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#コメディ時々暗闇
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『ルミナス異変調査報告書:事案コード 0098』「――おい。冗談だろ、ミレイ」
巨大なモニターが置かれた薄暗い部屋で、一人の男が低く掠れた声を漏らした。
画面に映し出されているのは、公園の防犯カメラが捉えた一分の映像。
そこには、ルミナス庁の魔道科学部門が送り込んだ中級侵攻種――ビルを一撃で粉砕する質量を持った巨獣が、何者かに一瞬で叩き潰される光景が記録されていた。
「冗談に見えるか? 迅(ジン)」
黒い巫女服を纏った少女、ミレイは冷ややかな瞳で画面を見つめたまま答える。
「侵攻種の突撃速度と質量のすべてが、直撃の瞬間に『そっくりそのまま反転』した。怪異の腕がへし折れたんじゃない。自分自身の放ったエネルギーの巨圧に耐えかねて、内側から自滅したのよ」
「……重力偏位か。それも、完璧なカウンター型のな」
黒いコートの男、黒江迅は無精髭を撫でながら苦々しく煙草の煙を吐き捨てた。
「ふざけた真似をしやがる。ルミナス庁の連中が新しく投入した『魔法少女』か何かか? だとしたら笑えない冗談だぞ。あいつらの使う光魔法(ルミナス)の華やかさとは正反対だ。重力なんてドロドロしたエグい魔力を、あそこまで力技で制御しやがって」
「いいえ。ルミナス庁の正規枠ではないわ」
ミレイは淡々とタブレットを操作し、静止画を拡大する。
画面に浮かび上がったのは――白銀やピンクの可憐な衣装を着た少女ではない。
流線型の漆黒の装甲を纏い、鈍く輝く複眼バイザーで巨獣を見下ろす、異形のヒーローの姿。
「識別ネーム【魔道士カブト】。……記録によれば、ルミナス庁の監査官・霧島ユイもまだ接触できていないイレギュラー。そして何より――」
ミレイは言葉を切り、画面の「胸部装甲」の部分をズームした。
「……この魔力のベクトル。覚えているでしょう? 迅。あなたたちがかつて『軍事用』として開発し、破棄したはずの甲殻系魔法触媒――カブーの魔力波形よ」
「なに……!? あの出来損ないの失敗作が、まだ動いてやがるのか!?」
迅の目が鋭く光る。
「ええ。そして、その触媒に適合してしまった『適合者』がいる。……信じられないことに、その男の魔力特性は『異常なほどの軽さ(憧れ)』と『物理的な絶望の重さ(重力)』が支離滅裂に同居しているわ。……願いが軽いからこそ、重力という莫大な質量を反射の媒体として扱える……」
「願いが……軽いだと?」
「そう。まるで『可愛い魔法少女になりたい』とでも夢見ている子供のように、根拠のない無邪気で軽い妄想。それが、あの悪夢のような重力反発(カウンター)を生み出している」
暗闇の奥、静かに座していた男――虚重の魔王グラヴィアが、ゆっくりと首を動かした。
その仮面の奥から、静寂を切り裂くような声が響く。
「……光の魔法少女(白峰ほのか)の『重い使命』とは真逆の存在か。面白くもない」
「魔王様……」
「重力とは、希望を地に引きずり落とし、現実の重さで圧殺する力だ。それを……ただの妄想の軽さで弄ぶ者がいるとはな」
グラヴィアの周囲の空間が、バリバリと黒い歪みを帯びて軋んだ。
「ミレイ。その【魔道士カブト】なる歪みを注視しろ。……軽い願いが、本物の絶望(重力)にどこまで耐えられるか、試してやろう」
「御意に」
ミレイは深々と頭を下げながら、モニターに映る黒いヒーローの姿を冷酷に見つめた。
(狭間太一……。あなたが夢見る『可憐な世界』が、どれほど残酷な重さの上に成り立っているか……じっくり教えてあげるわ)
コメント
1件
うわ、これめっちゃ面白い……! 重力反転カウンターって発想、渋くてカッコよすぎるわ。白峰ほのかの「重い使命」と対極の「軽い願い」って対比がもう刺さりまくり。装甲のデザインも漆黒×複眼バイザーって異形ヒーロー感あって好みだし、続きが気になりすぎる🔥