テラーノベル
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夕暮れ時を迎え、野球部は後片付けに入った。
すちは部活の友人と共に後片付けをしている様子でらんはその姿をじっと見ていた。
桃『 もう暗くなるか … 、18時 まわっちゃった 。 』
桃『 夜ご飯 なに作ろうかな 。 』
桃『 すち に 協力してもらおうかな … 。 』
桃( いや 、迷惑 な だけかな 。 )
空は強い茜色が紺に染まっていく。
時刻は18時39分、もう太陽が沈みかけ、夜空を照らす月が目立ち始める頃だ。
桃『 帽子 、返さなきゃ 。 』
らんは土っぽいベンチから腰を持ち上げ制服の臀部を手で軽く叩き、少し付いた土を払い落とした。
近くの鉄製のゴミ箱の中に空になったペットボトルを投げ捨て両手で大切そうにすちの帽子を持ち、すちの元へ向かった。
翠『 ぁ っ 、らんらん !( 手振 』
整備を終えて用具を片付けているすちは後ろから迫ってくるらんに気付きらんに向かって手を振った。
激しい練習でユニフォームは土で汚れ顔や手も少し汚れていた。
桃『 ぁぁ あ − 、こんな汚れて 。( 拭 』
翠『 ごめんよ ぉ ~ っ 、( 汗 』
らんは桜の模様が描かれたハンカチをすちの顔に押し付け顔に付いた汚れを落とす。
翠『 そんな に しなくていいのに … 。 』
桃『 折角 イケメン なのに 汚れちゃったら イケメン 度合い見えないやん 。 』
翠『 なに イケメン度合いって 。( 苦笑 』
桃『 … まあ 俺 ちょっと 汚れてても 好きだけどさ 、 』
桃『 だって 頑張った証拠 みたいやん 。 』
翠『 … そう言われれば 頑張った 甲斐 が あるね 。 』
らんの言葉にすちは目を見開かせて両眉を上げる。
らんが発したその言葉はなんの意味も含まれてはいなくてただ当然のようなことを言ったまでという様子だった。
すちは口角を上げて緋色の瞳を揺らす。
桃『 ああ それと 、これ 、帽子ありがとうね 。 』
翠『 いいよ 、熱中症とかなってないよね 。 』
桃『 うん 、大丈夫 。 』
翠『 そっか 、よかった 。( 微笑 』
翠『 じゃあ 俺 、着替えてくるね 。 』
桃『 うん 。 』
淡々とした会話を終える。
すちが後ろを向いたら、らんの顔から先ほどまで浮かべていた笑みを殺し、物言いたげな表情に移し替えた。
引き止めようと口を開いたが、喉から声か出なかった。
伸ばした手も諦めて地面を指した。
そしてらんはいつもの笑みを戻した。
_
間を空けて置かれた街灯がコンクリートで出来た道を照らす。
その照らさせた地面を踏み帰路に着く。
慣れた沈黙を破ったのはらんだった。
桃『 ね ぇ すち 。 』
翠『 なに ? 』
突然の空気中の振動にすちは当然のようにそう返した。
桃『 今日 晩ご飯 なに に するか まだ 決まってないんだよね 、なんか アイデア ない ? 』
翠『 アイデア か ぁ … 。 』
らんの求める答えを出そうとすちは頭を抱えた。
すちは気難しい表情からアイデアを生み出したかのように表情を和らげた。
翠『 今 冷蔵庫 に なに ある ? 』
桃『 卵 は 一パックあったはず … 、ハム も あるし 、納豆 … 、レタス 、キャベツそれぞれ一玉 、玉ねぎも 、ネギ とか 、調味料だったらまあ 大体 は 。 』
翠『 マヨネ − ズ と お好み焼きソ − ス って ある ? 』
桃『 お好み焼きソ − ス ないかも … 、 』
翠『 お財布 持ってる ? 』
桃『 持ってるよ 。 』
翠『 じゃあ ス − パ − 行こっか 。 』
桃『 … おん 。 』
らんが言った材料や調味料を聞いてすちは疑問を発した。
その言葉にらんは目を片方に寄らせて残念そうにすちに向かって言った。
すちは自身の桜色の財布を革鞄の中から取り出してらんに問いた。それに肯定を示したらんは同じく革鞄から桜色の財布を取り出した。
すちはらんを誘い、らんはその誘いに応じた 。
桃『 財布 お揃いなんだ 。( 笑 』
翠『 この財布 、かわいかったから … 。 』
桃『 へ ぇ … 、( 笑 』
らんは両手を後ろに組んですちの大きな足跡に付いて歩いた。
にやにやと口角をあげる彼に対しすちは首を傾げ、疑念という感情を抱いた。
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翠『 ただいま 。 』
すちは木製でコーティングされた扉の鉄製のドアノブを引き、明るい玄関へ入って行った。
遠くから『 おかえり 』という返事が聞こえて、リビングの扉が開いた。
そこからすちの母親が顔を出してきて、すちはその声につられるがままにリビングへ入った。
_『 お兄ちゃん 遊び歩いてたの ? 』
_『 もしかして ついに すち にも 彼女 ? 』
翠『 どっちも 見当違い 、母さん は それ 皮肉 で 行ってるでしょ 。 』
翠『 友達 を 家 に 送ってた だけだよ 、ほら 、前 に 言った らんらん って 子 。 』
_『 ぁ − ぼっち の お兄ちゃん を 救った 救世主 ? 』
翠『 そうその子 。 』
揶揄うように話すすちの妹や母親に対してすちは少し苛立ちを示した。
彼はそうして人差し指を立て、少し前に話した会話の内容を掘り返した。
妹はそれに反応して少し昔の会話を思い出した様子だった。
すちは冷蔵庫の中の麦茶を手に取りながら妹の言葉を肯定した。
_『 優しいの ? その人 。 』
翠『 … 優しいよ 、とっても 。 』
翠『 俺 部屋 行って 服 着替えてくるよ 、勉強 も してたいから ご飯 できたら呼んでくれる? 』
_『 は − い 。 』
_『 頑張ってね 。 』
ガラス製のコップに注がれた麦茶を飲んでから少しの間をいれてすちは答えた。
ガラス製のコップを置き、革鞄を持って二階への階段へ向かう。
母親と妹の言葉に背中を押されて。
すちは部屋に入りガチャッと扉を背中で閉め、背中と扉を接着させながらズリ落ちるように床に座り込んだ。
頭を掻きむしって前髪を掻き上げる。
翠『 らんらん … 。 』
足の間に顔を埋めて最愛の人の名を呼ぶ。
その声が届くことはないと知りながら。
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夏『 ギリギリ間に合いましたね 。 』
夏『 お誕生日御目出度う御座います 。 』
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2,008
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コメント
2件
てぇてぇかな? 続き楽しみすぎる!