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リヴァさんと最後に話してから、もう2日が経った。
人に好かれたい、必要とされたい──そんな不安や寂しさは、たまに感じる。
けど、特定の誰かに対してこれほど強く思うのは、いつ以来だろう。
今日は朝から一日かけて、ライブの最終打ち合わせ。
集中しなきゃいけないのに、どうにもそわそわして落ち着かない。
気づけば、暇さえあればスマホを手に取ってしまっていた。
「もーときくん、集中できてなくない?」
お昼休憩の打ち合わせ室で、横にいた若井がニヤリと笑いながら言う。
図星すぎて、思わず飲みかけのお茶を吹きかけた。
「…っ、若井うるさい。」
「若井、元貴のこといじめちゃだめだよ〜!」
涼ちゃんが女神のような笑顔で割って入る。──さすが最年長。
……と思ったら。
「そういえば、まだ返事来てないの〜、元貴?」
フォローかと思いきや、確信を突いてくる。
女神じゃなくて、これは悪魔かもしれない。
「……ほっといてよ。」
ため息まじりにそう返したとき──
テーブルの上のスマホが小さく震えた。
画面に浮かぶ名前を見た瞬間、心臓が一拍、大きく跳ねる。
慌ててスマホを手に取り、画面を開く。
そこには彼女からのメッセージ。
“こんにちは。
おもちさんにお話ししたいことがあります。
お暇な時に話せますか?”
考えるまでもない。返事は決まっている。
“こんにちは。今仕事中だから、夜なら話せる。
また連絡するね。”
「…ふぅ。」
送信ボタンを押すと同時に、胸の奥の緊張が少しだけほどけた。
たぶん、今の僕の顔は相当ゆるんでいたんだろう。
両隣から視線を感じる。
「え、もしかして返事来て速攻返した系??こわがられるぞ」
「若井、やめなよ〜。でも元貴、顔が怖いよ?今にも噛みつきそう〜!」
「おまえら、ほんとにうるさい…。」
午後からの打ち合わせは、なぜかいつもより集中できた。
胸のつっかえが取れたせいか、頭もよく回る。
日付が変わる前には帰れそうだ。
──夜になったら、またあの声が聞ける。
そう思うだけで、今日一日の疲れなんてどうでもよくなった。
部屋のドアを開けると、誰もいない静けさが迎えてくれた。
日付が変わる前に帰れた自分を、ちょっとだけ褒めたくなる。
とりあえず話す前に、シャワーで汗と疲れを流す。
湯気の中で少しだけ気持ちが落ち着いていくのを感じた。
バスタオルで髪を拭きながら冷凍庫を開ける。
──こういうときの僕は、ほぼ無意識にアイスを選んでる。
片手にアイス、片手にスマホを持って、椅子に身を任せてリヴァさんへメッセージを送る。
「遅くなってごめん。話せるけど、いま大丈夫?」
数秒の間もなく、着信音が鳴った。
ヘッドセットをかけて、通話ボタンを押す。
「こんばんは」
「こんばんは。……何食べてるんですか?」
「え…ああ、アイス…」
「ふふっ。おもちさんって、ほんと子どもみたいですね」
からかうような声に、なんだか胸があたたかくなる。
このまま何気ない会話をしているだけで、時間が溶けていきそうだった。
死ぬほどつまらん余談。
Riva(リヴァ)ちゃんはシグルドリーヴァからとりました。
神話に登場するヴァルキリーですね。
シグルドリーヴァは勝利を導くものといういみらしく、リーヴァ(rífa)をあえてリヴァ(riva)にしました。
rífaは古代ノルド語らしく、裂く・引き裂く・切り開く・こじ開けるみたいな意味らしいです。
というどうでもいい話でした〜〜〜!!!!