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う み
#雑談
1,064
「くねくね」
それでも良ければどーぞ。
午後一時。
雲一つない青空の下、蝉の鳴き声が響き渡っていた。
道路の両脇には青々とした田んぼが広がり、その向こうには緑の山々が連なっている。
都会ではなかなか見られない、のどかな景色だった。
四季「……暇だな」
四季がそう呟いた、そのとき。
四季「…ん…?なんだ…あれ、…」
田んぼの向こうに、白いものが見えた。
最初は、農作業をしている人間かと思った。
けれど、妙だった。
遠すぎて顔は見えない。それなのに、人間であることだけは分かる。
白い服を着た何かが、田んぼの真ん中で立っていた。
そして。
くね、くね、
ゆっくりと、身体を左右に揺らしていた。
風が吹いているわけでもない。
周囲の稲はほとんど揺れていないのに、それだけが不自然に動いている。
四季「……なあ、あれ何?」
四季が指を差す。
その瞬間、隣にいた村人の表情が凍りついた。
村人「おい」
村人は低い声で言った。
村人「指を差すな」
四季「え?」
村人「いいから、こっちを向け」
村人は一行を田んぼから遠ざけるように歩かせた。
誰も説明を求められなかった。
その顔が、あまりにも真剣だったからだ。
…だが、モブが好奇心で振り返ってしまった。
白い影は、まだ揺れていた。
くね、くね、
けれど、先ほどとは何かが違う。
——こちらを向いている。
そう思った瞬間、村人が叫んだ。
村人「見るなッ!!」
その日の夕方。
俺達は宿泊先の古い民家に呼び出された。
村の老人は、全員の顔を確認してから、静かに口を開いた。
村人「この村には、昔から決まりがある」
一つ。
昼間、田んぼの向こうに白いものが見えても、気にしてはいけない。
二つ。
それが人間のように見えても、知り合いのように見えても、決して近づいてはいけない。
三つ。
もし、そいつがこちらを向いていたら。
村人「……絶対に、目を離すんじゃ」
誰かが眉をひそめた。
四季「え? 今、見るなって言ったじゃん」
老人は答えなかった。
ただ、ひどく疲れた顔で言った。
村人「この村ではな、昔から人が消えるんじゃ」
部屋の空気が変わった。
村人「田んぼに入った人間が、帰ってこんようになる」
四季「警察には?」
村人「探しても見つからん」
四季「じゃあ、あの白いのは何なんだよ」
老人はしばらく黙っていた。
やがて、障子の向こうに広がる田んぼを見つめて、ぽつりと呟いた。
村人「……あれは、人間じゃない」
そのとき。
遠くから、蝉の鳴き声がぴたりと止んだ。
深夜二時。
宿の中で、俺は目を覚ました。
理由は分からない。
ただ、窓の外が気になった。
障子を少しだけ開ける。
月明かりに照らされた田んぼは、昼間とは違って静まり返っていた。
白い影は見えない。
四季「ふぅ、…」
ほっと息を吐いた、そのとき。
窓のすぐ外から、声が聞こえた。
「……おい」
聞き覚えのある声だった。
今日、一緒に任務へ来た仲間の声。
「開けてくれ」
けれど、その仲間は確かに隣の部屋で眠っている。
「……なあ」
窓の外の声が、もう一度呼んだ。
四季「っ、…(震」
「こっち、来てくれよ」
障子の向こうで、何かが揺れている。
くね、くね。
人間の身体ではできるはずのない動きで。
そして、声がした。
「なあ、……俺のこと、見えてるんだろ?」
聞き慣れた仲間の声だった。
けれど、返事はしなかった。
返事をしてはいけない。なぜか、そう思った。
しばらくすると、声はぴたりと止んだ。
足音もしない。
ただ、窓の外から、じっと見られているような感覚だけが残っていた。
朝になれば、いなくなっている。
そう自分に言い聞かせ、布団に潜り込んだ。
翌朝。
四季「おはよー…」
何事もなかったかのように、仲間たちが居間に集まっていた。
昨夜のことを話そうとした、そのとき。
四季「……あれ?」
一人足りない。
昨日、田んぼの向こうを見てしまった仲間がいなかった。
四季「モブは?」
四季が尋ねると、村人は味噌汁をよそいながら答えた。
村人「帰ったよ」
四季「は?、いつ?」
村人「朝早くに」
四季「……荷物は?」
全員が黙った。
その仲間の荷物は、昨夜と同じ場所に置かれていた。
靴も、上着も、携帯電話も。
まるで、最初から一人で出かけるつもりなどなかったかのように。
村人は何も言わず、食卓に人数分の茶碗を並べていた。
一つ多い。
誰も、そこには座らなかった。
昼過ぎ。
一行は、行方不明になった仲間を探すため、集落を歩いていた。
田んぼには近づかない。
村人に何度も念を押されたからだ。
モーブ「……なぁ」
ふと、隣を歩いていた仲間が口を開いた。
モーブ「昨日、田んぼにいたアレさ」
四季「……ああ」
モーブ「俺、どっかで見たことある気がするんだよな」
冗談だと思った。
けれど、そいつは笑っていなかった。
モーブ「顔は見えなかった。でも、動き方が……」
言いかけて、黙る。
その視線が、ゆっくりと田んぼの方へ向いた。
四季「……おい?」
呼びかけても返事がない。
そいつは、何かを思い出そうとするように目を細めていた。
モーブ「俺、あいつのこと知ってる」
四季「誰を?」
モーブ「……誰だっけ」
その瞬間。
田んぼの向こうで、白い影が揺れた。
くね、くね、
隣にいた仲間が、ぽつりと呟く。
モーブ「……ああ、そうだ」
モーブは、嬉しそうに笑った。
モーブ「俺だ」
その日の夕方、一行は村の老人を問い詰めた。
四季「何を隠してんだ?」
老人はしばらく黙っていたが、やがて古びたアルバムを取り出した。
そこには、何十年も前の村の風景が写っていた。
田んぼ。山。古い民家。
そして、集合写真。
その写真の一番端に、白い服を着た人影が写っていた。
くねくねと身体を傾けた、不自然な姿勢で。
四季「……これ、いつの写真だ?」
村人「六十年前じゃ」
四季「じゃあ、こいつは……」
老人は写真を裏返した。
そこには、震えた字で一言だけ書かれていた。
『今年も一人、足りなくなった』
村人「昔から、この村では人が消える」
老人は静かに続けた。
村人「じゃがな……本当に恐ろしいのは、人が消えることじゃない」
四季「……何?」
村人「消えた人間を、誰も思い出せなくなることじゃ」
一行は顔を見合わせた。
昨日まで一緒にいた仲間。
名前も、声も、顔も知っているはずなのに。
誰も、そいつの名前を思い出せなかった。
老人がアルバムを閉じた。
村人「……この村には、昔から一つの言い伝えがある」
縁側の向こうでは、午後の日差しを浴びた田んぼが、どこまでも広がっていた。
村人「六十年前、この村に一人の少年がおった」
老人はゆっくりと話し始めた。
少年は、村の外から引っ越してきた子供だった。
家族はおらず、村の人間に引き取られて暮らしていたという。
人懐っこく、よく笑う少年だった。
毎日のように田んぼを走り回り、村の子供たちと遊んでいた。
けれど、一つだけ。
少年には、どうしても理解できないことがあった。
村人「……人間というものは、見てはいけないものを見たら、どうなると思う?」
老人の問いかけに、誰も答えなかった。
村人「少年はな、ある日、田んぼの向こうに立っているものを見たんじゃ」
白い服を着た、細長い人影。
遠くから見ると、人間にしか見えなかった。
少年は興味本位で近づいた。
そして、その姿を見続けてしまった。
それからだった。
少年がおかしくなったのは。
村人「最初は、誰も気づかなかった」
老人は、膝の上で両手を握りしめた。
少年は以前と変わらず、村の子供たちと遊んでいた。
ただ、時々、身体を左右に揺らすようになった。
くね、くね、
本人は無意識だった。
声をかければ止まる。
だから村人たちは、疲れているのだろうと思っていた。
けれど、日に日に揺れは大きくなっていった。
首が傾き、背中が反り、手足が不自然な方向へ動く。
それでも少年は笑っていた。
四季「……怖くなかったのか?」
四季が尋ねた。
老人は、ゆっくりと首を横に振った。
村人「怖かったのは、少年じゃない。周りの人間じゃ」
少年の母親代わりだった女性は、何度も医者を呼んだ。
だが、医者は原因を突き止められなかった。
村人たちも、少年を避けるようになった。
そして、ある夏の日。
少年は突然、姿を消した。
家にもいない。
山にもいない。
村のどこを探しても、見つからなかった。
ただ、田んぼの向こうに。
白い影が一つ、立っていた。
四季「……あれが、少年だったんすか」
四季尋ねた。
老人は答えなかった。
代わりに、窓の外を見つめた。
村人「わしは、そう思っとる」
四季「…じゃあ、なんで村の人間は何も教えなかったんだ?」
問い詰められた老人は、初めて顔を歪めた。
村人「……守りたかったんじゃ」
四季「誰を…?」
村人「村を。そして、あの子を」
老人は立ち上がり、奥の部屋へ向かった。
しばらくして戻ってきたとき、その手には一枚の古い写真があった。
六十年前の集合写真。
田んぼを背景に、村人たちが並んでいる。
その中央に、小さな少年が立っていた。
笑顔だった。
ごく普通の、どこにでもいる子供の笑顔。
村人「この子は、最後まで人を傷つけようとはせんかった」
老人の声が震えた。
村人「ただ、誰かと遊びたかっただけなんじゃ」
一行は黙り込んだ。
村人「じゃが、村の人間は怖がった。誰もあの子を見ようとせんかった。話しかけようともせんかった」
老人は写真を握りしめた。
村人「……あの子が消えたあとも、誰も探そうとせんかった」
そのときだった。
縁側の向こうから、声がした。
「……ねえ」
子供の声だった。
「おじいちゃん」
老人の顔から、血の気が引いた。
「……遊ぼうよ」
一行が振り返る。
田んぼの向こうに、白い影が立っていた。
くね、くね、
身体を揺らしながら、こちらを向いている。
そして、その影の隣に。
小さな男の子が立っていた。
古い写真と同じ服を着た、あの少年が。
なんか文章きもかった。
続きあります。
一ヶ月前ぐらいにリクエストしてくれた方がいるんだけど、めちゃ遅くなっちゃった。ごめんなさい。一応ちょっとずつ書き進めてはいた。
みんな、夜にこれを見て怯えて寝るがよい!
それかお風呂から出られなくなるがよい!
(2026/10/12 18:30)
NEXT➙♡200
コメント
13件
とても面白かったです~! 次も頑張って下さいね~
うわァァァ続き来ちゃー!!え?最高なんだが
