テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
れんは、何のためらいもなく手を伸ばした。
ぽん、ぽん、と。
ひとりずつの頭に触れるように、軽く、そしてとても静かに。
押しつけるでもなく、包み込むでもなく。
ただ、本当に「そっと」。
笑みは変わらなかった。
口元だけが柔らかく上がったまま。
目元は見えない。
声も出さない。
なのに、その仕草には確かに言葉があった。
「頑張ったね。」
「偉いよ。」
そう言われた気がした。
体の奥で、そう聞こえた。
胸の奥が熱くなる。
張り詰めていた糸が、静かにほどける。
冴は呼吸を震わせ、涙が零れた。
凛は気づいたときには頬が濡れていた。
潔は声もなく嗚咽を噛み殺した。
蜂楽は子供みたいに涙をこぼした。
玲王は手で顔を覆い、凪はただ静かに涙を流した。
千切は唇を噛んでも止まらない。
黒名は何も理解できないまま泣いた。
カイザーですら抗えず、涙をひとすじ落とした。
ネスは震えた肩を抑えられなかった。
れんは、何も言っていない。
ただ笑って、撫でただけ。
けれど、その微笑みには温度があった。
冷たくない。
暑くない。
ただ、太陽の光みたいな、
肌の上に落ちる「優しいあたたかさ」。
匂いがした。
懐かしい。
思い出せないのに、懐かしい。
会ったことなどない。
それは分かるはずなのに、
「昔、ここにいた人だ」と、心が勝手に理解してしまう。
れんは、みんなの涙を見ても、何も変わらない顔のまま。
ただ静かに、その場に立っていた。
まるで――
その微笑みこそが「帰る場所」だったかのように…
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!