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れんは、何のためらいもなく手を伸ばした。
ぽん、ぽん、と。
ひとりずつの頭に触れるように、軽く、そしてとても静かに。
押しつけるでもなく、包み込むでもなく。
ただ、本当に「そっと」。
笑みは変わらなかった。
口元だけが柔らかく上がったまま。
目元は見えない。
声も出さない。
なのに、その仕草には確かに言葉があった。
「頑張ったね。」
「偉いよ。」
そう言われた気がした。
体の奥で、そう聞こえた。
胸の奥が熱くなる。
張り詰めていた糸が、静かにほどける。
冴は呼吸を震わせ、涙が零れた。
凛は気づいたときには頬が濡れていた。
潔は声もなく嗚咽を噛み殺した。
蜂楽は子供みたいに涙をこぼした。
玲王は手で顔を覆い、凪はただ静かに涙を流した。
千切は唇を噛んでも止まらない。
黒名は何も理解できないまま泣いた。
カイザーですら抗えず、涙をひとすじ落とした。
ネスは震えた肩を抑えられなかった。
れんは、何も言っていない。
ただ笑って、撫でただけ。
けれど、その微笑みには温度があった。
冷たくない。
暑くない。
ただ、太陽の光みたいな、
肌の上に落ちる「優しいあたたかさ」。
匂いがした。
懐かしい。
思い出せないのに、懐かしい。
会ったことなどない。
それは分かるはずなのに、
「昔、ここにいた人だ」と、心が勝手に理解してしまう。
れんは、みんなの涙を見ても、何も変わらない顔のまま。
ただ静かに、その場に立っていた。
まるで――
その微笑みこそが「帰る場所」だったかのように…