…っ俺は
『座長』『スター』『頼れるお兄ちゃん』『人気者』
正直…もう…疲れた、…
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聞き慣れた五月蝿いアラームの音で目が覚める。
ああ、なんだ。また朝が来たのか…
寝てるうちにタヒぬことができたらいいのに…
そんなことが起きるわけもなく、重い体を起こしてベッドから出る。
最近は毎日のように頭痛がする。酷いときは朝からずっと痛みが続いて、授業にも集中できない。
「……っ」
今日は朝から激しい頭痛がした。
咲「あ!お兄ちゃん、おはよ〜!」
司「ああ!おはよう!」
「………」
咲「…お兄ちゃん?どうしたの?具合悪い?顔色悪いけど…」
駄目だ。スターたるもの、頼れる兄たるもの、
妹に心配をかけてはいけない。
司「…大丈夫だ!最近ショーの練習が忙しくて少し疲れているのかもしれないな!」
ショーの練習が忙しいのは本当のことだ。
頭痛の原因かはわからないが…
咲「そう…?ならいいんだけど…」
司「そんなことより咲希!このままでは学校に遅刻してしまうぞ!」
咲「えっ?…あっ!ほんとだ!遅刻しちゃうよ〜!」
咲「じゃあアタシ先にいくね!お兄ちゃんも遅刻しないようにね!」
司「ああ!いってらっしゃい、咲希!車には気を付けるんだぞ!」
咲「は〜い!いってきます!」
オレも学校に急がねば。朝食を口にした時だった。
「……ゔっ…」
一口入れただけだったのに、猛烈な吐き気がした。
バタバタバタッ
「…っおえっ…げほっ……ゔっ…ごほっ……」
最近あまり食欲がない。
昨晩の夕食も全部食べたもののその後全て吐いてしまったため、もはや吐くものも残っていない。
吐き気が収まらない…
「……ゔっ…おえぇっ…げほごほっ…」
こんな、頭痛と吐き気が始まったのはあの時からだ。
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あの日は、久しぶりにワンダーステージでの公演だった。
ダショ「ありがとうございました!!!!」
え「今日のショーもみんなニコニコわんだほいだったね〜!あたし、まだ10回くらいやりたいなぁ〜!」
司「ああ!この調子で、次の公演も必ず成功させるぞ!」
寧「そろそろ、お客さんいなくなった?」
類「そうみたいだね。では、片付けを始めようか。」
司「(…ん?あれは、今日オレ達のショーを見てくれていた客か)」
客A「ワンダショの公演、よかったね〜!」
客B「ほんと、最高だったよ〜!」
司「(おお…!客の評判もよかったみたいだ…!)」
B「緑の髪の子の歌とか、すっごい上手だったよね。」
A「ああ、その子、草薙さんっていう人だよ!」
B「え?あ、そうなんだ!ほんと、Aはワンダショ大好きだね。詳しすぎるよ〜」
B「そうそう、あのピンクの髪の子も、身体能力すごかったよね〜!あんなに軽々アクロバットする人、初めて見たもん!」
A「あー、その子がショーの内容とかも考えてるらしいよ?」
B「えっ、そうなの!?」
A「そうそう。そして、それをもとに神代…紫の髪の人が、演出を付けてるんだって。」
B「そうなんだ〜!才能の塊じゃん、すごい…」
司「(やはり、オレ達はかなり有名になってきているようだな!嬉しいことだ!)」
その場をあとにしようとした時だった。
衝撃的な言葉が、司の耳に入った。
B「でもさ、座長さんあんまり演技上手くないよね」
司「…………え?」
A「わかる〜!というか、他の3人が才能ありすぎて座長っていう感じが無いんだよね。ぶっちゃけ、ただの素人っ…ていうか」
B「あ〜そうそう!3人は才能あるのにね。」
そうか、オレには、才能が…
確かにそうだ。
オレは、えむのような発想力と身体能力も、寧々のような演技力と歌唱力も、類のような演出力も表現力も、
全て持っていない。
オレには、3人のような才能がない。
3人のようにはなれないんだ。
…あれ?
オレは何のために、ショーを…
それから、ショーをしても
ただただ苦しいだけだった。
客がオレのことを褒めることを言っているときも、
「あの3人には及ばない」
その思考が巡ってっ、…
才能のある3人は何も知らないだろう。
才能の無いオレを。
夜、中々寝付けずに涙を流すオレを。
衝動的に手首を傷付けてしまったオレを。
知らないだろう。いや、知らなくていい。
才能のある3人は、もっと評価されるべきなんだ。
オレのことなど、知らなくて、いい………
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