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第九話:バカなやつダガネ
ある晴れた昼下がり、バギー海賊団の船上は、珍しく静かだった。
いつもならバギーの怒鳴り声や、部下たちのドタバタが響くこの場所に、なぜか穏やかな風が吹いていた。
そんな中、なぜか妙にそわそわと落ち着かない様子のMr.3が、キッチンから何かを持って現れた。
「バギー……今日は、私が特別に……手料理を作ったガネ……」
差し出されたのは、見た目だけは豪華で彩りもよく、いかにも「手の込んだ」感じがするプレート料理だった。
「へぇ!?お前が!?料理!?珍しいじゃねェか!!」
バギーは驚きつつも目を輝かせた。
料理が得意でないMr.3が、わざわざ作ってきたというのだ。怪しい――だがそれ以上に、腹が減っていた。
「おう、それじゃ遠慮なく……いただくぜぇ!」
Mr.3は内心でニヤリと笑った。
(バカめ……その料理の中には、私が調合した超猛毒が入ってるガネ……!食べた瞬間、舌がピリッと来て、心臓が止まる……さよならだ、バギー……)
だが次の瞬間、信じられない光景がMr.3の目に飛び込んできた。
「うっっまァ!!!!!」
バギーが、笑顔で料理をかきこみはじめたのだ。
「お前、こんな腕があったのか!?俺様感動したぞ!!お前、まさか……料理できたのか!?すげェじゃねェか!!」
その言葉に、Mr.3の表情が一瞬、ぴくっと揺れた。
(な、なに……!?美味しいだと……!?いや、そんなはずはないガネ……)
――そして、バギーは、目を見開いたままガクンと倒れた。
「……!!」
(や、やっと……やっと……私は、あの騒がしい顔を見なくて済むガネ……これで、静かな生活が手に入る……)
Mr.3は、ぐっとこぶしを握りしめながら、ほっとしたようにため息をついた。
(でも……でも、なんでちょっと胸がチクッとするガネ……?まさか私、アイツのことを……)
「船長がぁああああああああ!!!」
突然、甲高い悲鳴とともに、部下の一人が台所から飛び出してきた。
「ちょっとぉおお!Mr.3さーん!!毒入りの料理、間違えて床に落として、片付けたあとに、間違えて自分の朝食の残り出しちゃったんですけどぉおお!!」
「な、なにィイイイ!?」
(じゃあ、今食ったの、毒入りじゃなかったガネ!?じゃあ……じゃあ、あの笑顔も、「美味しい」って言葉も、全部……)
Mr.3の心臓がドクンと跳ねた。
「おい、なに騒いでんだ……」
「バ、バギー船長!?生きてた!?!?」
「……ああ、さっきの料理、腹いっぱい食ったら眠くなってな。ちょっと寝てただけだ……」
バギーは頭を掻きながら、のそのそと起き上がった。
「なーんか変な夢見たわ。お前が俺を殺そうとしてる夢だった……はは、笑えるよなー」
そのとき、Mr.3の顔が青ざめた。
(バレたガネ!?いや、まだバレてない……落ち着け私……)
「でもよ……ありがとな、Mr.3。ほんと美味かった。お前って意外と……やさしいとこあんだな?」
バギーの笑顔。
その一言が、Mr.3の胸にズキュンと刺さった。
「……バ、バカなやつダガネ……」
頬を赤らめ、Mr.3はそっぽを向いた。
その後、バギーは何も知らぬまま「Mr.3が作った料理」を気に入り、毎日リクエストするようになった。
――こうして、バギーの「毎日手作り料理希望」により、Mr.3の平和な日々は幕を閉じたのだった。
(……結局私が一番バカなやつダガネ……)
Mr.3は、今日もフライパンを振る。