テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#異世界転移
花月夜れん
2,611
#東京リベンジャーズ
ユキ
137
フィオレ
230
耀聖(ようせい)
304
第九十話 一年目の終わり
三月の終わり。
桜が少しずつ咲き始めていた。
湊は、去年の写真を整理していた。
卒業の日。
初めて二人で撮った写真。
それぞれの新しい生活。
イベントで撮った人々。
季節ごとの風景。
一年分の写真を並べてみると、
自分でも驚くほどたくさんの時間が残っていた。
「一年って、こんなに撮ってたんだな……」
写真の中には、去年の自分がいる。
今より少し幼く見える。
考えていることも、今とは違った。
あの頃は「写真を仕事にしたい」という
気持ちがあっても、
それをどう形にするのか分からなかった。
今も、まだ分からないことは多い。
それでも、以前よりはっきり言える。
自分は写真を続けたい。
人の心に残る写真を撮りたい。
そして、
いつか誰かの大切な時間を残せる写真家になりたい。
その日の午後、紬と会った。
二人で歩いたのは、
卒業後に初めて写真を撮った場所だった。
桜が咲いている。
「去年ここで撮ったよね」
紬が言う。
「うん」
湊はカメラを取り出した。
一年ぶりに見る景色は、同じようで少し違っていた。
木も。
道も。
空も。
そして、自分たちも。
「今年も撮る?」
「撮ろう」
二人は並んで立った。
タイマーをセットする。
シャッターが切られる。
一枚。
去年とは違う二人の写真が残った。
写真を確認すると、紬が笑った。
「なんか、一年分が詰まってる感じする」
「分かる」
湊も笑う。
そのあと二人は、近くのベンチに座った。
「この一年、どうだった?」
湊が聞く。
紬は少し考えてから答えた。
「大変だった。でも、楽しかった」
「俺も」
「まだ一年なんだよね」
「うん」
「なのに、すごく長かった気もする」
二人はそれぞれの一年を振り返った。
新しい人との出会い。
初めての経験。
失敗。
迷った時間。
嬉しかった瞬間。
そして、離れていても
写真や言葉でつながっていた時間。
どれも特別な出来事だけではない。
けれど、その一つひとつが今の二人を作っていた。
湊は今日撮った写真をカメラの画面に表示した。
「来年も撮ろう」
紬が言った。
「もちろん」
去年と同じ約束。
でも、意味は少し違っていた。
去年は、変わってしまうことが怖かった。
今は、変わっていくことも楽しみにできる。
二人は、それぞれ違う道を歩いている。
これから先も、同じ場所にいるとは限らない。
それでも、たまに同じ景色を見て、
同じ時間を写真に残せたらいい。
それだけで十分だった。
帰り道。
湊は桜の写真を一枚撮った。
満開になる少し前。
まだ蕾が残っている。
去年とは違う春。
けれど、確かにつながっている春。
📷 Photo.090「一年目の終わり」
撮影日:3月28日
一年が終わる。
けれど、それは何かが終わるという意味ではない。
積み重ねた時間は、次の季節へ持っていける。
写真も。
夢も。
言葉も。
そして、二人がこれから選んでいく未来も。
湊はカメラをしまった。
紬も歩き出す。
桜の下を、二人はそれぞれの方向へ進んでいった。
同じ場所から始まっても、向かう先は違う。
それでも、いつかまた同じ景色に出会うことがある。
そのとき、二人はどんな写真を撮るのだろう。
――物語は、次の季節へ進んでいく。
――次回、第九十一話「新しい春」へ続く。
コメント
1件
第90話「一年目の終わり」、読み終えたよ〜〜🌸 一年前の自分と今の自分、同じ場所で撮った写真が違って見えるの、すごくエモかった😭💕 「変わっていくことも楽しみにできる」って湊の気持ちの変化、ちゃんと紬との会話や桜の景色で表現されてて、じんわり温かくなったよ✨ 来年もまたこの二人の写真が撮れるのを楽しみにしてる! 続きの「新しい春」も待ってるね!!