ーここは、誰にも見つからない。
あれから生活し始めて何ヶ月経ったのかは…数えてない。
お母さんからの連絡は鳴り止まないけど、通知は未だにオフにしていない。
僕は、今もこのあったかいところで生活している。なおきりさんともだんだん打ち解けて、今では家族みたいな存在だ。家事の分担までしているような関係にもなった。同棲みたいなもん。文字にすると、少し恥ずかしいけど。今日はご飯と洗濯の担当だから、眠い目を擦りながら早く起きて料理をする。しばらく料理をしていると、大きなあくびをしながらなおきりさんが起きてきた。
「おはようございます…くぁ…」
「あ、おはよ、!もうちょいでできるから待ってね、!」
「ふぁい…」
たまに、なんで僕は生きて、こんな風に生活しているんだろう、と思う事がある。
でも、そのことを考えているとすぐに顔に出てしまうようで、なおきりさんが気付いてしまう。そしてその度に、「今までのマイナスの反動ですよ」となおきりさんは言う。でも僕は、なおきりさんの方がマイナスが大きいと思う。俺が-30なら、なおきりさんは-80。それくらい、差があると思う。
僕がそのマイナスを、プラスに変えてあげたい。思ってはいる。でも、結局何もできない。
それが僕で、俺だ。そんなことを思うなんて、俺も変わったなと思う。前までなら、そんな自分にとても落ち込んだと思う。前よりかはポジティブに考えられるようになったのはきっと、というか100%、なおきりさんのおかげだと思う。
そうこうしているうちに料理が出来上がった。そういえば、ここに来る前は料理なんて全然出来なかったな、と思い返す。ここに来て、様々なことが出来るようになった。家事はもちろん、勉強だって色々なものを駆使して出来るようになってきた。最近は、バイトに挑戦してみようとしている。学歴なんてクソみたいなものしかないけど、それでも、少しでも、なおきりさんを支えてあげたい。…多分バイトなんて出来ないまま終わるんだろうけど。
なおきりさんはたまに、「仕事に行ってくる」と言ってどこかへ出かける。何をしているのかは分からない。なおきりさんは僕より5つくらい上で、バイトなんかは出来る年齢みたいだ。
「もふくぅん、?」
そこまで考えて手が止まっていることに気付く。
「っあぁ、ごめん」
食卓に食事を出し、2人で食べ始める。なおきりさんはいつも、なんでも美味しそうに食べる。それが嬉しいのかは、よく分かんないけど。しばらくすると、なおきりさんがいつもの質問を僕に投げかける。
「もふくんは、どんな存在だと思いますか?」
そしてそれに、いつもと同じ答えを返す。
「いつもと同じ。死んでても生きてても変わんない存在。」
「じゃあ、僕はどうですか?」
「…それも一緒だよ。生きてないとダメな存在。」
「それは何故ですか、?」
「なおきりさんは僕と違って人を笑顔にできて、まだ色んな未来があるから。」
「…そうですか」
質問をし終わるとなおきりさんは少し寂しそうに笑って、食事を再開する。なにが寂しいのだろうか。いつも考えるけど、いまだに分からない。そもそも、これがなおきりさんの笑い方なのかもしれない。
皿洗いをなおきりさんがしている間に、包丁を手にとって、それを自分に向ける。それをなおきりさんは止めない。それが、意外とありがたい。たまにその流れで指を切ってみたりすることはあるけど、その時はなおきりさんが無言で手当てをしてくれる。今日はその必要は無かったけど。今日は、外に出る日。1週間に1回か2回、外に出る曜日を決めている。今日はその日だから、上着を羽織って外に出る。今日はそのついでに、仕事に行くなおきりさんをこっそり追ってみることにした。
コメント
3件
しばらくコメできなくてすみませんm(_ _)m もふくんが救われている...!!なんか感動です笑笑