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展望台へ戻ると、既に上空は大きな穴が開けられ、岩の神 カズハさんは上空へ飛び立った後だった。
どういう魔法か分からないが、カズハさんは自分の足元の空気中に小さな岩を出現させ、それを踏み台に、空中上の龍に近付いていた。
そして、僕はその時、初めて “龍” を見た。
龍は僕が思っていた通りの姿形をしており、硬い皮膚に大きな翼を広げて上空に君臨していた。
炎龍だからか、その姿は赤い皮膚で覆われていた。
カズハさんは、炎龍から放たれる炎のブレスを避けることもなく、全身に浴びても平気そうにしていた。
いや、浴びる瞬間に小さく防御できるほどの薄い岩魔法を発動させているんだ……!
流石は神だ……戦闘能力が段違いだ……!
でもあの炎龍の上には、龍族の一味の長がいるはず。
カズハさんが長と対面する前に駆け付けたいけど、でもどうすれば龍の上に行けるんだ……。
飛んでるから、龍の上の視認ができず、風神魔法 ウィンドストームで移動することもできない。
仙術魔法 神威も同様に、明確な想像が出来ない為、空間移動もできない。
「困ってるみたいだな、ヤマト!」
そこに現れたのは
「アズマ! それに、リオラさん……と、カナン!?」
「よっ! 救援の……救援部隊だ!」
「どうして……」
「ヤマトが駆けて行っちまった後、アゲルが直ぐに指示を出したんだ。俺とカナンを向かわせるようにな。でも、空中戦闘できるのはカナンの弓矢しかないんだけど……って困っていたところに、リオラさんだ!」
すると、リオラさんは一歩前に踏み出した。
「ヤマトさん。私は闇魔法を使います。私の闇魔法は、闇のある場所に物体を形成させられます」
「えっと……どう言うことですか……?」
すると、リオラさんは徐に、自分の腰に巻いていたクナイを天井に刺すと、クナイからはヒラヒラとカーテンのようなものが開かれた。
「 “闇魔法 ブロード” !」
すると、カーテンの影から、黒い塊のようなものが出現した。
「つまりはこう言うことです。あの上は物体なので登れます。このクナイを龍に刺せれば、龍のところにも登れるかと……」
大分手荒で雑な手段だけど、それしかない。
「アズマとカナンは……僕の腕力じゃカナンを抱えて登れない……」
「え、ヤマト、カナンのことも持てないのか? それならカナンは俺が上げて行ってやる!」
「ドラゴン! かっこいい!」
セーカもアズマも僕より腕力が強いのか……。
自分の魔法頼りの戦闘が、こう言う時情けなくなる。
「それじゃあ、リオラさん! お願いします!」
僕らは一度、展望台の上へ登る。
「ここからでは、龍には届きません……」
「僕に考えがあります……!」
一か八か、いや、僕の集中力の問題だ。
やるしかない……じゃなきゃカズハさんが……!
「僕の風神魔法 ウィンドストームで炎龍の真下まで行きます。その時に僕がリオラさんのクナイを刺してくるので、闇魔法 ブロードをお願いします!」
「ヤマト……それだとそのまま落ちちゃうだろ……?」
「うん。だから落下中に、仙術魔法 神威で、ここに空間移動して戻る」
かなり危険な策だ。
平和主義のアズマがこの提案を呑んでくれるか……。
しかし、アズマは予想外の反応を見せた。
「アッハハ! 流石ヤマト、面白い策だな! よし、仙術魔法 神威に失敗したら俺が全力で治癒してやる! やって来い!」
やっぱり、僕の仲間は頼もしい……!
“風神魔法 ウィンドストーム”
僕は炎龍の真下へと暴風で高速移動。
「うっわ! 風っ強い……! でも……!」
まずい、風圧に負け……いや……。
右手から風魔法 フラッシュで身体を安定……そしてリオラさんのクナイを……。
「オラァ!!」
僕は風魔法 フラッシュで更に炎龍の真下に張り付き、クナイをそのまま突き刺した。
そして、そのまま垂直に落下。
直ぐに仙術魔法 神威を……あれ……。
僕はナメていた、空中落下と言うものを。
空中落下、急激な速度で重力に任せて身体が落ちて行くことで、気を失いそうになり、仙術魔法 神威を発動させる為の想像が安定しない……。
まずい……失敗だ……。
「ヤマト!! 早く仙術魔法を!!」
アズマの声が聞こえる距離まで落下したのか。
「ヤマトさんには申し訳ないですが、ヤマトさんにクナイを刺して、せめて取り返しの付かない結果だけは避けることにします……!」
リオラさん……そうか、僕にクナイを刺して、ギリギリのところで闇魔法 ブロードを発動させれば、転落ダメージを防げるってことか……起点が回って凄いなあ……。
ギリギリで……クッションになれば……。
「気を失うところだった……危ない……!」
僕は我に返り、展望台に向けて手を翳した。
こんな近くまでもう落下してたのか……!
「待ってくれ! ヤマトがまだ何かする気だ!」
“岩魔法 ブレイク”
僕は自分を包み込む岩の壁を出現させる。
しかし、これでは転落ダメージは変わらない。
「ここで!!」
地面に落ち切る僅かなこの距離で……!
“風魔法 フラッシュ”
両手から勢い良く岩に向けて暴風を放ち、僕の身体はふわっと地面に着地した。
「し、死ぬかと思った……」
「冷や冷やさせんなよ……」
「ヤマトさん、龍からクナイが引き剥がされる前に、闇魔法 ブロードを発動します」
そうだ、問題はここからなんだ……!
「 “闇魔法 ブロード” !」
炎龍に、僕が刺したクナイからヒラヒラとカーテンが広がり、僕たちと炎龍の中間地点に真っ黒な地面が形成された。
「じゃあ、向かおう! 龍の上へ!」
炎龍の上では、岩の神 カズハさんと龍族の一味の長による激しい戦闘が行われてると思ったが……。
男は、待っていたかのように僕たちの前に現れ、その少し後ろには、突っ伏して動かないカズハさんの姿と、倒れ込んでいるドレイクの姿があった。
「どうなってるんだ……?」
「初めまして。異郷の救世主 ヤマトくん。私が龍族の一味の長を務めております、“龍長” カエンと申します」
カエンと名乗る男は、黒いハットを被り、綺麗なスーツを見に纏った紳士的な男だった。
てっきり、強面の老人を想像していたが、丸っ切り見当違いの男だ……。
しかし、対面しているだけでも伝わってくるこの圧迫感は紛れもない……強者の風格だ……!
「カエン……?」
すると、カナンが龍長の名前を呟く。
「やあ、カナン。『久しぶり』だね」
「カナン……この人と……知り合いなのか……!?」
「うん! カエンはカナンの友達!」
龍族の一味のリーダー、龍長がカナンの友達……!?
まるで状況が飲み込めない。
「そう、カナンは僕と友達なんですよ」
ダメだ……カズハさんの状態と言い、カナンの発言と言い……状況がまるで掴めない。
僕が困惑した姿を見せていると、リオラさんは無言でカエンの元へ襲い掛かって行った。
「ヤマトさん、なんであろうと、『彼は私たちの敵』です。違いますか?」
リオラさんは、漆黒の長剣を構える。
「闇魔法使いですか。面白いですね……」
すると、カエンはカズハさんの倒れている元まで退いた。
「カズハさん、龍族が現れましたよ」
そう言うと、カズハさんはこちらを振り向く。
そうか、ドレイクの洗脳魔法……!
龍の加護があれば、七神ですら欺ける……!
「 “岩魔法 ブロックロック” 」
カズハさんの詠唱と同時に、無数の岩が空中に出現し、僕たちに目掛け、無数の岩石が降り注いだ。
「カナン!!」
“岩魔法 ブレイク”
僕はカナンを抱き抱えて岩石を防ぐ。
大変そうではあるが、アズマも何とか防御が間に合ったようだ。
リオラさんは、その漆黒の長剣で、自分に降り注がれる岩石を次々と素早く切り裂いていた。
僕も、こんな風に操られていたのか……。
僕たちの姿は、カズハさんには龍族の一味に見えているのだろう……。
「急いでカズハさんの洗脳を解く! 僕が直ぐにドレイクを気絶させてくる! きっと、カズハさんがギリギリまで戦闘して、ドレイクを追い込み、気絶寸前で倒れ込んでいるはずだ!」
すると、僕の声掛けにカエンが返す。
「ああ、見てください、コレ……」
すると、仲間だと言うのに、ドレイクの頭を鷲掴む。
「もう気絶しているんですよ。強制発動ですね。岩の神を気絶させない限り、岩の神の洗脳は解けません」
そう言うと、炎龍はいきなり動き始めた。
「そして、急がなければ守護の国も壊滅します……」
そして、龍長 カエンはニタっと笑みを浮かべた。
やはり、紳士的に見えた龍長も、イカれていた。