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何でもないとある昼休み。
「なぁ、勝負しようぜ草凪」
教室で雪乃は絡まれていた。
「うるさい。やらないって言ってんでしょ」
「いーじゃんか1回ぐらい!ほんとケチだよなー」
「ケチで結構。しつこい男は嫌われるぞ五十嵐」
絡んできていたのはクラスメイトの五十嵐。
何故か毎回雪乃に勝負を申し込んでくる。
雪乃はコーヒー牛乳を飲みながらもう何度目かの申し出を断った。
「あんたほんと雪乃のこと好きよね五十嵐」
一緒にご飯を食べていた美希が呆れた顔で言う。
「いや、好きとかじゃなくて、ただバトルしたいだけなんだけど」
「バトルなんて誰とでもできるじゃない」
「違うんだよ!草凪じゃなきゃダメなんだ!」
声を荒げる五十嵐。
まるで告白ね、と美希は雪乃を見る。かまわずお弁当を食べる雪乃。
「どうして?」と一応聞く美希。
「だって草凪、強いじゃん」
言い切る五十嵐。
雪乃はため息をつく。
「…何を勘違いしたのか知らないけど、強くないんだっての。何回言わせるかね」
「根拠があるから言ってんだろ。俺は知ってる。お前が強いってこと」
はいはい、と流す雪乃。
もうこんなやり取りも何度目だろう。
「とにかく、いつか絶対に勝負してもらうからな」
そう言い逃げする五十嵐。
やっかいな奴に目をつけられたな、とまたため息をつくと、美希に笑われた。
「えー、つーことで数日後に『最強トレーナー決定戦(中等部部門冬の陣)』があるらしいから。出たい奴でろ」
放課後のHR。
だるそうな目でクラスの担任林田が言った。
「おー今期もやるんだ」
「確か優勝の景品凄かったよね」
「学食一週間無料券とかじゃなかった?」
「何それめっちゃいいじゃん」
「林田ー、何人でもいいのー?」
教室が騒がしくなる中、クラスメイトの一人が林田に聞いた。
「いや、クラスから代表一人だ。そっからトーナメント形式で優勝決めるらしいから、このクラスで一番つえーと思う奴表出ろ」
「いや担任ヤンキーすぎ」
「はい!!俺が出る!!」
そんな中、一人元気よく手を上げ立ち上がる男がいた。
五十嵐だ。
「あー、いいんじゃない?五十嵐強いし」
「同感ー」
「私興味ないし誰でもいいよー」
誰も反対する者はなく、それはクラスの総意となった。
「じゃ、俺で決まりな!文句ある奴、いつでも挑戦受け付けるから俺んとこまで来な!」
五十嵐が強い、というのはクラス、いや学校中でも周知の事実で、誰でも知っていた。
きっと勝負を挑む者などいないだろう。
「普通さぁ、クラスでバトルとかして決めるんだろうけどさぁ」
雪乃が前の席の美希に小声で話しかける。
「そうね」
「うちのクラスが特殊なだけだよねぇ?」
「担任があれだしね」
「そろそろあの担任クビにした方がいいよねぇ?」
「何か言ったか草凪妹」
「いえ何も」
林田が雪乃の小声を聞き逃さなかった。
地獄耳め。
「お前はそんなもん出る前に自分の人生見つめ直せよ」
「もっと他にかける言葉があるだろうがクソ眼鏡…」
ぼそっと言う雪乃。静かに笑う美希。
「じゃあ決まったみたいだし、解散」
こうして緩いHRは終わった。