咲は自室に戻って机に向かっていた。
けれど、ページの文字を追っても頭に入ってこない。
(……お兄ちゃんと悠真さん、何話してるんだろう)
壁越しに聞こえる声ははっきりとは分からない。
でも、ときおり混じる悠真の低い声が耳に届くたび、胸がざわめいた。
(私のこと……話してたり、するのかな)
そんなはずないと分かっていても、心臓の鼓動が早まっていく。
思わず教科書を閉じ、机に突っ伏した。
「……会えたばっかりなのに、なんでこんなに気になるんだろ」
小さくこぼした声は、誰にも届かず、静かな部屋に沈んでいった。
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