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カチャン。
医療用のメスを置き、深呼吸をした。
ふと窓から見える外を見たらもう夜で。
今
京夜「 あちゃ~… またこの時間までやっちゃった。 」
ここ一ヶ月は真っ暗になって、
有名な夏の虫、鈴虫が鳴いているぐらいの時間帯まで集中している事が日課になってしまっていた。
京夜「 学校出れるかねー、」
でも心配するとこは自分の体調より、家に帰れるかが問題だ。
だって________
____
無陀野「 …… 」
京夜「 …ぁは 」
学校を夜出たら次家に帰る時間は深夜。
もちろん…、
無陀野「 …… 」
ダノッチは怒ってます。
京夜 ( ですよねぇー… )
考えてもみて欲しい。
主人、又は妻が仕事で夜遅くになるまで家に帰って来ないとする。
勿論、要件は仕事。(これ絶対)
無陀野「…」
自分で言うのもなんだけど嫌でしょっ!?
そう思ってんなら、はよ帰れ。とツッコまれたらぐぅの音も出ない…。
京夜「ご、ごめんねー?」
恐る恐る口にしてみると、ダノッチの反応は…
無陀野「学習能力ゼロが」
怒ってますぅぅぅぅぅぅーーー!!
京夜「分かった分かった!明日は定時に帰るからぁ!」
無陀野「フラグだろ」
京夜「やめてッ??フラグって言うと余計立つじゃんっ」
無陀野「ふん」
クルッと背中を向けてリビングに行こうとしたので、
京夜「ダノッチぃー」
俺はどうしようか困って追いかけた。
無陀野「早く寝ろ、学習能力ゼロ」
ソファの端に座り、持ち手に肘をつく。
そっぽ向いて顔すら見せてくれやしない。
京夜「…名前、呼んでくれないの?」
無陀野「怒ってんだぞ…」
拗ねた声でそう言った。
京夜「うん、」
さっきまで家事をしてくれていたのだろう、ポタッ、ポタッ。と水道から漏れている音。時計の針が進む音。…テレビの番組の人々の声?
…あれ、テレビいつも付けないのに、珍しい事もあるものだ。
京夜「ねぇ…ダノッチ」
無陀野「ん…」
と低くて気力のない声で返事をする。
京夜「1個、聞いてい、?」
無陀野「…」
俺の中でダノッチへの単独ルールに『黙ってるけど断らない』は肯定という暗黙の了解となっている。
聞こうとしたけど、その前に拗ねてるのが物凄く可愛くて。抱きつきたい衝動を必死に抑えようとしたら手が震えていた。
京夜「ぅぁ…、」
うぅわぁ、声まで震えてきた。
今は傍にいたくて目の前でしゃがみ込む。片手をそっと手を握った_。
京夜「…寂しかったの、?」
疑問に思った事を素直に言った。
でも、正直に答えてくれるとは思ってない。
無陀野「…」
ぴくと手が動いた。
無陀野「わ、るぃか」
京夜「ねぇ、もう無理」
何を勘違いしたのか一瞬ビクッと震えた。
無陀野「…なんで」
も。と言おうとした口を塞いでいた。
俺は最後まで我慢出来なくて。感情に身を任せた。ダノッチだって受け入れてくれた。
可愛い可愛い可愛い。
気持ちが溢れて逆に動けなくなる。
京夜「んはっ、かわぁ…い」
無陀野「そう、か」
無表情だと思っているだろう、如何なものか満更でもない様子だった。
京夜「んふ好き」
無陀野「それで良いのか」
汗や色んなもので濡れている俺を全て愛おしそうに撫で聞き返してくる。
京夜「んぅー…ダノッチは言わない癖にー」
無陀野「ふん、お前が帰って来ないからだろ」
日頃の行いだ。とか拗ねている。
京夜「俺は愛してんのにぃっ!」
そう勢いで抱きつき頭をぐりぐりと押し付ける。
無陀野「…可愛い」
京夜「うぅわ、そういうとこ。ズルいよね」
無陀野「じゃあ言わない」
京夜「うそうそ!!」
言って、もう一回。顔を見ながら言った。
俺の顔を見てふん…。とそっぽ向いてしまった。
京夜「はいはい、早めに帰宅しますよっ」
もー!つれないダノッチぃー!と寝ようとした。
グイッ
京夜「ぅあッ」
ちゅっ、と静かな夜に座らされて、暖かいものが唇に触れた瞬間。
京夜「ぇ…?」
無陀野「愛してる」
そう、手を取り
京夜「ぁ…」
薬指に…ピッタリとハマった物。
京夜「ゆびわ…」
京夜「ぇ、へ…?」
全く声が出ない。
こんな状況に渡すダノッチにも驚いたし、なにより。
無陀野「そんな泣く所初めて見たな、」
ふ、と笑って。やっぱりダノッチってば月が似合うなぁ…とかぼんやりした視界でそんな事を考えた。
京夜「はは…こんな状況で渡すぅー?普通」
無陀野「ダメだったのか」
京夜「うぅん、良いよ。ダノッチらしくてさ」
無陀野「手…痛くないか」
さす、と指輪を嬉しくて何度も撫でるもんだから心配された。
すぅ…っとゆっくり何度も何人も救ってきたたくましくて不器用で頼りになる手が俺の手首まで伝っていく。 そのまま力を込めて後ろに倒されていた。
京夜「んは…ダノッチの癖に盛ってんじゃん」
無陀野「俺だって男だぞ」
当たり前だ。とかほざくんだから。
京夜「いつも俺が誘っても無視なのにー?」
無陀野「我慢してんだよ、バカか」
うわ、バカって言っ。
京夜「ん…はっ、ぁ」
急に口を埋めるもんだから息が吸えない。
相変わらず下手なんだ…とか俺が教えなきゃとか色々考えてもう、ダノッチはオレのものなんだぁ…。と優越感に浸った夜だった。