テラーノベル
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彼女が学校に登校し初めて1週間が経とうとしていた。
しかし、彼女はまだ誰とも話していなかった。
先生に指名され、問題に答えるときも一言で終えていたため彼女の声を覚えている人は少なかった。
学校では毎年班発表を行っていた。
その時期が近づいたため、班での発表原稿作りが始まった。
今年は世界の色についてだった。
意味が分からないと言ってる人が多かったが、俺はとても興味が湧いた。
「あ、白宮さん。この色について。調べられる…かな」
そう俺が言うと、小さく頷き静かに調べ始めた。
調べてくれるのはとても嬉しいのだが、何故だか喜びをあまり感じない。
「この画像、使えそう」
独り言のような彼女の言葉が俺の耳に入った。
そして俺は彼女のタブレットを覗いて、
「本当だ。よく見つけたね。他にもないかな」
「これはどう?」
「それも使おうか」
俺は彼女と自然に会話をしていた。それに気づくまではただ、友達と話している感覚だった。
「この画像、保存しておくから彩咲くんは蛍光色について調べて。私は次、暖色と寒色を調べるね」
すぐに調べるのを始めた彼女には俺の分かった、という言葉が聞こえていなかった。
「ねぇ彩咲くん」
同じ班のもう1人の女子が話しかけてきた。
「よく、白宮さんとお話できるね。すごいね」
「すごい…?」
すごい、という言葉に疑問を抱いた。
「だって白宮さん。色が人間じゃないみたいじゃん」
その言葉は彼女にも聞こえるぐらいの大きさの声だった。彼女は聞いていないように作業を行っていた。
「そ、そう…?でも綺麗じゃない?制服と色が合ってるし。俺はそう思わないかな」
俺は彼女が近くにいることも気にせずにそう言ってしまったため、恥ずかしくなった。 でも、彼女はまた、聞いていないように作業を進めていた。
「そっか…」
その応えは何か班の穴が空いたようなそんな感じがした。
「メモ。結構とったよ」
彼女の声に驚き体が少し飛んだ。
「あぁ…ありがとう。あ、俺もメモ終わりそう。みんなはどんな感じ?」
そう聞いたら他の2人はまだ半分も終わっていないそうだった。
「じゃあ終わったらメモ、共有しよっか」
調べようと思った瞬間、授業が丁度終わってしまった。