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二十三
ルアレのボールでキックオフとなった。パスをゆっくりと回し、ヴァルサ陣地の中程で8番がボールを受けた。残り時間はおよそ五分。
オルフィノが真正面に移った。背後にはアリウムがぴったりと付いている。
8番はオルフィノにパスした。オルフィノ、右足を軽く上げるが触れずにスルー。後方のアリウムの股も抜けて、ボールは後方に流れる。
アリウムは転ける一方で、オルフィノはボールを収めた。すぐに暁がフォローに回る。
(あり得ない! 後ろに目でも──)暁の少し後ろに位置取っていた神白は、戦慄しつつバック走でゴールへと引いていく。
暁と対峙したオルフィノは、足でボールを掬い上げた。とんとんと、額のところでボールを小さく突き始める。
「同じ手は食わねえよ! こんなのボールは無視して身体を押さえれば良いだけだ!」
アグレッシブに言い放ち、暁は肩でぶつかりに行った。
しかしオルフィノ、ボールを額に乗せたままくるりと回転。暁の左肩をすれすれで避けて、頭で大きく前に出す。残るは神白一人のみ。
神白は即断し、前に出た。腰を落とした姿勢を取り、頭をフル回転してオルフィノの動きを読み始める。
(ループだ!)直感した。真上に跳んだ。案の定、オルフィノはボールを浮かせたシュートを撃ってきた。神白は右手で捉えた。ボールが高く浮き上がる。
着地してからもう一度跳んだ。オルフィノが競ってくるが、意にも介さずキャッチ。
二十四
地面に足が付いた。するとヴァルサのベンチから歓声が上がった。神白は面映ゆい思いを抱きつつ、ボールを手で転がし走り始める。
オルフィノを抜いた。9番が寄せてきた。「樹!」暁の声がして真左にパスを出す。
神白はなおも前進し続ける。暁からのリターンが来た。神白は止めた。敵7番が目の前にいた。
(取られたら即失点! 怖い! けどここは勝負だ!)
決心を固めて、左に蹴り真似をした。直後に左、右とダブルタッチを仕掛ける。
7番を抜いた。8番が来た。神白は左に蹴り出し、大きく前へとキックした。
ノーバウンドで天馬が受けた。だがモンドラゴンが立ち塞がる。
天馬、斜め後ろにパスした。その瞬間、神白は全力疾走を開始する。
ヴァルサ6番が受けた。と同時、「くれ!」と叫んだ。
6番、身体のフェイントで敵4番を惑わし、斜め後ろに転がした。神白は猛然と駆け寄りつつ、考えを巡らせる。
(サッカーは、自分を表現する手段だ! でも結果を出せないと、誰も評価しちゃあくれない! だから俺は結果を出す! 俺の得点で優勝して、みんなで笑ってヴァルセロナに帰るんだ!)
迷いはなく、気分は爽快だった。神白はスピードを落とさぬまま、大きく右足を踏み込んだ。何万回、何十万回と用いたフォームで振りかぶり、左足の甲でボールを捉える。
勢いよく飛んだボールは、直線軌道でゴールへと向かう。キーパーは跳んだ。右手で弾いた。だが妨害をものともせず、ボールはネットに突き刺さった。