テラーノベル
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ところ変わって少女たちは華月の部屋へと移動した。簡素な部屋の作りだ。小さなベットと大きめの本棚、それにきれいに整頓された勉強机しかなかった。中は生活感がないと行ったレベルでものがなく、掃除されておりどこか浮世ばなれした雰囲気だ。
「華月よ、この菓子は美味じゃの!」
歓喜の声を上げていたのは鬼姫であった。
口にはべっとりチョコレートがついてある。
その悲惨な様子に頭を抱えてしまうのも無理はないだろう。
「護衛してやる」そんなことを彼女は言っていた。しかし今の今まで高位の妖怪などに出会ったことなどない。さっき襲われた事実からは目を背けることにした。
「ねえ、僕は大丈夫だから元の場所に帰りな?」
「それはむりじゃ。妾は皇位争いに負けた身だからのう」
華月の脳内で(そもそも妖怪に皇位とかあるんだ)や(もしやこいつ居候するために護衛を……)という考えが交差した。
「お主の加護は切れておる これから先狙うやつが出てくるぞ」
「いやそもそも加護って???」
言い残すとおもむろにチョコを食べ始める作業へと戻ってしまった。しかし、先程妖怪に食われかけたのも事実。仕方ないこの厄介なお姫様を利用してでも生き残ってやろう。華月はベットに座っていた鬼姫の目をやった。
「わかった。でも僕は君を信頼しないから」
「おおそうか では名前をつけてくれ」
急な話題の転換に目をぱちくりさせる華月にさすがの鬼姫も気がついたのだろうか。ベットから立ち上がりふんぞり返る。
「まあ簡単に言うと妖怪との契約において名は必須だからのお 名付けは特に縁が生まれる
」
少しばかりは理解できたのか納得したように晴れやかな表情を浮かべる。数秒立った後険しいかおをし始めた。どうやら名を考えているようだ。眉間にシワがより、愛らしい顔がゆがんでいた。
「じゃ、陽芽で」
考え込んだ割には安直な名だった。鬼姫だから陽芽。誰でも思いつくなんとも独創性のない名前だった。それでも、満足げに陽芽は頷く。それは契約が成立したからだからだけとは考えがたいほど明るい表情だった。
「陽芽……かのお」
コメント
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とても素晴らしい物語ですね続き楽しみにしてますね