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8才のあの子を置いてきた。まだ育ちきっていない幼い子。親が離婚したばかりの子を。あの子は母親と引っ越した。新しい土地に馴染めず不登校になった。いつも家にひとりでいた。母親は仕事から帰るといつも父親の悪口を言っていた。それまで、わがままひとつ言わないいい子ちゃんだったから、急に学校に行けなくなったあの子を攻めた。親の離婚、環境の変化、不登校で精神的ストレスが溜まったのだろう。あの子はうつ病になっていた。
置いてきたあの子が何度も戻ってくる。私にしがみついてくる。足を引っ張ってくる。この子はずっと私についてくるつもりなのか。この子はいつも我儘を言ってくる。しかし、私は気にせず新しい生活をスタートさせた。この子を置いたまま。無理やり進んだ。
「おいていかないで。」
「まだなおってない。」
「たすけてほしい。」
何度も戻ってくる。
あの時殺したはずなのに…。
生き返ったのか、まだ生きていたのか。恐怖で怯える。私はあの子が戻ってくる度に何度でも殺した。もう家に1人でいるのは嫌だ。暗い部屋で1人、何をする訳でもなく事を思い出しては泣く。インターホンの音がこわい。
「だきしめてほしい。」
「さみしい。」
あの子はあの頃の私にしがみついている。
「もうやめなさい。」
「苦しいだけなんだから。」
「もう戻れないって分かってるくせに。」
「痛い!もうやめて。」
やめてくれない。なんて我儘なんだ。ああ、でも今まで何も言わずにいい子ちゃんにしてたから、そのツケが回ってきたのか。いつも1人で遊んでたね。あの時は、普通だしなんとも思ってなかった。けど、今になって急にあの子が教えてくれた。寂しかったって教えてくれた。いつも一緒にいてくれたのはぬいぐるみだったって教えてくれた。早く殺さないとダメだ。これから生きるにはこの子を殺さないと。はやく、はやく!はやく!
ふと手を見る。
成長した体をみてショックをうける。
じぶんだとみとめたくない。
わたしはまだおいていかれたままだ。
心に2人の人がいるのを感じる。
8才のわたしともう少しで18歳になる私。