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薬が効いたおかげで久しぶりにゆっくり眠れた気がする。

まだ少しだるい身体を起こすとベッドの隣、床の上毛布に包まって眠っていた先生がいた。


氷枕がまだ冷たい···夜中もきっと何度も俺のことを看病してくれてたんだろう。


「ありがとう···。それはそうと起こしたほうがいいのか···?先生、起きて···?」


「···あ、おはよ、熱下がったかな?」


おでこに冷たい手が優しく触れて先生は無さそう、と笑ったから俺もつられて気付けば笑っていて···やっぱり笑うと可愛いよ、と俺の頭を撫でたけど今日はそれを素直に嬉しいとそう思った。



「時間、へーき?」


「うわっ、ほんとだ···うーん、なんかもう休んじゃいたい」


「先生、だめでしょ」


「だって若井くんのこと心配だしぃ」



子供みたいにやだなぁ、なんて言っているその姿を見てスマホを操作すると、先生のスマホが鳴る。



「あれ···誰だろ、もしもーし?」


『心配なら電話すればいいだろ、だから早く行きなよ』


「えっ?!若井くん?嬉しい、電話番号持っててくれたんだ」


「うるさい···早く、遅刻するから」


「わかったよ···じゃ、何かあったら連絡して?欲しいものとかもね、あとちゃんと寝てること!じゃあ行ってきます」


「はいはい···いってらっしゃい」


あいつを見送るとパタン、ドアがしまった。 何年ぶりだろうか、誰かのいってきますを聞いていってらっしゃいと送り出したのは···それってこんなに嬉しいものなんだ。


元貴の言う通りかもしれない。

責任感があって愛情深い。

久しぶりに人を信用できそうな、そんな気分になった。




「···はよ、今日は寝てないの」


「おはよう若井くん!元気になって良かったねぇ」



にこにこと学校に来た俺に近づいてくる。


「毎日、朝も夜も電話してるんだから知ってるだろ···」



あれから朝と夜、毎日しつこく電話が来て困った。電話に1回出られなかった時はすぐに家に来たし。どれだけ心配されてるんだろう···。


「顔見れて良かった。さぁ、今日も頑張ろうねぇ」


けどのんびりと幸せそうにそういうあいつを憎めない。

ほんとに、ヘンな奴だ。


そんな風に俺の夏休みは終わって、あっと言う間に新学期を迎えて、元貴と教室へ向かっていると



「若井くん、おはよう〜!今日からまた学校で会えるね」


「···毎晩毎晩電話してくるくせによく言うよ!特に用事もないくせに!」


「いいじゃない、楽しいんだから〜!」


これは止める気ないな···。

じゃあまたねぇ、って手をひらひら振ってあいつは職員室へ消えていった。


「ふぅん、えらく仲良くなったんだねぇ、毎晩電話してるのぉ?」


にやにやと元貴が隣で笑う。

あいつが風邪を引いた時に来てくれたことを元貴には話をしてある、けどその時からやけにあいつの話をすると元貴がからかってくるのには困った。


「たぶん、夜俺がまたフラフラしてないか確認してるんだよ···それだけ」


「へぇ、ふぅん、いいねぇ、仲良し 」



うるさいよ、と元貴と教室に入る。


そう、あいつはただ生徒が非行に走らないようトラブルに巻き込まれないようにしているだけ···それだけだ。

でも電話がかかってくるかもと思うと家にいようかなと思えるから不思議だった。まぁ、また家に来られても困るし···他愛もない話も、なんだか悪くないし。



そんな短い電話をするのが日課になったある夜、その日は珍しくかかって来なかった。忙しかったのか···?そんな日もあるかと深く考えずに眠った俺は翌朝その理由を知ることとなる。



「おはよう、昨日大変だったんじゃない?若井の家から近かったから。消防車も救急車もかなり走ってたし」


「おはよう元貴···ってなんの話?」


「あんなに〇〇マンション火災で燃えて···なかなか火が止まらなくてニュースにもなってけど···気づかなかったの?ほぼ全焼だって···」



元貴が信じられない、と言った顔で俺を見た。けどもっと信じられないのは俺だった。


「〇〇マンション?!ほんとに?!」


「本当だよ、ほら」


ネットニュースでそのマンションの写真が出てきた。火が消し止められたあとの悲しいくらい跡形のない写真も。


「ごめん、先に行ってて!」


それはあいつが住んでたマンションで。 だから昨日電話がなかったんだ、と思うと嫌な汗が流れた。

あいつは無事だろうか?勢いよく職員室のドアを開けると一斉に視線を感じた。


「藤澤先生は?!いませんか?」


「いるよ、ここに。どうしたの珍しい」



後ろからあいつの声がして振り返る。

そこには昨日と変わらない元気そうな先生がいた。


「······せんせい···」


「どこか痛い?ほらこっちおいで···失礼しました、保険室に連れていきますね」


そういうと手を引いて人けのないところへ連れていかれる。


「どうしたの、そんな顔して···」


「昨日···マンション、火事にあったって聞いて···」


「あぁ···。それで来てくれたんだね···うん、そう···怪我とかはしてないからね、ありがとね」


本当だったんだ。

あんなに燃えて、無事だってわかって少し安心したけど荷物とかは?


「貴重品は持ち出せたし元々そんなに荷物はなかったけどまぁ、仕方ないね···とりあえず昨日はホテルに泊まったよ、ごめんねそれで電話出来なくて」


そんな大変な状況なのに俺との電話なんてどうでもいいことに謝って、いつも通りにこにこして仕事して。

なんで···なんでそんなに普通なんだよ。


「今夜はどうするの?明日からは?新しい家とか泊めてくれる人とか」


「まぁしばらくホテル暮らしかなぁ···身内もいないし、地元は遠いし、友達も近くにはいないし···今はこんな状況だからありがたいことに空いてる教室に荷物置かせて貰えてるよ、すぐに部屋も見つからないしね」


「分かった、今日仕事終わったら電話して。どこにも行くな!学校から出る前に俺に電話して!約束だから!」



戸惑うあいつを置いて俺は教室に戻っ授業を受ける。けど頭の中ではずっとあいつのことと、決めたことを考えていた。


決めた。


新しい家が見つかるまで、落ち着くまで、別にいつまでだって構わないけど。


先生を家に連れ込む。

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コメント

11

ユーザー

めっちゃ不謹慎だけど、火事になってよかった🧯😅 いよいよ距離が縮まって続きが楽しみです♪

ユーザー

家に連れ込むですと!?急展開すぎるわ。でも考えるより行動派な若井さんもいい🩷二人の距離がより一層に近づく予感♪いやー⋯これからもっと楽しみだな😊

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