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再びリクエストいいでしょうか…? 可能でしたら、 ・佐野さんが喘息持ち ・看病?が吉田さん お願いしたいです🙇🏻♀️
仁人は本当に泣かない。
 過去に数回あるかないかくらい。
 けどそれはきっと、感動とかの類いで自然と零れたものだろう。
 泣かないからといって人情が薄いとは思わないし、俺は仁人は誰よりも熱いやつだと思ってる。
 
 誰よりもメンバーの事を気遣って
 マネージャーにも気を配って
 周りをよく見て行動する
 
 だからこそ俺も心配になる。
 自分を殺してるんじゃないかと、"リーダー"という肩書きで責任を感じすぎているんじゃないかと。
 仁人は俺よりも年下でどんな思いでM!LKを引っ張っているのかは分かってはいるつもりだけど、その重みはきっと俺には理解出来ないほど深いものだろう。
 だからこそ少しでも荷が軽くなるように言葉をかけるが、その言葉がどれほど仁人の中で生きているか、これもまた分からない。
 
 「仁人ってほんと泣かないよな」
 
 「急に何言い出したかと思えば…別に悲しければ泣きますよ?」
 
 「あんま見たことないからさ」
 
 「だけど、…泣いたところで何も変わらないのが現実なんだよ」
 
 「ふ〜ん…。」
 
 「俺的には勇斗の涙、綺麗だなって思うよ」
 
 「俺結構泣く方だしな笑」
 
 「笑そうだね」
 
 「まあ、仁人も辛かったら頼れよ」
 
 「ありがと」
 
 言い方で分かる。
 きっと仁人は言葉を探りに探って選んだのだと。
 "何も変わらない"その一節は何を変換してでた言葉なのだろう。
 あの時の曇った表情は何を思っていたのだろう。
 日に日に仁人の笑顔が半強制的に作られているものだと感じた。
 
 次の日も
 また次の日も
 そのまた次の日も
 
 「…?…と?…仁人!」
 
 「…ん?何?」
 
 「さっきっからめっちゃ呼んでんだけど」
 
 「笑笑笑ごめん気づかなかったわ」
 
 「お前さ、いつからそんな笑顔するようになった?」
 
 「…え?そんな笑顔…?別に普通だけど」
 
 「はぐらかすなよ。」
 
 「はぐらかすも何も無いって笑いつも通りの俺だけど?それよりもほら、練習再開しよ」
 
 「だからそうやって話流すなって。」
 
 「いいってそういうの」
 
 「いいからちゃんと聞け!俺の話」
 
 もう仁人に嫌われたっていい。
 その貼り付けられたレッテルを剥がすためには…
 仁人が本心で話せるようにするためには…
 多少のぶつかり合いは必要だから。
 
 「仁人、俺が気づいてないとでも思ってんの?そうやって作り笑いしてよ。日に日に体調が悪く見えるのも、今だって集中してなかったろ?」
 
 「いや、別にそういう訳じゃねぇよ笑」
 
 「それだよそれ。いつからだ?そうやって苦しい時も笑うようになったの。」
 
 「…」
 
 「辛いなら頼れって言ったろ?別に俺じゃなくても、メンバーがいるんだからさ…」
 
 そう言うと、どこか後ろ暗そうに反抗した。
 
 「分かってんだよ!分かってんだけど、そんな簡単な話じゃねぇの。苦しいことは何でも相談出来るのが当たり前じゃねぇんだよ…勇斗みたいにさ、、いや、ごめん。今日は帰るわ」
 
 「おい仁人!」
 
 それからというもの仁人の休みが続いた。
 ぶつかり合ったあの日から。
 マネージャーに聞いても体調不良だと言う。
 メンバーもみんな心配そうにしているが、何をすれば良いのか分からず、普段通りでいるしかなかった。
 
 「なぁ勇ちゃん、仁ちゃん家行ってみたら?」
 
 「いや、俺が行ったら余計に不快にさせるだけだろ…」
 
 「俺も、勇斗が行くべきだと思うよ 」
 
 そうメンバーに背中を押され、レッスン帰りに仁人の家によることにした。
 外は最悪の天気だった 。
 着いたのはいいものの、何て会えば良いのか分からず、扉の前で立ち止まる。
 そして1度深く深呼吸をし、意を決してインターホンを鳴らした。
 
 『は…?…ごめん今は1人にして』
 
 『…仁人ごめん。もう1回だけ…俺と話そう』
 
 『…わかった』
 
 玄関から出てきた仁人は前よりも明らかに痩せていて、見るだけで苦しくなった。
 
 「話って何?」
 
 「この間はごめん。感情的になって…けど、やっぱり仁人が思ってることちゃんと知りたい。無理にとは言わないから、思ってること言って欲しい…。」
 
 「…」
 
 「ゆっくりで大丈夫、ここには俺しかいないし…何を言ったとしても、ちゃんと受け止めるから…」
 
 そう伝えると、ぽつぽつと涙を流して俺の前に立ちすくんだ。
 何年ぶりに見ただろうか仁人の涙を。
 俺はそのままゆっくりと抱きしめた。
 
 「そうそう、辛いなら泣いていいの。泣くことは悪いことじゃないから…辛かったな。ごめんな…」
 
 「勇斗にはそんなことかと思うかもしれないけど、やっぱり重いんだよねいろいろと…」
 
 「うん…」
 
 「それでも勇斗はさ、ドラマとか映画とかで休む暇なんてないくらい頑張ってて、自分なんかがこんな事で折れちゃいけないって… 」
「そんなことないよ。俺は仁人がちゃんと頑張ってるの知ってるし、M!LKの為にいろいろとしてくれてるのもちゃんと知ってる。仁人がいてくれてどんだけ助かってるか、本当に有難いって思ってるよ。」
 
 俺の腕の中で泣いている仁人はどうも弱々しくて、触れたら壊れてしまいそうなほどだった。
 きっと伝えてくれた言葉の中にはまだ隠していることもあるだろうけど、それでも思いを伝えてくれた事が、辛いことで笑うのではなく泣いてくれたことが嬉しかった。
 心が軽くなったのかは分からないけど、これで壁が1つなくなったのであれば、弱音を吐き出すことに対して抵抗がなくなったのであれば良いと思う。
 
 「ごめん…勇斗」
 
 「いーのいーの。そんなに責任感じなくていーのよ。気楽に行こ、気楽に。」
 
 「ん…」
 
 「俺このまま今日泊まってこうかな」
 
 「え…?別にいいけど…」
 
 「じゃあそうするわ」
 
 「てか、いつまでハグしてんの?」
 
 「気が済むまでいつまでも。ほら、ハグってリラックス効果があるらしいし」
 
 「そっか」
 
 そういう仁人の顔には雲ひとつない笑顔があった。
 俺の好きな顔。
 俺が見たかった顔。
 
 「やっぱりその顔がいいわ」
 
 「え?」
 
 
 前に俺の泣いた顔が綺麗って言ってたけど、仁人のその笑顔の方が何倍も綺麗だわ。
 
 
 end.