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ヴィオラはレナードの膝の上に乗せられ、2人でソファーに座っていた。歩けるようになってもレナードは、やたらとヴィオラを抱っこしたがるので、正直複雑だ。
「レナード様……」
「どうしたの?」
レナードはヴィオラの頸に顔を埋めていた。少しくつぐったい……それに、恥ずかしいが、いつもの事なので慣れてしまった。慣れとは怖い……。
「ロミルダ様は、一体何の病だったんですか……」
「う〜ん。原因不明みたいだよ。でも、まあ元々持病があったみたいだからね」
レナードの言葉にヴィオラは眉を寄せた。
持病……とてもそんな風には見えなかった気が……あんなに、元気そうだったのに。
ヴィオラの頬を力一杯叩く程に。あれから、数日腫れが引かなかった……。
「ヴィオラ、そんな事より」
ロミルダの死を、そんな事で片付けてしまうレナードに、ヴィオラは少し怖さを感じる。
「どうやって歩けるようになったの?」
城に来て、ふた月以上は経つが、今更それを聞くのか……とヴィオラは苦笑した。再会したあの一瞬は驚いていたのが伝わってきたが、その後は特に何を言うわけでもなく過ごしてきた故、レナードは余り気にしていないのだと思っていた。又は興味がないのかと。
「ある方に、助けて頂いたんです」
◆◆◆
その言葉に明らかにレナードの表情は変わった。だが、レナードに背を向けた状態のヴィオラには分からない。
「本当に、良くして頂きました。挫折してしまいそうな時も、支えてくれたんです。歩けた時も、まるで自分の事の様に喜んでくれました」
「……ふ〜ん」
弾む様なヴィオラの声色に、レナードは奥歯をギリッと音が鳴る程に、噛み締めた。
「それは、随分と親切な人だね。……で、その親切な人は今どうしてるの?」
「その方は……何処へ行ってしまいました」
「名前は?」
レナードの言葉にヴィオラは首を横に振った。もう、忘れなくては、そう思いあの人の名は口にしたくなかった。
「忘れました」
レナードは苛々しながら廊下を歩いていた。
「随分と苛々してるな。ここの所上機嫌だっただろう」
横を歩くアランは、横目でレナードを見遣る。ロミルダが原因不明の病でなくなり、国王もヴィオラをレナードの婚約者として正式に認めた。まあ、色々と問題はある……何しろヴィオラは、王太子殺害を企てたとされ処刑されたモルガン侯爵の娘だからだ。普通に考えたら、婚約者にするなど、あり得ない。国王も随分と悩んだそうだ。
だが、レナードの執拗な嫌がらせに、とうとう折れたらしい……。国王の苦悩する姿が見える様だ……。
何はともあれ、その事で、レナードはずっと機嫌が良かった。なのに今日は打って変わり、かなり機嫌が悪い様子だ。また、何かあったのか……。
「……ヴィオラに、悪い虫がついている」
「悪い虫?」
レナードは、あの後も執拗にヴィオラから聞き出した『親切な人』の話を、アランに話した。結局、名前や詳細は分からないままだが。
その話に、アランは微妙な顔をした。
「それは、悪い虫とは言わないんじゃないか……」
「は?アラン、君耳腐ってるんじゃないの?どう考えても、そいつは下心しかないだろう!」
「いや、そんな事はないと思うがな。その証に、その人物は何処へ行ってしまったのだろう?本当に、下心があるならヴィオラ嬢について、王都まで来ている筈だと思うが」
レナードは、アランの言葉に黙り込んだ。
「兎に角、レナード。これ以上はやめておけ。幾ら王太子のお前でも、危うい……」
そこまで言ってアランは、口を閉じた。どこで誰が聞いているかも分からないと。
「煩い。僕に意見するな」
レナードはアランをその場に残して行ってしまった。残されたアランは、大きなため息を吐く。