だめ、またイク、イっちゃうぅ……ッ」
「いいよ…何度でもイけ。俺で…イけ」
耳元で囁かれる熱い言葉と、容赦なく奥を打ち据える衝撃。阿部は首を後ろに反らし、岩本の首筋に必死でしがみついた。
「ひかる……ッ! 一緒に、いっしょに……きて……っ!」
「あぁ……一緒にいくよ……亮平……っ!」
岩本が激しく腰を突き上げ、最も深い場所を強く押し潰した瞬間、阿部の体が激しく引き攣った。
「―――ッ!!」
声にならない叫びとともに、阿部は空中に向けて熱い精液を吹き散らした。その直後、体内が狂ったように岩本を強く締め付ける。
「……っ!!」
耐えきれなくなった岩本も、阿部の奥深くへ勢いよく己の熱を吐き出した。ドクドクと注ぎ込まれる感覚に、阿部は失神しそうなほどの快楽の波に呑まれ、小さく体を震わせ続けた。
静寂が戻った部屋で、二人の荒い息遣いだけが重なり合っている。
岩本はゆっくりと身体を離すと、脱力しきった阿部を優しく抱き上げ、胸に抱き寄せた。
阿部は、涙と汗で濡れた顔を岩本の胸に埋める。
「風呂行くか」
そっと阿部の髪を撫でて岩本が言うと、阿部は小さく頷いた。
身体をシャワーで流されている間、阿部は無言だった。
冷静になると色々恥ずかしい。
「ねえ、阿部」
シャワーを止めて、岩本が切り出した。
「俺の名前、いっぱい呼んでくれてたね」
「……忘れて」
阿部はぶっきらぼうに返す。
「なんで。可愛かったよ」
背後から阿部を抱きしめる岩本の言葉に、ただ赤面するしかなかった。
「俺が欲しくなっちゃったんでしょ?」
どこか岩本は嬉しそうだ。阿部はくるりと岩本の腕の中で向きを変え、向かい合い、両手で彼の頬を挟んだ。
「ひかるが、ほ……欲しかったのは、事実だけどさ」
ちょっと不貞腐れたように、岩本を睨みながら言う。
「それは……性欲の話だけじゃないからな」
阿部はぽつりと言った。
「感情の話だから……」
岩本は顔を挟まれたまま、阿部を見つめ返す。
「……ピンときてないだろ」
その岩本の表情に阿部は呆れたように言った。
「だから!その……性欲が処理できればよかったわけじゃなくて、ひかると……したいって『気持ち』が、溜まって、たの…」
だんだんと声は小さくなる。
そう。ただ性欲が溜まっていただけじゃない。
岩本に触れたくて。触れて欲しくて。抱きしめてほしかったし、キスもしたかった。
もっと言えば、くだらない話をしながら隣に座っていたかったし、同じベッドで抱き合って眠りたかった。
その全部が積もり積もって、どうしようもなくなっただけなのだ。
「ひかるじゃなきゃ、解消できないんだから…」
自分で自分を慰めて、溜まった欲を吐き出しても、感情は満たされない。ただの欲求不満ではない、愛情を求める気持ちがあった。
「ごめんな。最近ちょっと構えなかったもんな」
岩本は穏やかに言って、阿部を抱きすくめた。裸の肌が触れ合う。確かな存在感に阿部は幸福を強く感じた。
「仕事だから……仕方ない」
「もっとわがまま言っていいんだよ」
呟く阿部に、岩本は言う。
「阿部は、我慢しすぎ」
言われて阿部は、気恥ずかしそうに岩本の肩に額をつけた。
「お前さ、俺に前言ったじゃん。気を遣わなくていいって。それ、阿部もだから」
岩本は阿部を抱き上げ、湯船にそのまま身体を沈めた。
「寂しくなったら言ってよ。抱き合いたい、キスしたい、セックスしたいって、遠慮しないで」
「……遠慮しなくなったら、俺、すごく欲張るよ」
岩本の耳元で阿部は小さく言う。
「いいよ。そういう阿部、見たい」
阿部の背中に湯をかけてやりながら、岩本は穏やかに言った。
この人は、自分のどんな姿でも赦して愛してくれるのだろう、と阿部は思った。そんな相手がいてくれて幸せだ、とも。
「ありがと、ひかる」
少し微笑んで彼は言う。心に温かいものが流れ込んだ。
「……さて。上がったら、シチュー食べようか」
しばしの沈黙の後、明るい調子で岩本が言った。
「ん。食べよう」
答えて阿部は、岩本を改めて見つめる。
そっと重ねた唇の温かさ。
愛おしいその温度が、互いの心を満たしていった。
コメント
7件

愛おしい…💛💚😇