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「もうすぐ進級試験かぁ」
ざわざわと騒がしい教室の片隅で
雪の降り出しそうな空模様を見上げながら、少女はポツリと呟く。
「あんた、ちゃんと勉強してるんでしょうね」
そんな物憂げな少女に向かって、前の席に座る女子生徒が尋ねる。
少女は空を見上げながら
「…いや?」
と、短く答えた。
「は?あんた進級する気ないわけ?」
女子生徒が少し眉を歪めながら聞くが、「そんなつもりは」とだけ返ってくる。そんな少女の不遜な態度に、
「…ふーん、じゃあアンタ置いて私だけ進級するから。1人でも頑張りなよ」
冷たい声音の一言を送った。
途端、少女は空から視線を外し、必死の形相で言葉を放つ。
「ダメ!!!美希と一緒に進級する!!!」
一瞬、シン…と時が止まったかのような静寂が教室を支配する。
すぐに何事もなかったかのように騒がしくなるが、2人の間に駆け巡った緊張感は続いていた。
「じゃあ勉強しなさいよ」
「努力はしてます」
「あまり目に見えないけど」
「嘘ですすいませんどうか頭の悪い私めに勉強を教えて頂けませんでしょうか美希様」
「最初からそれでいいのよ」
美希、と呼ばれた女子生徒は強気に一蹴し、少し満足げに顔を背ける。
「ありがたき幸せ」と頭をたれる少女。
キーンコーンカーンコーン…
チャイムの音が学校中に鳴り響き、授業が始まる。
少女は再び、淀んだ空を見上げた。
…もうすぐ、高校生になるらしい。
そんな未来が来るなんて、あの頃の自分には想像も出来なかっただろう。
何も持たず、闇の中で生きていたあの頃の自分には。