テラーノベル
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セミが煩い程に元気よく鳴く夏休み。
一日目はずっとベッドでゴロゴロと自堕落で、あまりいいとは言えない日だった。
夏休みは毎年このような日が続く。
今年こそはしっかりとやることをして…とも毎年思う。
どこまで行っても私は私。
変わらないのだ。
友達とも遊べない、遊ばない。
退屈でただぼーっと日々を過ごす。
これほど勿体ない時間の使い方は無いと思う程に。
夏休み前までは早く天国という名の夏休みが来てくれないかな。
とウキウキしていたのだが…来てみれば友達とも会えずに、自堕落に退屈な毎日を過ごす。
結月「何か面白いことでもないんかねぇ。」
そう呟きながら天井を仰ぐ。
何か起きないか。
そう毎日のように思うが、中々そのようなことは無いようで。
「結月〜、お使いお願いしても良い〜?」
一階からお母さんの声が響く。
“お願いしても良い?”これほど嫌いな言葉は無い。断れば後が面倒くさい。
仕方ない…。と足音を立て、階段を下りると、財布と買い物バッグを持ち、早速お使いを…と玄関を出る。
いざ出発!元気よく扉を開け、セミが鳴く地獄へ足を突っ込む。
結月「暑…。んでこんな暑いんだよ、」
そう、暑かったのだ。
ドロドロとアイスのように溶けてしまわないかと疑うほどに。
実際にそのようなことは起こらないと分かっていながらも、そうなる想像ができてしまう。
早く済ませよう。と早足で近所のスーパーへ向かう。
そんな中、薄暗い路地裏が目に入った。
早く行かなきゃと思うものの、何故か目が離せない。
そして、いつの間にか吸い込まれるようにして路地裏に入っていった。
結月「涼しい…。あんな暑かったのに。」
路地裏は涼しい風が通り、気持ちよかった。
お使いを頼まれていたのにも関わらず、フラフラと何かに誘われるようにして路地裏を歩いていく。
歩いているうちに気付いた。
止まれない。_
自分の意思で足を止まらせられない。
ずっと何処を歩いているのかも分からないまま、歩き続ける。
もっと早くに気づくべきだった。
いや、気付けたはずだったのに…。
怖い、恐ろしい。このまま止まれなかったら…と不安が募る。
だんだんと足も疲れてき、感覚が無くなる。
自分の意思で”止まれない”と言うだけで好きなところには行けるようだ。
だが、どれだけ歩いてもこの路地裏から出られることは無かった。
まるで誰かに弄ばれている感覚。
徐々に恐ろしいや怖いなどの感情よりも苛立ちが勝ってきた。
なんで私がこんなバカみたいに暑い外を蟻みたく歩かないといけないんだ。
そんな思いが時が経つほどに強くなる。
空が狐色に染まっていき、夕暮れ時というのを知らせてくれる。
その頃には疲労で何もかもどうでもよくなっていた。
バタンっと勢いよく倒れる。そして、倒れると同時に足が地獄から解放される。やっと動かなくなった、望みが叶った。
嬉しいという気持ちも無く、ただただ意識が飛んでいく。
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