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体育館に足を踏み入れた瞬間、
リンクは“残り香”のような邪を感じ取った。
「……遅くない」
エンゲルとバブルが左右に散り、
チップは二人の間へ。
その刹那、
床と天井の継ぎ目が裂けるように開き、
パペットが雪崩れ込んできた。
紙と糸で形だけを真似たヘビ。
だが数は多い。
「来る!」
リンクは走りながら
獣神の弓を引く。
放たれた矢は、
風が刃になったかのように伸び、
パペットの鎧を紙の束を突き破るように貫通した。
一射一体。
存在の“前提”が裂け、
形がほどける。
「……貫通力が違うな」
タヴェルが、傷だらけのまま息を整えつつ呟く。
リンクは答えず、
矢を連ねる。
その死角――
少女の影が跳ねた。
ラナ。
リンクの間合いへ、
毒を帯びた刃が伸びる。
――命中。
刃は確かに、
リンクの肩を掠めた。
だが。
リンクの足取りは、
一切乱れない。
「……効カ……ナィ?」
ラナの声が揺れる。
《問題ありません》
マスターソードが、静かに共鳴する。
《その毒は“認識”に作用するもの。
あなたの心は、もう揺らぎません》
リンクは、
一歩踏み込んだ。
ラナの動きは速い。
だが、練度が足りない。
踏み替え。
かわす。
反転。
――ラッシュ。
一撃、二撃。
光が線を引く。
三、四、五。
刃は触れるたび、
邪を削り取る。
六…………、
七連撃。
斬っているのに、
壊している感触がない。
それでも、
ラナの輪郭は確実に薄くなる。
「……まだ……!」
最後の一撃。
――その瞬間、
空間が歪んだ。
床から、
怨念で編まれた根が噴き上がる。
枝が絡み、
ラナを引き戻す。
引き寄せられた先――
リンゴの葉の髪飾りの少年。
アビー。
ラナは、
彼の隣に庇われるように留まった。
リンクは剣を下ろさず、
ゆっくりと前へ進む。
その前に、
再びパペットが湧く。
「チップ!」
エンゲルが叫ぶ。
チップは、
震える手で
カガヤキの実を放った。
光が弾け、
パペットたちが一瞬、
動揺する。
「今よ!」
バブルの声。
古代の刃が交差し、
邪の存在が
分解されるように消える。
リンクは、
アビーから目を離さない。
「……お前が、 ここを作ったのか」
返事はない。
代わりに――
世界が組み上がる。
体育館は溶け、
石畳と塔が現れる。
ハイラル城。
細部まで、
記憶どおり。
城内で、
影が動く。
ガーディアン。
リンクのトラウマが、
形を取って蠢いている。
「……ここは……?」
タヴェルが、
歯を食いしばって言う。
「俺のトラウマか。お前は…… 人の心を、 ここまで使うのか」
アビーは黙したまま。
リンクは、
城を真正面から睨む。
逃げない。
目を逸らさない。
毒は消えた。
それでも、
勇者の歩みは止まらない。
リンクは、
一歩を踏み出した。