照「由衣!」
少し慌てながら、私の名前を呼ぶ彼
腕を引かれて、壁と彼とで挟まれる。
左右には彼の腕があって
いつのまにか痴漢とも距離ができていた
照「大丈夫?って、大丈夫なわけないよな。ごめん。」
と片手を私の頭に乗せる
照「怖いかもしんないけど、少しの間だけ我慢して。」
そう言って彼は私を囲うように私の前に立って、
目線を合わせないように、下を向いていてくれる。
こういうところが本当に優しいんだ
正直、怖かった
また、私は変なことされるの?って、
そんなことを思った
まだ、消えない不安
目の前にいる彼の服を少しだけ、掴むと
彼はバッと顔を上げた
「あ、ごめ…」
私は急いで掴んでしまっていた手を離そうとすると、
その手は彼の手に重ねられて、止められる。
照「いいよ、掴んでて…由衣、ごめん。まじで。」
照「一緒にいたのに、すぐ助けらんなかった…ごめん」
彼は弱々しく何度もごめんと、
頭を私の肩に置いて言う
「だ、大丈夫だよ。助けてくれたし。ありがとう。」
照「何言ってんの。こんなに震えてるのに、怖かったはずなのに、ごめん。」
そのあとはお互い何も話さなくて、
静かだった
電車が止まる度、照くんが私をしっかりと支えてくれて、ずっと守ってくれた。