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とある山の中。
不気味なほど静まり返り、悪寒がするほど冷え切った空気の中、1人の男子生徒が草木を掻き分けながら歩いていた。
震える体を必死で動かし、白い息を吐きながら真っ青な顔で男子生徒は“それ”を見つけ出した。
「ほ、本当に、あった…」
弱々しい声音を嗤うかのように、周りの草木がカサカサと揺れる。
早まる鼓動を押さえつけながら、男子生徒は“それ”に手を伸ばす。
「やるしかないんだ…っ、やるしか、ないんだ……っ!」
息を荒げながら、男子生徒は“それ”を、剥がした。
「終わったな」
たったの一言。何の抑揚もない冷たい一言。
一枚の小テスト用紙を突きつけながら、眼鏡をかけた教師が言った。
それを言われた赤髪の少女、雪乃は、信じられない…という目をして教師を見返した。
「い…いやいや、絶対に教師が生徒に言う台詞じゃないでしょ、それ…」
「あぁ、すまんつい」
「え、いや、つい…じゃなくて、冗談ですよね?お茶目なジョークですよね?…え?ほんとに?ほんとに終わってるの?嘘だよね?うそ…」
「ごめんな」
「おい謝ってんじゃねぇぞ眼鏡…お前大事な生徒を見捨てるつもりか…」
「強く生きろよ」
「かち割るぞ眼鏡」
教師にガンつけながら受け取った小テストを恐る恐る見た。
あ、終わってる。
「美希〜どうしよ終わってるよ〜」
席に泣きながら戻り、前の席に座る友人美希に泣きつく。
返された小テストを美希に見せると、
「え……」
言葉もない、と言った感じで無言でそっと返された。
「ドン引くのやめて〜なんかコメントしてよ〜」
「や、ごめん、抱えきれないかも…」
「見捨てないで親友、たった今担任に見捨てられたばかりなの」
頼みの綱は君しかいないんだと懇願するが、頭を抱えてため息をつかれた。
雪乃は常に首に巻いている黒いマフラーに口を埋める。
「…教えてくれる約束だよね?勉強」
「…放課後空けときなよ」
「さすが美希様一生ついていきます」
放課後に勉強を教えてもらう約束をし、赤ペケだらけの小テストをそっと机の奥にしまった。