※桃さんに恋人居ます
公園のベンチに腰を下ろす。
さっきまでは気にならなかった冷たい風が、全身に吹き付ける。
イルミネーションだって、今は俺を嘲笑ってるようにしか見えない。
今日はクリスマスだってのに、俺は恋人にデートをドタキャンされた。
最悪だ。笑うしかない。
それなのに、まだ来るかもしれないって思ってる自分がいる。なんと惨め。
「プレゼント、どうしよ……」
ため息を吐いても、息は白くならなかった。
用意したプレゼントだって渡す相手がいなければ意味がない。
今頃、恋人は他の誰かとクリスマスを共にしているだろう。
俺の恋人は昔からそういうとこがある。所謂、浮気性。
そんな恋人のことを嫌いになれない自分に嫌気が差す。
スマホの画面を開けば、23時30分ちょい前。
待ち合わせ時間から30分。
明日も平日なわけだし、そろそろ帰ろうかと思った頃。
不意に、首に冷たい感触。
「ひッ……!?」
驚きと少しの期待を混ぜて振り向くと、そこに居たのは、__まろ。
「……こーゆーのは相場缶コーヒー何じゃないですか。」
「この辺自販機ないんやからしゃーないやん。ないこたんの首あったか〜」
「俺の首で暖を取るな」
俺の期待を返せ、とばかりにまろを睨む。
別にまろは何も悪くないんだけど。
「こんなとこで何してるんですか、非リア社畜さん」
「言い方刺々しくない?w」
「残業終わって、折角のクリスマスやしイルミネーションでも見て帰るかー、と思って立ち寄ったら傷心中の幼馴染がいたもんで。」
「そういうリア充さんは何してるん?」
「……別に、恋人待ってるだけだし。」
「ほんまは?」
まろの問いかけに、何も言うことができず、俯く。
「もう別れたら?どうせドタキャンされたんやろ?」
ふと、まろの手が頬に触れる。
耳まで冷え切ってしまったのか、冷たいはずの手が暖かく感じた。
「……っ、もう、俺が飽きられてるってのは分かってんだよ。でも、まだ好きで…… どうしようもないんだよ、俺。」
吐き捨てるように言えば、目元が熱くなった。
涙は出なかった。
きっとどこかで自分に呆れてるから。
「じゃあ、今、俺がないこのこと好きって言ったらどうする?」
「……っ、は」
「なぁ、ないこ。好きやで。十何年も前から。今の恋人のことなんて忘れさせたるから。」
付き合って、と言わないあたり、まろらしいな、と思った。
浮気したっていいじゃん。あいつだってしてるんだし。
「俺は本気やで」
「……じゃあさ、俺のこと抱いてよ。」
突然の発言に、まろが目を見開く。
「本気なら、証明してよ。」
抱いて、本気度伝えてよ。
幸いなことに恋人とのデートのためにホテルの予約は取れている。
「……ないこがええなら、ええで、」
「いいから誘ってんだよ。じゃ、行こ?」
まろの腕を引っ張り、歩を進める。
冷えていたのか、つま先が少し痛いが、行為をすれば温まるのだから気にしない。
「まろ、メリークリスマス。」
「おう、メリークリスマス、ないこ。」
冷えた心も体も、君の愛で温めて。
俺の寂しさを埋めてよ。
スマホの画面を見れば、表示は0時ぴったりを指した。
※ハピエンかバドエンかはご想像にお任せします
コメント
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作者さんの作るお話最高です✨ フォロー失礼します!!