僕に知らないものは 無い
人間も
世界の歴史も
音楽の素晴らしさも
僕に知らないことは 無い
方程式の解き方も
曲の作り方も
この世の真理だって
僕はずっとずっと先を知っている
そんな僕が知らないことを
自身の死をもって
教えてくれた人がいる
今日はそんな彼の命日だ
彼はいつも笑顔だった
f「元貴、おはよう」
「あれっ?今日元気ないねぇ」
「なんかあったぁ?」
ほわほわしてて
柔らかい雰囲気の可愛い人だった
友達はあんまりいなかったかな?
髪を染めてていつも先生に注意されてたっけ
とにかく”良い人”だったのだ
こんな捻くれた僕を
太陽みたいな明るさと
月みたいな優しさで包み込んでくれる
僕はそんな彼が大好きだった
だけども
ある日突然
彼は自殺した
今でもその日のことを鮮明に覚えている
僕が学校に忘れ物をして取りに行った日のこと
夜遅くだったけど外のベンチに忘れ物をしたので取れるだろうと思い学校に戻ったのだ
忘れ物をとって帰ろうとした時あるものを見つけた
o「ぇ…」
低木のすぐそばに人が倒れていた
真っ赤な血溜まりの真ん中で
僕はあの派手髪に見覚えがあった
o「涼…ちゃ……」
僕はすぐに警察に電話をかけた
そのときのことはあまり覚えていない
学校に来て
涼ちゃんが死んでて…
思い返すと頭が痛くなってくる
警察の人の話によると
飛び降りようとして
足を引っ掛けて
転んだ様に滑り落ちて
飛び降りた先の低木がクッションになって
即死ではなかったそうだ
だけども
誰も彼を見つけてくれなかった
誰かが見つけてあげれば
彼は死んでいなかったって
彼は
独りで
苦しみながら死んでいった
それから
彼はいじめられていたそうだ
ずっと
ずっと前から
ずうっと笑顔の彼の裏側にあるSOSに気づけなかった
いや
気づかなかった
僕は
彼のことを何ひとつ
“知らなかった”
コメント
3件
続けてコメント失礼します 短編集なのになんでこんなに満足度高いんでしょうか…… 主さんの小説1話読んだだけで たくさんのお話を読んだ気がします、、🥹(??) (表現力ないし、日本語もダメダメなんですよ…どうしたら主さんみたいな素晴らしい小説が書けますか…?)