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「姉さん!」
わかりきったことを答えると、明彦が眉間に皺を寄せた。
「恋愛対象としてだ!」
「恋愛? うーーーん、特には。姉さん以上にときめかせてくれる人なんてこの世にいないし。そもそも恋愛には興味ないわ」
麗の筋金入りのシスターコンプレックスを明彦はよく知っているはずなのに何故そんなことを聞くのか。
「恋愛に興味ないとか言うな。麗は今日、俺の婚約者になったってわかっているのか?」
「え? あ、そっか、私、アキ兄ちゃんと婚約したんや」
麗は今ようやく明彦と婚約したことを理解し、うんうん頷いた。今日何度目かわからない明彦のため息が隣から響いた。
「……お前と会話していると俺は負けたと思うことがよくある」
「完全無欠のアキ兄ちゃんが私なんかのなにに負けるっていうの」
明彦は姉と同じタイプの人種だ。全て持ってる。
それなのに、何かに苛立ったように明彦がどんっと、麗を囲い入れるようにして近くの松の木に手をついた。
これは所謂壁ドンというやつではないだろうか。松の木だから松木ドン、いや、ドン松木。
(うん、某ファッションデザイナーの弟子をやってそう)
そんな馬鹿なことを考えていた間に明彦の秀麗な顔が鼻と鼻が当たりそうなほど近づいてきた。
「え、ちょっ、待って、え? あ、アキ兄ちゃん森林虐待はあかんで。す、ストップ地球温暖化」
明彦がこんなに近かったことなどこれまであったろうか。
麗は戸惑いを隠すようにただただ口を動かした。
「お前には俺に恋をしてもらう」
「なんで?」
こてんと小首をかしげた麗に明彦が眉間にシワを寄せた。
「…………………………まずは自分で考えろと、勉強を教えていたころから言っていたはずだ。兎に角、麗は俺と結婚するんだ」
「なるほど?」
「結婚式までの宿題だ。何故俺が麗と結婚したいのかよく考えてくるように。因みに式は来週の日曜、大安吉日だからな」
「ああ、来週の日曜。おっけー、スケジュール確認しとくわ。来週ね、来週っ!!!! え、えーーーーーーー!!!」
いつものようにお出かけの予定を立てる感覚で結婚式をの日程を知り、麗は悲鳴を上げたのだった。