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センりガん

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センりガん

1 - 第1話 プロローグ

2023年07月08日

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「この情報は本当なんでしょうか? もし間違っていたら私は……」

暗い部屋の中、男は縋る様な声で言う。

「そんなにご心配なら信用して頂かなくてもいいんですよ。ただ、依頼料はご返金出来ませんけれど」

そう、静かな声が部屋に響く。

「い、いや。そんな……先生の紹介ですし、あんな多額の金を払っておいて……」

男は焦る。

「それなら、答えは一つでは?」

この声が男には蠱惑的に聞こえる。

「わ、分かりました」

そう言って男は唾を飲み込む。

男は覚悟を決めていた。

生き馬の目を抜く世界で天井を目指すために。

「この事は他言無用でお願いいたしますよ。あなたをご紹介した先生の為にも、あなたの為にも」

そう言われると男は、「ももも、勿論ですよ。こんな事がばれたら私の政治家としての人生もお終いだ」と慌てふためく。

「こちらも秘密は守ります。では、お気を付けてお帰り下さいませ」

男が去った部屋の中。

暗いその場所に明かりが灯る。

部屋には二人の少女がいた。

二人供、お揃いの黒いワンピースを着ている。

それは二人に良く似合っていた。

「姉ぇさん、お疲れ様」

妹がそう言うと「本当に疲れたわ。人と会うのは」と姉が答える。

二人は姉妹だ。

「そうね。私も疲れたわ」

そう言って妹がため息をつく。

そんな妹に、「しばらく仕事はお休みする?」と姉が言う。

妹は首を軽く振ると、「それは私が決める事では無いわ。全ては姉ぇさんの思うままに」と答える。

姉は、「ふふふっ」と可愛らしく笑った。

「ねぇ、退屈だわ」

姉の目がカーテンの閉まった窓に注がれる。

その視線に釣られて妹も窓の方を見た。

「この街も、この屋敷も。何もかももが退屈だわ」

窓に視線を向けたまま、姉は言う。

「そうね。じゃあ、また引っ越す?」と妹。

「いいわね。今度はどんな街がいいかしら」

声を弾ませて姉は言う。

姉は引っ越しに乗り気の様だ。

こうなったら本当に引っ越しをするしかない。

「じゃあ、これから二人で考えましょうよ。次はどんな街がいいのかを」

そう言うと妹は部屋の真中にあるテーブルへと移動してテーブルの上にあるスマートフォンを手にした。

妹は素早い手つきでスマートフォンを操ると、ある街の画像を姉に見せた。

スマートフォンの画像を見た姉の口角が上がる。

「気に入ったのね」

妹がニンマリと笑った。

「いつ引っ越すの?」

姉が問うと、妹は人差し指を赤い唇に持って行き、少し考えた後、「今月十には」と答えた。

「まだ二週間もあるじゃない」

不満そうに姉が言うと妹は少し困った顔をして「出来るだけ早くするわ。それまで我慢して」と言う。

「我慢する事ばかりでうんざりするわ!」

そう吐き捨てると姉はテーブルの花瓶に手を伸ばし、花瓶を勢い良く床に叩きつけた。

打ち付けられた衝撃で花瓶が割れる。

床には散らばった花瓶の欠片と水。

そして赤いバラの花が一輪。

その赤を見て、妹は何故か血を思い浮かべた。

赤い、真っ赤な血を。



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