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名残雪を期待した
いない
いない、
どこにもいない、
ここにもいない
…まあ、そりゃそうか。
あいつのいる場所は、一つしかない。
昔から臆病で、繊細で、純粋で、穏やかで…
そんな澄んだ優しさを持つあいつの事だから、傷つかないように必死に守っているんだろう。
自分自身を、その優しさで必死に守っているのだろう。
あいつは、一人で消化しようとする。
自分の苦しいを、自分の悲しいを
初めて会った時もそうだった。
「僕らは歓迎してる、でも、向こうは僕らの事、嫌いみたいでさ。」
目が合わなかった。
いなくなりそうだった。
朝日で反射し薄く溶ける銀世界。それそのものを見ている気がした。
『少なくともわあは、おめの事歓迎してる。』
呼吸をしたつもりだった。
なぜか、それに芯が通っていた。
きょとん、なんて顔をされた。
それから…
それ、から
……
……遅かった、か。
もう、あいつの姿はその場になかった。
わかりきってたのに、でもどこか、ここにいるんじゃないか、また、またわあのことをここでずっと待ってるんじゃないかって。
…いつの間に、こんな世話焼きな性格になったんだろう。
冷たい音がすぐ後ろで鳴る。
背筋が伸びる。
みんなで桜、見たかったな。