テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#などなど
유리
151
64
60
魔王城の警報が鳴った。
正確には。
鳴らされた。
「侵入者ァァァァァァ!!」
日向翔陽が窓から飛び出した。
「殺す!!」
五色工も追従する。
「待て待て待て待て!!」
城中に叫び声が響く。
中庭。
そこには一人の男が立っていた。
黒いローブ。
長身。
フードの奥から覗く鋭い目。
そして。
狼耳。
「……あ?」
日向が着地する。
五色も耳を立てた。
「獣人?」
「人間側じゃないんすか?」
「でも知らねぇ」
「知らないっす」
「「よし殺そう。」」
そうなった。
「待てボゲ共」
低い声。
二人が振り返る。
そこには城内パトロール中だった影山飛雄がいた。
「……帰ってきてたんすね」
「おう」
男が軽く手を挙げる。
その瞬間。
日向と五色が固まった。
「知り合い?」
「知り合いっつーか」
影山は肩を竦めた。
「魔王補佐」
沈黙。
数秒後。
「は?????」
日向が叫んだ。
「いや待って待って待って」
五色が混乱している。
「魔王補佐って孤爪さんじゃないんすか」
「もう一人いる」
「聞いてない」
「言ってねぇもん」
「そうだけど!!」
男はフードを下ろした。
黒髪。
狼耳。
漆黒の目。
どこか胡散臭い笑顔。
「どーも」
ひらひら手を振る。
「黒尾鉄朗です」
「初対面みたいに言うな」
影山が呆れた。
すると。
後ろから菅原と澤村もやってきた。
「騒がしいと思ったら――」
そして固まる。
「……え」
「……黒尾?」
黒尾が笑った。
「よっ」
沈黙。
「…………」
「…………」
「…………」
「え?」
黒尾が首を傾げる。
次の瞬間。
「「お前スパイだったの!?!?」」
菅原と澤村の声が綺麗に揃った。
「いやいやいや!」
菅原が指差す。
「人間側でめっちゃ会ってたじゃん!?」
「会ってたな」
「相談とかしてたじゃん!?」
「してたな」
「俺悩みとか話したぞ!?」
「聞いたな」
「最悪だ!!!」
黒尾が爆笑する。
澤村も頭を抱えていた。
「全然気づかなかった……」
「だろ?」
黒尾は得意げだった。
「これでも敏腕スパイなんで」
「腹立つ〜!!」
日向が笑っている。
五色も吹き出した。
「すげぇっすね」
「まぁな」
すると。
及川が現れる。
「黒尾〜!帰ってきたんだ〜」
「お、魔王サマじゃん」
「報告書ありがとね」
「どういたしまして」
普通だった。
どう考えても昔から知り合いだった。
「お前らどんだけ隠してたんだよ」
影山が呆れる。
その時。
ずっと黙っていた研磨が。
一歩前へ出た。
「……クロ」
小さい声。
黒尾が振り返る。
「ん?」
「……帰ってきたの」
「帰ってきたよ」
当たり前みたいに答える。
研磨は黙る。
黒尾も黙る。
周囲も何となく静かになった。
五百年。
黒尾はほとんど人間側にいた。
数年に一度。
数ヶ月だけ帰ってきて。
また消える。
それの繰り返し。
研磨は慣れている。
慣れているはずだった。
「……今回長かった」
ぽつり。
黒尾が少しだけ目を瞬く。
「そうか?」
「長かった」
即答。
珍しい。
研磨がこんな風に感情を出すのは。
黒尾が少し困ったように笑う。
「悪ぃ悪ぃ」
「……」
「仕事だったし」
「……」
返事がない。
おかしい。
黒尾は眉を下げた。
「研磨?」
そして。
ぽたり。
一滴。
雫が落ちた。
「……え」
全員が固まる。
「え?」
日向が二度見した。
影山も固まった。
五色の耳が硬直する。
「……えぇっと、アノ研磨さん?」
研磨本人も驚いている顔だった。
でも。
止まらない。
「クロ……」
声が震える。
「さびし、かった……」
黒尾が目を見開く。
「……研磨」
「クロ……」
ぽろぽろ。
ぽろぽろ。
涙が落ちる。
いつも無表情で。
何考えてるか分からなくて。
及川と影山が両片思いを拗らせてても「長かったね」で済ませる男が。
今。
子供みたいに泣いていた。
「クロぉ……」
「お、おう」
「さびし、かったぁ゛……!」
完全に決壊した。
黒尾が固まる。
日向も固まる。
五色も固まる。
菅原と澤村は口を押さえている。
「やばい」
「やばいな」
影山だけが少しだけ目を伏せた。
知っていた。
研磨がどれだけ黒尾を特別扱いしているか。
だから。
今回のこれは。
本当に珍しい。
「……研磨」
黒尾がゆっくり近付く。
そして。
ぽん、と頭へ手を置いた。
「ただいま」
その瞬間。
研磨が黒尾の服を掴んだ。
「……帰ってくるの、おそい」
「ごめんな」
「……ばか」
黒尾が笑う。
優しく。
愛おしそうに。
「知ってる」
そして。
誰にも見えないくらい小さく。
狼耳が嬉しそうに揺れた。
その様子を見ていた及川が。
ぽつりと呟く。
「……あれも両片思いじゃない?」
「今さらっす」
五色が即答した。
「今さらだな」
影山も頷いた。
菅原と澤村も無言で頷いた。
黒尾だけが。
「……は?」
という顔をしていた。
そのとき全員が思った。
((((コイツらどっちも自覚無しかよぉぉぉぉぉぉ!))))
黒尾鉄朗 役職 魔王補佐
研磨の幼馴染。もしかしたら及影のように両片思い…?出会った経緯は後々。 敏腕スパイ。研磨と同じく変装のプロ。500年近く人間側にスパイしに行っていて、及川に色々と情報の書かれた矢文を送っている。なので研磨と影山以外は「魔王補佐がもう1人いる…らしい」くらいの認識。 狼獣人なため、吸血鬼の日向、同じく獣人の五色とは相性がいい模様。 澤村と菅原とは寝返る前にそこそこ喋ったが、2人とも黒尾がスパイだとは気づかなかった模様。
コメント
1件
ああ〜もう!!!第12話、めっちゃ良かったです!!!!! 黒尾の正体が魔王補佐のスパイって衝撃だったけど、何より研磨が「さびしかった」って泣いちゃうシーンがズルいですよ…。あの無表情でクールな研磨が感情爆発させるの、反則級に刺さりました。2人の「ただいま」「おそい」のやり取り、尊すぎてもう…!! 及川が「あれも両片思いじゃない?」って冷静にまとめてるのも笑ったし、他のキャラの「今さらっす」連発もツボです。 これは両片思い確定案件では?!次話、超楽しみにしてます!!🔥