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星導と始めて会ったのは学生の頃だった。
クラスが一緒で席が前後で並んでいた。
ノリが合ったからよく駄弁っていた。
あんなに喋っていたのに内容はあんまり覚えていない。多分、しょうもないことばっかり話していたんだと思う。
昼休みはだいたい一緒にご飯を食べていたし、入ってる部活が違うのに一緒に帰ったり、 授業中に寝そうな俺を椅子を蹴って星導が起こしたこともあった。
当時は何とも思っていなかったけど今思えば他愛もないそういうことをずっと星導と一緒に過ごしていた。とりとめもない1つ1つが楽しかった。
まだ子供だったから星導に対して好意を抱いていることに気が付かなかった。
「ずっとダチな、俺ら」
「何それ」
「大人になって酒飲むようになっても駄弁ってたいから」
「ふはは、そうだね。飲めるようになったら誘ってよ」
「お前が誘ってくれよ」
「えー、どうしよっかな」
こんな会話が後々呪いになるなんて思いもしなかった。
卒業後は連絡を取り合って何度か遊んだ記憶がある。でもその何度目かの後、ぱったりと連絡がつかなくなった。
理由は分からない。心当たりもない。
ただ、あの時。星導 晶は最初からそんな人間がいなかったかのように姿を消した。
ずっとダチ。ずっと一緒に居ような、の意味で言った。
ガキだったから何も考えないでそれが言えた。深い意味はないはずだった。
ずっとなんて冷静に考えたらあり得ないのに。
空想の中であの時の自分の首に手をかけた。力を入れれてギリギリと締め付ければ苦しいのは今の自分の方で涙が出た。
彼のことが好きだった。今もずっと。
喪失感に囚われた。自覚するのが余りにも遅かった。後悔してもしきれなかった。
手を伸ばす先は過去の自分の首じゃなく、あの日あの時の彼だろうに。
せめてあの時、一度でも手を掴んでいたのなら。少しは違っていたんじゃないか。
???年後。
「はじめまして」
彼は姿を変えて唐突に俺の前へと現れた。
全ての記憶を遥か彼方に置き去りにして。
嬉しいだとか悲しいだとかそういう感情には踊らされなかった。彼の前ではそれを隠した。多分彼も勘づいていなかったはず。
それが出来たのは動揺しすぎて信じられなくて一周回って冷静だったのかもしれない。
彼は別人のように見えた。宇宙と一体化したとか、タコになったとか突拍子もない事を言い出したから別人と認識したのかもしれない。
いや、前も突拍子のない事はよく言っていたけれども。
「付き合ってくれませんか」
「は?」
その彼からまさかの告白。それも、彼が再び現れて、記憶がないことへのショックから立ち直っていない時にされた。
2度目のはじめましてから3ヶ月ほど経った頃のことだった。
突然の怒涛の展開。情緒がジェットコースターのように上下左右へと旋回し、上昇と降下を繰り返した。
返事を待たせた。この感情をどうやって処理しろって言うんだよ、と心の中で悪態ついた。
前の彼が好き。今の彼にそういった感情は湧いてない。
「……返事持たせてる時点で無意識にその気があるんじゃない? 」
事情を知ってる伊波に相談すればそう言われた。