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さすがに、おかしい。 そう思ったのは三日目の朝だった。
会社のロッカーを開けた瞬間、
見覚えのない栄養ドリンクが入っていた。
『最近疲れてるでしょ』
付箋の文字を見た瞬間、
心臓が嫌な音を立てる。
振り返ると、
少し離れた場所であいつがこっちを見ていた。
目が合うと、
いつも通り優しく微笑む。
——だめだ。
逃げなきゃ。
その日の昼、
俺はわざと別の同僚と外に食べに出た。
いつもなら社内で済ませるのに、
今日は外。
あいつに見られない場所へ。
少しだけ安心して店を出た瞬間。
「楽しそうだったね」
背後から声がした。
足が止まる。
「……なんでここに」
「近くに来たから」
嘘だ。
ここ、会社から徒歩十五分ある。
心臓がうるさい。
「最近、避けてるよね」
静かな声だった。
怒ってもない。
責めてもない。
ただ事実を確認するみたいに言う。
「別に……そんなこと」
言い訳が続かない。
あいつは一歩近づいて、
低い声で言った。
「君が離れようとするの、怖い」
胸が締めつけられる。
「僕、何かした?」
そう聞かれて、
言葉が出なかった。
怖い。
でも。
傷ついた顔をされると、
責められてる気がしてしまう。
「……少し距離置きたいだけ」
やっと絞り出した言葉に、
あいつは一瞬黙った。
それから、
静かに笑った。
「そっか」
その笑顔が、
なぜか余計に怖かった。
「でもね」
手首をそっと掴まれる。
力は強くないのに、
逃げられない。
「距離なんて、
君が思ってるほど簡単に作れないよ」
耳元で囁かれて、
背筋が震えた。
「だって僕、
君の生活の中にもういるから」
その言葉を聞いた瞬間。
初めてはっきり分かった。
——この人からは、
簡単には逃げられない。