季節はすっかり冬になり、肌寒い日々となっている。
こんな日には、家で寝ていたいものだが、生憎の学校
である。俺の名は仁藤賢清。両親は、一年前に他界し
今は、一人で暮らしている。
「行ってきます。父さん。母さん。」
仏壇に手を合わせて、いつもこうやって行ってきますと、言うのが日課である。
私立海龍高校に入学したのは、父がこの高校の、卒業生だったからである。奨学金がでるため、俺はこの高校を選んだ。受験勉強をしたくもなかったし、家からも近いからという、単純な理由だ。
部活には入っていない。何かやりたいことがあるわけでもないから。
俺は何か小さい時、習い事をしてたよな?なんだったっけ?まぁいいか。
支度を終わらせて学校に向かう。
登校中、絶対にありえないことが起きた。
俺の目の前に女子生徒が立っているではないか。
しかも、俺の行く先を阻むように。
無視して通り過ぎようとすると、
女生徒「ねぇ?仁藤くんだよね!?」
声をかけられた‥‥とりあえず無視っと。
女生徒「無視はないでしょー笑笑。」
こうなったらもう話すしかないではないか。
賢清「はい?俺に何か?」
女生徒「うん!とても大事な話。」
なんだろう。今から俺は、嘘告白でもされるのか?
とはいえ、大した話しではないだろう。一応聞くだけ聞いてスルーしよ。
女生徒「あなたをこれからバスケ部に入部させます!!」
???
この、アホ毛の立っている女生徒は俺を今バスケ部に入部させようとしてるのか?まてまて、これは何かの間違いだろう。
女生徒「言っておくけど意地でも入れるから。」
賢清「急に話を進めるな。何で俺がバスケ部に入らないと行けない?他にもいるだろう?何故俺なんだ。」
何の取り柄もなくふしだらに過ごしてたこの俺に
運動量多めで、なおかつキラキラしてるバスケ部に。
俺みたいな陰キャが入るような部でもない。
女子生徒「私あなたの父さんを知ってるわ」
その一言で、背筋が凍った。俺の父さんを知る人なんて、そういないはずだ。知っていても父さんの知り合いのみ。どういうことだ?思わず言い返す。
賢清「俺の父の何をしってるんだ?」
女生徒「青龍高校バスケ部10代目主将 仁藤恒河。(にどうこうが)名プレイヤーだった。青龍高校バスケ部を全国に導いた。しかし、不慮の事故で‥‥」
賢清「やめろ!それ以上言うな。」
女生徒「ごめんなさい。つい‥‥。」
ここまで知っているとは。こいつ何者だ?親戚には、
こんな顔のやつを見たことがない。
何者だ?
賢清「どうして俺をバスケ部に入れたがる?」
女子生徒「あなたの力が必要なの。見たところ部活には入ってないみたいだから、私がもう入部届代わりに書いてだしてあるわ。」
おいおい冗談だろ。急すぎる。
賢清「俺はバスケなんてやったことないぞ?」
女生徒「大丈夫。忘れた感覚なんてすぐ思い出すわ。
それに、父さんのこともっと知りたいでしょ?」
‥‥やるしかないのか‥ここまで言われたらもう、引き下がれない。
賢清「わかった。入るよ。たしかにこのままだと、
体力落ちる一方だし。何もしないわけにも行かない。」
女子生徒「ほんとは、父親のこと知りたいだけなんでしょ?笑笑。」
女の勘は鋭い。
女子生徒「まだ、私の名前言ってないよね?名前は
柏原恋歌。(かしわばら れんか)変な名前でしょ?笑笑。」
賢清「いや、覚えやすい名だ。」
こうして、俺は海龍高校バスケ部に所属することになる。この出会いがなければ今の自分は無いと思う。
本当に感謝している。
この物語は、俗に言う青春と、記憶巡りの話。
俺は、人に話すのは苦手だが、飽きられないように
努力するよ。